「高浮彫牡丹二眠猫覚醒蓋付水差」
宮川香山(初代)
明治時代前期(19世紀後期) 高30.5cm
田邊哲人コレクション(神奈川県立歴史博物館委託)


平成24年度 公立美術館巡回展支援事業

明治・大正時代の日本陶磁

―産業と工芸美術―

 明治時代に入ると、明治政府が推し進める殖産興業・輸出振興政策により、数多くの日本の陶磁器が欧米を中心に輸出されるようになりました。それらの陶磁器は当時欧米で盛んに開催されていた万国博覧会にも出品され、優れた技術と東洋的なモチーフなどにより、高い評価を得ました。その写実的で絢爛豪華な作風によってジャポニスム(日本趣味)の気運が盛り上がり、欧米のやきものに大きな影響を与えました。
 このような状況の中で各産地では西洋技術の導入や窯業技術の近代化などの変革がなされていきます。実業教育や工芸美術教育が積極的に推し進められ、前代までとは全く異なった様相を生み出していきました。また一方で、江戸時代からの職人工芸からの脱却も進み、美術工芸的な作品づくりを行う陶芸作家が登場していくこととなります。
 本展覧会では、輸出当時の全盛期であった明治時代前期に輸出された日本各地の陶磁器、また明治20〜30年代にかけて各産地の自立と競争の中で生み出されていった新たな陶磁器。そして明治30年代以降のアール・ヌーヴォー、アール・デコに代表される新しいデザインの作品、帝室技芸員そして陶芸家の黎明期の作品など、約130点を展示。
 産業から美術工芸へ文化・派生していった日本窯業・陶芸史上重要な位置づけがなされる明治・大正期に制作された日本の陶磁を中心に、近代当時の変遷について新たな研究成果を踏まえながら紹介します。
「白磁籠型薔薇文掛花入」盈進社 
明治時代前期(19世紀後期) 高16.5cm
兵庫県陶芸美術館蔵(田中寛コレクション)
○会期:2012年10月20日(土)〜12月9日(日)
○会場:茨城県陶芸美術館 地階企画展示室
○開館時間:午前9時30分〜午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
○休館日:月曜日
○観覧料:一般700円、高大生500円、小中生250円 (※土曜日は高校生以下無料)