インターネット版 No.69 全3ページ 1 | 2| 3

1 ・茶とやきもの 47 ・・・ 「かつての主役は、花のない花入だった」
2 ・使ってみたい!!釉薬 50 ・・・ 柿結晶釉+チタンマット釉
3 ・目にも旨い!男の簡単Cooking 41 ・・・ まぐろの手こねずし


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−−−−今号からはテーマが新しくなり、「花入」に関する様々な、興味深いお話を伺っていきたいと思います。
 さて、茶席での花入の立場というと、茶入や茶碗に較べれば脇役なのでしょうが、床の間に花が生けてあるだけで、ほっと心を和ませるような存在・・・・と感じたりします。
 まず、茶の湯における花入の、存在理由というか、位置づけなどから教えて下さい。

安藤●茶事においては、もともと掛け物と花入とは別々に観賞しています。 つまり、初入りでは床の間には掛け物だけがあって、仲立ちし、そして後入りで花があります。
 また茶道の草創期は、唐物の花入が全盛の時代でした。

−−仲立ちというのは、懐石が終わって次の手前がはじまるまで、いったん席を出て露地などに移ることですね。

安藤●ところで、立派な行いなどを重ねることを、「錦上花を添える」といったりしますでしょ。 錦という美しいものの上に、さらに美しい花を添えて置く、というような状態を表している言葉です。
 それで何をお話したいのかといえば、むしろある意味では、花の方が花入の添え物だった、ということです。
 そして後になってから、だんだんと自然を採り入れ、花を中心に鑑賞するようになっていきました。 はじめから現在のように、花があってこその花入ではなかったわけです。

−−なんだか奇妙な感じですが、いったん認識を改める必要があるかも知れません。 花よりも花入そのものが、重く存在を認められていた・・・・のですね。

安藤●唐物の小さな金(かね)の柑子口(こうじぐち)の花入に、「水ばかり」といわれるような扱いをされたものがあります。
 なぜかといえば、その花入に水だけを入れて、恐らく表面張力で水をぽっくりと盛り上げるようにしたのでしょう。 そのように花を生けずして、水だけを注いで花入を鑑賞し楽しんでいたのです。
 この例からも分かるように、茶の湯の完成の過程においては、時代の風潮もあって、花ではなく花入が主だった時期があるのですよ。              
(構成・編集部)




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