インターネット版 No.68 全3ページ 1 | 2| 3

1 ・「Ar陶ニュース」50号記念特集 ・・・ 「陶房 九炉土」30years Memorial Album〈2〉・・・@
2 ・「Ar陶ニュース」50号記念特集 ・・・ 「陶房 九炉土」30years Memorial Album〈2〉・・・A
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「Ar陶ニュース」50号記念特集
「陶房 九炉土」
30years Memorial Album
■取材/撮影協力 : おはし処 四万十川 常連、株式会社友和
陶芸の魅力+喜び一杯!
「陶房 九炉土」が、今年、創立30年を迎えました。 陶芸をはじめるきっかけは様々でも、生き生きと作陶に取り組み、一生の趣味として息長く続ける方がここには数多く在籍しています。各曜日の教室を訪ねて、作陶の魅力や楽しみ方、 そして胸の内にある作陶観を聞いてみました…。
*氏名のあとの( )内数字は、作陶キャリアです。


〈Part1・・・A〉

「公」と「私」が「陶芸」で結ばれる

作陶は趣味として堪能し、作品は特徴あるツールとして仕事で活かす。
そんな素敵な生き方をしているおふたりを紹介します。
趣味の陶芸を仕事に活かす@
「日本料理店の女将」として……

深川さんの作品は、自らが女将を務める日本料理店で、料理を盛り、花を活けて飾られています。 店の食器棚は女将の作品で満ち、どれに盛るか板前さんが迷うほど。 お客さんの間でも、「器の味と料理の味」はともに上々の評判です。 手作りの器と四万十川の食材の巧みなマッチングが、衆目を浴びるのも当然だ!と思いました。

                  
         四万十の野草を深川さんが自作に活けたディスプレー。

その日の気分で、
気持ちよく作れる楽しさ

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深川紗智さん(約20年)

陶芸は奥が深く、長くやっていても知らないこともあり、新たに覚えてマスターするとまた次へと、飽きずにつながっていく妙味があると深川さんはいいます。「しかもここでは私の能力を伸ばす方向に、束縛もせずに自由にやらせてくれて本当に心地よく感じてます」

リズミカルで迷いなく、豪快に土が積まれていきます。

食材も野の花も高知県四万十市からの直送。

深川さん作の堂々とした鉢に四国・高知の地酒が涼しげ。
「おはし処 四万十川 常連」(中央区銀座)にて。


趣味の陶芸を仕事に活かすA
「華道家」として……

荻野さんの生業は草月流の華道家。 花を教えはじめて40年の経験があります。 現在でも、会社のクラブ活動など団体や個人の指導を依頼され多忙を極めます。 聞けば、花器選びの難しさは、花材による使い分けだとか。 いくつも重用される荻野さん作の花器は「花を知っているからとてもいけやすい」と、教え子さんの間でも大人気。

自作の花器とギガンジュウムの紫の花が、絶妙な調和。
         
代え難い"無"になる瞬間
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荻野美代子さん(8年)

花の仕事をしている関係で、作るのは花器が多いそうです。 では、陶芸の魅力はなにかといえば、「なんといっても、自分のやりたいことができるということでしょう。 それに作っているときは"無"になれる瞬間があって、それはなにものにも代え難いですね」。
いける花をイメージして造形します。
    
テキパキ丁寧にいけ方のコツを教える荻野さん。 「株式会社友和」(中野区中央)にて。

           



先見性あるコンセプト         

 数ある全国の陶芸教室のなかでも、実績と規模、指導ノウハウの熟成度や多様性において、屈指の存在といわれている「九炉土陶芸クラブ」が、このほど創立30年を迎えました。
 近年、何度か訪れた陶芸ブームによって、新たに陶芸教室が生まれ、消えていく動向を横に見ながら、同クラブでは堅実に、アマチュア作陶家の皆さんに陶芸の魅力や素晴らしさを伝え続けてきました。 その結果として、作陶の醍醐味や感動を体感した方も多く、また気ままな一過性や流行などではない、生涯つき合っていける普遍的な趣味としての作陶を、しっかり浸透させることに貢献してきました。
 今でこそ世の中が経済的に豊かになり、技術革新も進んで作陶には親しみが持たれるようになりました。 ところがこのような時代を迎える30年も前から、すでに「個性の尊重」や 「完全自由時間・自由制作」をコンセプトに掲げ、岡本立世総長によって同クラブが開設されたのです。 これらの方針は、当時の社会背景からして画期的なことでした。 しかしそういった枠組みにおいても、技術指導は疎かにせず徹底され、基礎から高・難レベルまで広くカバーされました。 この指導方針の根底にあったのが「個々の能力を伸ばすこと」だったからです。
 すなわち、経験や習熟度によって異なるそれぞれに相応しい、最適な指導法を検討し、個人の持つ様々な能力を発見・開発、高次に向かって導いていったのです。 また、評価基準は作者固有の感性と資質に照らし合わせることをテーゼとし、その人らしい個性的表現を尊び、決して標準化しませんでした。
 特筆すべきは、現在でもこれらの基本方針は色褪せず本質的であり、同クラブでは着実に実績を重ねています。 向学心を刺激するカリキュラムがさらに拡充され、 興味深いオプションが次々と生まれ続けています。


楽しみとして使う自分の作品
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足立尚子さん (9年)
お茶を続けていることもあって、茶事に合うものを作ることが多い足立さん。 ところが、器が重くなってしまうこともあるのだとか。 「でもそれはそれで、楽しんで使っています。 そうして自分の作品を楽しんで使えるのが、作陶の大きな魅力ですから(笑)」

  
こうして切れ込みを入れ、釉溜まりを作ります。


終わりがなく、拡がっていく魅力
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和田千賀子さん (9年)
  
はじめて挑戦する急須作り。
胴部の削り(左)と浸掛けによる釉掛け(右)。
和田さんのテーマは、「食と器」。 手料理を自作の器に盛ることを考えての作陶です。 料理の色合いや分量が前提となって、計画的に器が作られていきます。
「でも、いつ何を作っても満足はしません。 毎回、色も形も違ったものができて面白いと思うから」


作ることそのものの純粋な面白さ
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大谷楠世さん (9年)        





皿の削りと魚文の絵付(上)。 魚の絵が活き活きとしています。
「頭のなかのイメージが、形になっていく面白さが大きな魅力」。 そうして作ることそのものが面白くて、 陶芸を続けていると大谷さんはいいます。 お気に入りの自作は、なぜか初心者の頃に作ったなんともいえない雰囲気の湯飲み。 初々しい逸品です。


拙さが魅力となって心に届く
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増井和美さん (約10年)

「費やした時間が証拠として残るようなものが好きで、陶芸ではそれが表現できるんです」。 しかも、土がそれを手助けしてくれるから、続けられるのだそうです。 それに作ったものの拙さゆえ、より深い魅力が感じられる」とも増井さんはいいます。

ロクロ成形したピッチャーの削り。
電動ロクロの技術を向上させたいそうです。


オリジナルな器が作れる満足感
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石田ひとみさん (8年)
飯茶碗へ黒マット釉を吹き掛けします。
  ご飯の白さが際立ちそう!
例えば、サンマが置けるような長皿とか、売っていない器が作れてしまう。 「そういうものがオリジナルで、好きに作れる魅力があって満足しています」。 日本酒好きのご主人のために、湯飲みほどのぐい呑を作ったり、夫婦ふたりで楽しんでいるそうです。




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