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志戸呂焼の巻 (しとろ) 

 志戸呂焼は静岡県のやきものです。 現在は島田市に統合されましたが、旧・金谷町の横岡や志戸呂が、古くからの窯場です。
 金谷といえば、寸又峡温泉へとつながるレトロな路線・大井川鉄道の始発駅。 それに東海道五十三次の第24宿でもあります。 町内には石畳の坂道など、古の街道の風情も残っていて、どうやら、夏の旅の候補地として期待がもてそうですね。
 さて、志戸呂焼は、「遠州七窯」の一つといわれています。 遠州七窯は、茶人・小堀遠州が好んだとされる国焼の七つの窯。 「志戸呂」「上野」「朝日」「膳所」「高取」「古曾部」「赤膚」と、田内梅軒の『陶器考』(1854年)に記されたのが、その始まりです。 また、あまり知られていませんが、志戸呂は江戸幕府成立以前から徳川家の御用窯として名声を得ていました。 家康がこの地に「瀬戸焼の祖」の後裔を呼んで開窯させ、手厚く庇護したと伝わっています。
 現在、志戸呂焼の窯元は6軒あります。 その作風は、地元産の「丹石」(にいし)を原料とした茶褐色の釉と、比較的薄手の端正な器形。 寂びて上品な様子に、御用窯、遠州七窯と辿った志戸呂焼の歴史の背景が、少しだけ透けて見える気がしました。
 小さな窯場ですが、皆さんも一度、足を運んでみてはいかがですか!
黄〜濃茶へと色味の異なる志戸呂焼。
焼締まるのが特徴。
旧東海道の情緒が残る金谷坂の石畳。
写真協力:島田市経済部商工課




ソフトな白と爽やかなブルーの組み合わせの今回作は、瑠璃釉が不思議な景色を作っています。 
54 藁灰釉+瑠璃釉

 本作で目を引くのは、縁のブルーのモワモワとした幽玄な模様。 絵具の線や青い釉の掛け流しでは出せない、不思議で、モダンな印象に仕上がっています。
 さて施釉ですが、まず藁灰釉を全体に。 浸し掛けが可能なサイズならそれでもよいのですが、吹き掛けならしっかり吹くことを心掛けます。 目安は5〜10回程度。 藁灰釉は5〜6回吹くと白く焼き上がりますが、完全な白が希望ならさらに吹き重ねます。 作例は10回吹いたので、参考に。
 次に瑠璃釉をスポンジにたっぷりと含ませ、縁を軽く叩くように施します。 ポイントは、ここで釉が流れないようにすること。 手ロクロで素地を1回、2回と廻しながら、ポンポンポンとリズムよく。 3回転位で塗り終えるといいでしょう。
 透明系の瑠璃釉は、乳濁系の藁灰釉に重なっても完全には溶け込まず、面白い効果を発揮します。 まさに釉の化学変化ならではの奥深さといえそうですね。
作品:小川順子、  径13.0cm




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