インターネット版 No.54 全3ページ 1 | 2| 3

1 ・第9回 「九炉土干支コンテスト」特集 ・・・ 大賞&入賞 佳作・入選作品決定! (1)
2 ・第9回 「九炉土干支コンテスト」特集 ・・・ 大賞&入賞 佳作・入選作品決定! (2)
3 ・使ってみたい!!釉薬 44 ・・・ ルリ釉+藁灰マット釉

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気になる票の行方
 今回、早くも第9回展を数え、来年度には10回記念展を迎えようとし、いよいよ老舗公募展の仲間入りを果たした「九炉土干支コンテスト」。 今年も全国各地から、陶芸腕自慢たちによる秀作が出品されました。
 例年通り、一次審査を通過した作品だけが、展示会場(東京・新宿 朝日生命ギャラリー)に並べられ、一般の観覧者らによる人気投票が行われました。 その結果、有効投票はおよそ1300票。 それらの結果を考慮しながら最終審査が行われ、以下のような結果となりました。


残念ながら、他を圧するような該当作がありませんでした。
しかし、次回10回記念展に賞金が持ち越され、増額ですヨ!



形大賞
「酉香炉〈未来〉」

筒井童太 さん
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埼玉県八潮市
講評 技術的にしっかりしていて、表現もかなり洗練されています。 総合的に見てレベルの高さが窺え、その点では高く評価できます。 さらにここに、鑑賞者の目を惹きつけるインパクトが付加されれば、弱点のない作品になるでしょう。 見た瞬間にハッ!と感じさせるようなポイントがあれば、グランプリも充分射程圏内でしょう。
玉川大学陶芸科を卒業後、米国などで修業。
埼玉陶芸展議長賞受賞、全陶展入選など。
「シンプルでも干支の特徴がわかりやすく、しかも造形的な面白さがあり、用途も備えている作品を心掛けています。今回の作は、部分の特徴にとらわれて上手くいかず、窯出しが最終搬入日の朝。苦心の作です」

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彫刻大賞
「生まれる!」

中島勝司 さん
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神奈川県横浜市
 
講評同水準にある彫刻部門の作品のなかにあって、わずかに本作品が他を抑えてリードしたのは、鳥の巣や卵などの表現に工夫や丁寧さが見られたからです。 しかし芸術作品として見せる場合、デフォルメしたり、サイズのバランスなどを考慮する必要もあります。作品に造形的な動きがあれば、人気投票の得票も多くなり、審査員の評価も上がったはずです。
6年ほど前から陶芸にのめり込み、昨年、自宅に窯と工房を設け、試作と実験を繰り返す。
「卵は石膏型取り、巣はラーメン工法により成形。作りながら生まれ出る雛が愛おしく、親鳥のような心持ちでした。 展示会場では多くの方に巣のなかを覗き込んで頂き、きっと雛たちも嬉しかったでしょう」

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絵付大賞
「雄飛(花器)」

田中光雄 さん
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千葉県市原市
講評精細な切り絵を施し、丁寧にマスキングする手慣れた技術力が評価され、またとくに絵が注目されて人気投票で最高得票を集めました。 しかし、花器の造形や仕上げ、ロクロの技術に将来の期待がかかり、その点の成長が見込めれば、さらに上を狙える潜在力があると思えます。 また、切り絵主体の展開のみでは限界もあります。
基礎を修得後、千葉県生涯大学で陶芸を学ぶ。
同大展示会で金賞、銅賞受賞、本干支コンでオリジナル賞、アイディア賞など受賞する。
「さらなる躍進を祈念する心境を、表現できればと思いました。 葛飾北斎の鶏の絵を参考にして、丹念に渋紙(型紙)を切っていきました」





散逸した人気投票
 まず、審査結果と作品の特徴を概説すると、今年度は残念ながらグランプリと準グランプリは、ともに該当作がありませんでした。 したがって、今回展の最高賞は各部門大賞となります。 さらに部門大賞は、彫刻、形、絵付部門からは各々の受賞作が出たものの、文字部門の大賞は該当作なしでした。 この文字部門、次回展はチャンスです。
 後に詳述しますが、ここまでの結果を見る限りにおいては、頭ひとつ抜け出たインパクトの強い応募作品がなかった、というしかありません。 残念!
 しかし、そこで主催者からの配慮があり、急遽、「審査員奨励賞」を設け、あと一歩の創意工夫があれば、グランプリの可能性がある4作品に対して、特別に授賞されることになりました。 なお、オリジナル賞以下の位置付けは、例年と同様です。 それにしても、なぜ、このような少し寂しい結果になってしまったのでしょうか?その点について、岡本立世総長(審査委員長)にお話を伺いました。
「もちろん全体的には、ある程度の技術レベルには達していましたが、展示会場でもうひとつ際立つような作品とか、あるいは、審査員が唸るような秀作がなかったのが、今年の出品作の特徴でした。 確かに、無難には作られているようだけれどやや魅力不足では・・・・と、大方の一般投票者が見ている、ということの現れではないでしょうか」
 それが結局、人気投票を散逸させてしまい、5〜6点の優れた作品に票が分散したのが、グランプリなど大きな賞へと結びつかなかった理由だと、岡本総長は分析して下さいました。



「灯りとり」(形部門)
辰井信子さん
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奈良県橿原市
講評透かし技法を作品に採り入れようとした作者のセンスと、その技術力が相まって、ピリリと引き締まった印象の作品に仕上がっていて好感が持てました。 モチーフの造形、とくに足などの底部にもうひと工夫あれば、次作では上のランクが狙えるでしょう。
1998年から市民講座で陶芸を学んで以来、独学で今日に至る。 橿原市美術展などで受賞。
「紐作りによる成形は容易でしたが、模様の印付けや透かしの切り取りに四苦八苦。 釉は鶏冠のみとし、全体は焼締めにしました。 灯油窯による焼成です」



