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−−−−前号では、水指は造形も装飾も、長い歴史のなかで、いろいろな発想のものが試され、そして、選ばれ使われてきたと教えていただきました。
 ところで、確かに「阿蘭陀」も変わった水指でしたが、薩摩の菱形の水指も独特なものに思えて、これもかなり印象に残ります。


安藤●確かに異色に見えるかもしれませんね。 遠州好みとして、茶碗などにも見られるのですが、菱形を挙げることができるのですよ。
 薩摩の菱の水指といえば、「いびつなり」と箱書されたものがあります。 「いびつ」とは真ん円ではないという意味です。 そして「なり」は形。 つまり真ん円ではない形の水指で、当時、遠州が老中だった阿部備中守に贈った水指なのですよ。

−−やはりそれも、見立てによるものだったのでしょうか?

安藤●これは当初から、意識的に菱形の水指を作ろうとして、薩摩に注文を出して作らせたものでしょう。
 ところが、菱形だといってしまうとあまりに直截的ですから、それよりもひとつ譲ってそのものの持つ雰囲気を伝え、しかも決して悪いものではないという意味も込めて、「いびつなり」と箱書をし、気持ちを表したのでしょう。 とても奥ゆかしくて、洒脱ないい方だとは思いませんか?

−−はい、本当にそうですね。 そうお聞きすると、見識を持った大人の、高尚な、機知に富んだ精神がありありと伝わってくるようです。 それから、「いびつなり」もそうなのですが、共蓋ではなくなぜ塗り蓋なんですか?

安藤●水指の共蓋は、後の時代になってから作られるようになりました。 なぜなら、本来は見立てですから、蓋のないものに、寸法を合わせてあとから蓋を作っていたのです。
 たとえば祥瑞や染付は、全体の意匠を考え、最初から蓋も一緒に注文しています。 蓋があってこその形になるように、注文を出すわけです。 とはいえ、無理に共蓋にすると野暮になる場合もありますよ。
 このように、水指は蓋によっても雰囲気が大きく違ってきますから、いつも全体の調和を考え合わせることを忘れないようにしたいですね。
(構成・編集部)





ZOOM-UP <18>
三川内焼の巻 (みかわち) 

映画のロケ地になった九十九島。
写真協力:(社)長崎県観光連盟


はまぜん祭り(GW開催)の三川内焼オークションが狙い目!
 ハウステンボスで有名な長崎県佐世保市。 昨年公開された人気映画「釣りバカ日誌」最新作のロケ地はここだったそう。 でも、やきもの好きなら、佐世保といえば「三川内焼」なのです。
 三川内焼は、江戸時代から現在まで続く伝統あるやきもの。 平戸藩の手厚い庇護のもと、採算を考えずに高級品を作り続けてきました。 そんな歴史のせいか、肥前(佐賀、長崎県) 磁器のなかでは有田や波佐見のように大産地には発展しませんでした。 反面、小粒な真珠のように品格とアイデンティティーが保たれたのも事実で、根強いファンに支持されています。
 今回は、そんな三川内焼の真骨頂、「唐子絵」 にズーム・アップ。 松の木の下で遊ぶ愛らしい唐の子供たちを描いたこの図柄。 今では染付の伝統模様として有名ですが、江戸時代には平戸藩御用窯の指定図柄で、三川内以外で焼くことは許されなかったとか。 「献上唐子」と呼ばれるゆえんです。
 この由緒正しき唐子絵、いつか、手に入れてみたいものです。





電気窯で使える特製・緋色釉。九炉土展では安藤宗良先生から高評価を頂けた作で、この秀作の造形力を、釉が引き立てています。  
48 緋色釉+黄伊羅保釉+2号青銅釉

 今回は特製≠フ緋色釉を使った佳品をご紹介。 どこが特製かというと、市販の緋色釉は揮発性のため、電気窯での使用を避けるのが通例です。 ところがこの釉は、電気窯で使えるように伊賀土に合わせて特別調合! 秋の森のような滋味深い色合いに、比較的気軽に挑戦できます。
 作例は、まず全体に緋色釉を吹き掛け、その上から部分的に黄伊羅保釉と青銅釉を吹いています。 黒っぽい部分や釉 の流れている部分が黄伊羅保釉、 ほんの少し青みがかって見える景色が青銅釉の効果です。
 この景色を成功させるポイントは、緋色釉だけで色の濃淡を出そう

作品:山本玲子 
高7.5 径15.0×17.0cm
としないこと。 つまり緋色単味の部分が30%位、残りの70%に黄伊羅保と青銅釉を薄く乗せる感じで、装飾的変化をつけるのです。
 また黄伊羅保釉を吹く時、500円玉大の穴を開けた新聞紙を浮かせて持ち、それをマスキングとして、ずらしながら吹き掛けると効果大。 お試しあれ!





TOPICS
■指導プロ養成塾生の卒業制作が
         「女流陶芸公募展」に入選




「女流陶芸」は女性だけの陶芸家団体として、坪井明日香氏の呼びかけによって、1959年に京都で結成しました。 公募展としては、67年に第1回展が開催されている老舗展です。
 先頃、女性陶芸家への登竜門とも位置づけられる同展に、陶芸指導プロ養成塾の卒業生、長谷川園恵さん作「大地のぬくもり〜芽ぐむ力〜」が見事に入選との吉報が届きました。
 長谷川さんは、陶芸の指導者を目指して3年間、同校で技術と知識を修得し、昨年夏に卒業を果たしました。 その折の卒業制作を同展に応募し、それが今回の栄誉へと結びつきました。
 岡本立世塾長から携帯電話で入選の知らせを聞き「嬉しくてドキドキしちゃって、思わず電車を降りてしまった」そうです。
 これはひとえに、岡本塾長の3年間の厳しくも親身な指導を、長谷川さんが正面から受けとめ、学んだ集大成として出品し、入選に結びついたのだといえます。
 おめでとうございま〜す!!
 
第39回女流陶芸公募展に入選した長谷川園恵さん作
「大地のぬくもり〜芽ぐむ力〜」
(京都市美術館にて)



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