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深みのある緑、大胆な構図。自由さと重厚感がミックスした本作は、まさに織部らしい秀作です。そこには確かな計算と繊細な作業がありました。
 
57 弁柄+織部釉+黒マット釉+志野釉

 今回のお手本には、単なる織部釉に留まらない、作者の経験値が詰まっています。
 まず中央に弁柄で模様を描きます。 その絵付を紙でマスキングし、全体に織部釉を2度ほど吹きます。 その上からなんと、黒マット釉をやはり2度ほど吹き重ねます。 黒マットは吹き過ぎると黒くくすむので、あくまで「軽く」がポイント。 次に再び織部釉を2度吹き掛けます。 つまり織部で黒マットをサンドした形。 これが、織部を艶のある重厚な色合いに仕上げるコツでした! さらに中央部は、真ん中に穴を開けた紙で周りをマスキングして、模様にだけ志野釉を吹きます。 透明釉より志野釉を選んだのは、弁柄の渋い色を引き出してくれるから。 織部釉に掛けてしまい艶を消さないようにしましょう。 また本作では、裏面も織部と黒マットのサンドで丁寧に施釉してあります。
 施釉の手順や量をうまくコントロールし、確実な作業を重ねる。 こうして深みのある幽玄な織部が生まれたのですね。 この効果を、ぜひ一度試して下さい。
作品:近藤正子  高2.0 径19.0×19.0cm


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