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抹茶の緑が冴えざえと映える黒茶碗。作例には渋さに加え妖艶な雰囲気が漂います。それは、単なる黒ではなく、釉の掛け分けの効果でした。 |
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「茶碗」という品格と、オリジナリティーをあわせ持つ今回の作品。 三種の釉を掛け分けて、この景色を実現しています。
掛け方はまず、黒天目釉と燻し金彩釉をそれぞれ浸し掛けし、次に、この二つの釉の間に赤結晶釉を2回ほど流し掛けます。
この釉調の成功の鍵は、赤結晶釉にあり。 黒天目の寂とした渋みと、対照的に、ブロンズのようにも見える燻し金彩が醸し出す現代性、これらのミックスが作例の大きな魅力です。 その仲を取り持ちつつ、自らもアクセントとなっているのが赤結晶釉なのです。
作業のポイントは、まず黒天目と燻し金彩の間に隙間をあけること。 それにより赤結晶釉の発色そのものを単独で見せるという効果が出ます。 二つ目は赤結晶釉の量。
全体の均衡を保つことを心掛けて作業を進めましょう。
安定的とはいえない釉の組み合わせを、絶妙なバランスにまとめた本作。 今後使い込んでみたい、釉の組み合わせの、ひとつのお手本といえます。 ぜひお試しを! |
作品:伊吹一夫
高7.5 径11.5cm |
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