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会場には、陶芸美と芸術表現の究極を追求する陶芸アーティスト・岡本立世の最新作を中心に、一門の作家70名の個性が濃厚に現れた作が展示されていました。


今回展よりアートの中心地・銀座に会場を移して開催された九炉土展。旧き良き時代の歴史と、最先端の新しさが同居する街での作品発表のテーマは「クラシック・モダン」。各々の作者の際立つ個性ときらめきが、熱気を伴って銀座のアートシーンに爽やかに流れ始めました。
九炉土展の会期中(2009年11月24日〜29日)、銀座には美しいクリスマス・ツリーがあちこちに見られます。右●ミキモト(4丁目)はさながら観光名所化しています。

1階のアプローチにも陶のオブジェがセンスよく展示され、
観覧客を会場へ誘っています。
エントランスに飾り付けられたコーヒーカップは、最初、
カップと分からないほど。意表を突かれました。

左●1階エントランスのウィンドーを見ると、陶芸展であることがひと目で分かります。 右●落ち着きと風格のあるギャラリー


新・九炉土展の開幕
 陶房九炉土が陶芸クラブとして、大規模で高品質な作陶展を毎年続けて開催してきて、すでに30年近く経ちます。 アマチュア作陶家が作品の質を一定レベル以上に保ちつつ、大人数での発表を続けるのは容易でなく、他にはあまり例も見られず全国的にも稀なことです。
 その九炉土展が新しい歴史を刻みはじめました。
 29回展を迎えた「九炉土展」は、画期的な展覧会となり、歴史的な出来事でした。 会場が長く親しんだ新宿から銀座に進展し、作者のモチベーションと出品作のクオリティーが、そして観覧者のレスポンスも、驚くほどの高レベルだったからです。 新・九炉土展の幕開けです。


上と左●陶芸アーティスト岡本立世の新作。
「クラシック・モダン」を表裏で一体化し、銀座の街を象徴的に表現したような傑作です。
(上=作品正面、左=同裏面)

タイトル:銀座は百花繚乱


精神性の高さを認識
 会場内を一巡してすぐに思ったのは、今展のテーマ「クラシック・モダン」が作者の皆さんそれぞれによって、巧みに消化されているという実感です。
 たとえば、織部などの伝統的な技法を使いながらも、装飾はオリジナルな新しい感覚を採り入れて絵付が施されている皿があったりして、一作品のなかにアンビバレントな魅力が凝縮されているのはさすが。
 他方では、同じ形の対の皿なのに、ひとつには現代的なデザインの装飾が、もう一作には何百年も前から使われている模様が用いられる対比の妙もあります。 それら出品作の大概は、個性的であるのは当然として、芸術表現として極めて高い完成度を示しているのです。

今回の制作テーマ「クラシック・モダン」は作者によって様々に解釈されて作品に取り込まれ、巧みに表現されています。
 「今年の九炉土展からは、一人ひとりが一陶芸家としての意識で作って、堂々と出すようにと、出品者全員に言ったんですよ。 陶芸を専業にしていないのを、引け目に思わなくていいということです」と、岡本立世総長が本展覧会のコンセプトを教えて下さいました。
 つまり今回の九炉土展では、陶芸クラブの「会員発表会」ではなく、陶芸指導プロ養成塾生をも含めて選ばれし岡本総長の一門70名が、いわば皆が同一線上で作品を発表しているのです。 そこには、銀座は同好の会の発表だからという 「甘えた意識が通用する場ではない」、という意味も込められているのだそうです。
 確かに、どの作も自信ありげです。 なにかに依存するような弱さは微塵もなく、どれも自立しているからでしょう。 制作意識のうえでのアマチュア性の排除が、作品作りに好影響を及ぼしているに違いありません。
 こうした意義のある、深い内容の展覧会が開催できたのは、振り返ってみるまでもなく、28回におよぶ新宿での発表を基盤に置き、その蓄積によってこそ実現できたのです。 展覧会のコンセプトを充分に理解し、さらにテーマを咀嚼して作品化するのは、一朝一夕の経験とスキルでは実現できないからです。
 九炉土の歴史上、銀座での初の展覧会という大イベントを通して、岡本総長を中心にした一門全体の、創作家としての精神性の高さと技術力を再認識した展覧会でもありました。 ■



次回(第30回)の九炉土展のテーマは「イッチンと象嵌」
(会期:2010年 11月23日〜28日、同会場にて開催)




聖地・銀座での作品発表
 東京都中央区銀座は日本を代表する商業地であり、老舗商店や海外の高級ブランドの旗艦店が軒を連ねています。 と同時に、美術・文化の聖地でもあります。 「ギャラリー密度」は日本一のまま、今も250軒から300軒ほどが銀座の街全体に広がっています。 そんななかで九炉土展の会場に選ばれたのは、中央通りに面した銀座2丁目の藤屋画廊。 メルサ2やティファニーを向かいに見て、カルチェやダンヒルの並びというコアなスペースです。
ブルガリ(銀座2丁目) ダンヒルのサンタ(銀座2丁目) カルチェ(銀座2丁目)


松屋(銀座3丁目) シャネル(銀座3丁目) 大人気の猫たち(銀座4丁目) ミキモトのサンタ人形(銀座4丁目)

SONYのツリー(銀座5丁目) 松坂屋(銀座6丁目)入口前に
飾り付けられた立派な門松
ルイ・ヴィトン(銀座7丁目) ロオジェのツリーは穴場(銀座7丁目)

銀座・黒田陶苑(7丁目)は近・現代陶芸の老舗。
上、右●資生堂パーラー(8丁目)のツリーは磁器製のベルが飾り付けられ、異彩を放っていました。




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