会場内を一巡してすぐに思ったのは、今展のテーマ「クラシック・モダン」が作者の皆さんそれぞれによって、巧みに消化されているという実感です。
たとえば、織部などの伝統的な技法を使いながらも、装飾はオリジナルな新しい感覚を採り入れて絵付が施されている皿があったりして、一作品のなかにアンビバレントな魅力が凝縮されているのはさすが。
他方では、同じ形の対の皿なのに、ひとつには現代的なデザインの装飾が、もう一作には何百年も前から使われている模様が用いられる対比の妙もあります。
それら出品作の大概は、個性的であるのは当然として、芸術表現として極めて高い完成度を示しているのです。
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今回の制作テーマ「クラシック・モダン」は作者によって様々に解釈されて作品に取り込まれ、巧みに表現されています。 |
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「今年の九炉土展からは、一人ひとりが一陶芸家としての意識で作って、堂々と出すようにと、出品者全員に言ったんですよ。 陶芸を専業にしていないのを、引け目に思わなくていいということです」と、岡本立世総長が本展覧会のコンセプトを教えて下さいました。
つまり今回の九炉土展では、陶芸クラブの「会員発表会」ではなく、陶芸指導プロ養成塾生をも含めて選ばれし岡本総長の一門70名が、いわば皆が同一線上で作品を発表しているのです。 そこには、銀座は同好の会の発表だからという 「甘えた意識が通用する場ではない」、という意味も込められているのだそうです。
確かに、どの作も自信ありげです。 なにかに依存するような弱さは微塵もなく、どれも自立しているからでしょう。 制作意識のうえでのアマチュア性の排除が、作品作りに好影響を及ぼしているに違いありません。
こうした意義のある、深い内容の展覧会が開催できたのは、振り返ってみるまでもなく、28回におよぶ新宿での発表を基盤に置き、その蓄積によってこそ実現できたのです。 展覧会のコンセプトを充分に理解し、さらにテーマを咀嚼して作品化するのは、一朝一夕の経験とスキルでは実現できないからです。
九炉土の歴史上、銀座での初の展覧会という大イベントを通して、岡本総長を中心にした一門全体の、創作家としての精神性の高さと技術力を再認識した展覧会でもありました。 ■ |
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次回(第30回)の九炉土展のテーマは「イッチンと象嵌」
(会期:2010年 11月23日〜28日、同会場にて開催)
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