「う゛っ(鳥型蓋付瓶)」 (形部門)
冨田良介さん
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長崎県東彼杵郡
講評アイディアだけならグランプリにも匹敵するような、出品作のなかでは最も非凡な感覚を感じさせました。 ただ、フォルムがシャープなために、ボリューム感がやや希薄になってしまいました。 その分、釉色や土色で深みや重量感をフォローすれば、支持者も増えると思えます。
長崎県窯業技術センターで研修、後、陶芸体験施設の館長となる。 西部工芸展などで入選。
「顔を上に向けた鳥の形で、美しい線が出るよう心掛けました。 魚を呑もうとして喉に詰まり、石のように固まった瞬間を表現しました」



「水指・『寿』」  (彫刻部門)
竹中美利さん
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東京都新宿区
講評胴部に施したレリーフの鶴を水指の耳へと仕立て、立体的に展開している点では秀逸です。 蓋のつまみとして作られた亀は、全体のバランスを考慮した大きさを考えると、より効果的です。 ただしこのような装飾の水指は、実際の茶事では使い辛いです。 おめでたい席などでの飾りとして楽しめます。
7年前から陶芸をはじめる。 本干支コンでは形大賞、ユーモア賞など受賞する。
「慶事用に鶴と亀をテーマにしました。 鶴の羽先を水指の耳に仕立てたのがポイントです。 作品全体をふわっと表現するのと、蓋のつまみ部の亀の造形に苦労しました」



「つばさ @A」 (彫刻部門)




日高頌子さん
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福岡県福岡市
講評鳥というテーマならではの固有の表現であり、しかも翼だけを強調しようとした狙いが成功しています。 もうほんの少しだけ、羽ばたく際の力強さや骨太な量塊感が加われば、羽を休める側の鳥との対比ともなり、一層多くの鑑賞者に主題が伝わったと思います。
4年前より陶芸をはじめる。 本干支コンでは、ユーモア賞、敢闘賞などの受賞歴がある。
「飛んでいる鳥を作りたいと思いました。 翼を大きく広げ、強く羽ばたいて・・・・と言葉では表現できても、作りはじめると私には難しいところばかりでした」


「花入れ」

(形)


小南俊夫さん 岐阜県
講評顔の表情は豊かで、独特な愛らしさがあります。 それらが人気投票で2位という多数の得票につながりました。 惜しむらくは、口部のサイズが全体とのバランスをやや欠いていて大きく、また、胴の模様が煩雑になってしまったことでしょう。

 
「『誕生』歓喜の合唱
       (香炉)」


(形)


有賀正訓さん 大阪府
講評無条件に、微笑ましさを感じさせるところがこの作品の妙味です。 3羽が仲良く合唱しているほのぼのした様子が、鳥というテーマに忠実に沿っていて好感が持たれます。 造形的にもうひと工夫あればと、悔やまれます。

 
「酉よ鳥よとり達よ!」

(彫刻)


大谷楠世さん 東京都
講評よい意味でいえば、愛くるしい鳥の姿を作りながら、荒々しさや力強さがあってとても面白く見られました。 ただ仔細に見れば、手の込んだ作ともいえる一方で、仕上げのラフさも感じられます。 作り込んで完成度を上げれば、グッと向上するでしょう。

 
「誕生」

(彫刻)


宮脇さな江さん 埼玉県
講評可愛らしさを強くアピールし、人気投票数では上位にランク入りした作品です。 少しだけ残念なのは、似たような表情の鳥が多く変化に乏しいこと。 たとえば、思い切ってよい仕上がりのもの数点だけに絞ったら、さらにテーマに肉薄できたはずです。

 
「チャボ(三色碁石)」

(彫刻)


築坂香峙さん 京都府
講評とくに彩色に強さや個性があって、展示会場ではなかなかの存在感がありました。 しかし往々にして優秀な作は、第1印象ばかりでなく、作品総体としてゆっくりと心に伝わる部分での印象も強いものです。 あと1歩の踏み込みや深みがあれば、秀作に仕上がったでしょう。

 
「染付干支文壺 乙酉
(イツユウ)」


(文字)


八谷栄子さん 佐賀県
講評白磁の壺自体の完成度はかなり高く、また、文字のデザインにオリジナリティーも窺えます。 技術力もあり、配置や構成もよいのですが、もうほんの少しだけ、文字としてのインパクトが感じられるような壺のサイズや、絵の大きさなどに対する配慮があれば一層よかったです。



「花器」
(形)

羽石リカさん 千葉県
「愛でる」
(形)

藤松洋光さん 千葉県
「鶏置物」
(彫刻)

 細田志の婦さん 宮城県
「親子香炉」
(形)

塩崎悠美子さん 和歌山県
「巣籠もり鶴」
(彫刻)

保田土夫さん 大阪府



「ふくろう(ランプシェード)」 「卵料理はいかが(箸たて)」 「フライドチキン・キッチン・貯金」
(形)
渡辺 茂さん 東京都
(形)
木本美和子さん 滋賀県
(形)
 前田由美さん 山口県
「夜明け」
(彫刻)

塩田喜彦さん 大阪府
「卵の中身は…?」
(形)

中山恵里さん 静岡県


★ 敢闘賞・佳作・入選は2ページに続きます ★



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