インターネット版 No.55 全3ページ 1 | 2| 3 

1 ・第24回陶房九炉土会員作陶展から ・・・ 器の多様性と現代性
2 ・茶とやきもの 41 ・・・ 「なぜ南蛮の器は、水指になったのか?」
3 ・ZOOM--UP 14 ・・・ 美濃焼


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第24回陶房九炉土会員作陶展から
 器多様性現代性
「お茶を楽しむ器」に感じる
現代の日本では各々のライフスタイルとシチュエーションに合わせ、実に様々なお茶が飲まれています。
さて、そんなお茶を楽しむために、どんな茶器があるのでしょうか?


茶の湯
茶の湯部門 ● 作陶を志す者なら、いつか納得できる一碗を、きっと作ってみたいと思うほど、茶碗は憧れの対象です。 伝統に忠実な本格的な茶碗や茶入から、現代感覚あふれる水指や鉢などが、整然と並んでいます。



 和 
和部門・他 ● いかにも美味しい焙じ茶が飲めそうな、志野や織部の土瓶、それらとペアの湯呑み、 宝瓶や急須、菓子皿とセットになった汲出しなど。 なかには「洋」と感じられる和作品もあって、作者の解釈に興味津々。



 洋 
洋部門 ● このコーナーに展示された作品を見るだけで、今の日本にはこんなにも種々のお茶があるのだなぁと、感心することしきり。 様々なシチュエーションでの、楽しげなお茶時間が想像でき、見ていて飽きません。



楽しみ方の提案として
 先日、トルコ産のアップルティーを飲む機会がありました。 濃厚な甘さのなかに、リンゴの酸味と香りが効いていて、エキゾチックな味がしました。 そのお茶を啜りながら、実際にはトルコの人々は、どんな茶器を使って、どんなふうにこのお茶を楽しんでいるのかと、しばし想像を巡らしてしまいました。
 そういえば、今回の「陶房九炉土会員作陶展」の出品作には、様々なお茶の楽しみ方の提案がありそうです。 では早速、会場へと向かいましょう。


 和 


お茶は味ばかりでなく、香りも大切な要素だと気づかせてくれる作品も、多数出品されていました。
 洋 


斬新な造形をしたポットなどもあって、作者が用途を想定した「○○○茶」を想像する楽しさもあります。
茶の湯


生活様式が変化しても、茶を喫する心はそのままに、というメッセージが込められたような作品も。



「新・茶器」が登場
 今回の「九炉土展」の統一テーマは、「お茶を楽しむ器」でした。 その課題に沿って「茶の湯」「洋」「和」の各部門に分かれ、作品展示されていました。
 「茶の湯」部門の展示コーナーには、伝統様式に則った唐津や三島、また自然釉が流れる本格的な伊賀や黒織部などの茶碗、あるいは色絵や織部の水指、志野の手鉢などが並んでいます。
 本格的な茶室でお茶を点てたら、さぞ美味しく飲めそうな茶碗から、マンションのリビングでの一服が、いかにもぴったりくる茶碗まで多士済々です。 お茶を作者なりに楽しもうとするそれぞれの姿勢が、作品を見ているとくっきりと浮かび上がるようでした。 またそれは「茶の湯」部門ばかりでなく、「和」のコーナーでも同様でした。
 粉引や備前の宝瓶や、織部、志野による土瓶と湯呑み、色絵の汲出し、お菓子をのせるのに具合のよさそうな鉢、小皿など。 実際に居間などで使われて、お茶の時間を楽しむ様子を彷彿させるものばかりです。
 それらの作品を熱心に見ていた女性観覧者が、「これ、本当に焼いてあるの?」とか、「どこかで買ってきたのじゃないわね?」と、つい質問したくなるのも頷けるほどの完成度です。
 「洋」のコーナーにはコーヒーに紅茶、ココアやホットミルク、ゆったりとくつろぎながらのハーブティーやカフェオレなど、様々なスイートと一緒にお茶をしたくなるような、具体的な提案が形に込められています。
 これらの出品作に共通して感じられるのは、本格的な「茶の湯」や「和」「洋」の茶器がある一方で、現代の生活様式を反映し、様々な状況で自由に、隔たりなく使える新・茶器が作られていることです。 多様で豊かな、現代の生活様式をそのまま映しとったような「お茶を楽しむ器」は、作者のライフスタイルそのものと感じました。  ■

●次回の第25回九炉土展のテーマは、「私の個展」に決まりました。 個性的表現が会場一杯に弾けそうです。 お楽しみに!



熱心な観客で賑わう九炉土展は、来年25回展!



注目浴びる岡本立世総長の最新作


シャープな円さを求めるため、横に寝かせ手捻りで成形。 
 九炉土展会場にあって、異彩を放つひとつの大作がありました。 算盤玉状のフォルムに、風になびく夏草を思わせる点描銀彩の模様が、見事な一体感をなした岡本総長の最新作です。

 外縁は美しく円弧を描き、中央に空けられた小孔が、形全体の厚味や奥行感をさらに強調し、視覚効果が緻密に計算されていることがわかります。 陶の造形の、可能性の幅を拡げた独創の逸品といえます。  



 茶の湯の器は「用の美」の追求
 遠州流・安藤宗良先生とともに見る「九炉土展」


竹中美利さん(中)の作品を前に、制作のポイントを教示す
る安藤先生(右)と岡本総長(左)。 
 本誌連載「茶とやきもの」にて、含蓄あるお話をして頂いている遠州茶道宗家の安藤宗良先生が、九炉土展会場を訪ねて下さり、出品作を手に取りながら、貴重なアドバイスを直接お聞きする機会に恵まれました。
 まず大切なのは、茶の湯で使われる道具類は、使い勝手のよさが前提条件で、表面的な美しさのみに気を取られないようにと、先生はおっしゃいました。
 多くの出品者にとって関心の深い茶碗の場合、そのためにきちんと高台がついている必要があります。 その結果として、手に持ちやすく、また重過ぎず軽くもない重さに仕上げるようにとも教示下さいました。
 茶の湯の器の基本は「用の美」であり、自己主張の強い作品は道具として相応しくないのです。 茶道具作りに挑戦するのなら、心和むような美しさを目標に取り組みたいと思いました。  



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