インターネット版 No.49 全3ページ 1 | 2| 3

1 ・<特集> 京都やきもの散歩 ・・・ 「近藤悠三記念館」と京都窯元探訪 (1)
2 ・<特集> 京都やきもの散歩 ・・・ 「近藤悠三記念館」と京都窯元探訪 (2)
3 ・器で愉しむお茶時間 26 ・・・ フリーカップ
・BOOK ・・・ 「作陶集 加茂田 章二」

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八坂神社では、無病息災を願って手を合わせました。
「ハ〜イ、皆さんこっちですヨ!」。
新京極界隈を練り歩くツアーご一行。



世界一の大皿に触れる 
 今日も、清水寺へと続く坂道は、人並みが絶えることなく、ひっきりなしに往き交っていました。 坂の左右に隙間なく建ち並ぶ土産物屋、それにぽつぽつとある陶器店が、少し気にはなるのですが、このツアーの案内役は「たち吉」さんなのですから、後でおススメの店でじっくりと品定めしたいと思います。
 とりあえず、七味を専門に扱う老舗で買い物をし、私たち一行は、今度は茶わん坂に降りて、再び清水寺方面へと緩やかな坂を上ります。 陶器商の店先やウィンドーを覗きながらそぞろ歩きするとすぐ、「近藤悠三記念館」が見えてきました。
 ここは染付の人間国宝に認定され、日本の陶芸界に大きな足跡を残した陶芸家・近藤悠三の生家であり、アトリエでもあったところです。 現在は記念館として公開され、代表的な作品や道具、それに貴重な遺品の数々を観覧することができます。
 館内は照明がほどよく落とされていて、落ち着いて作品鑑賞できました。 スポットライトに浮かび上がる白い磁器肌と、染付の碧青のコントラストが、美しいことこの上ありません。 ツアーに参加している皆さんからも、思わずため息が洩れます。
 悠三の次男で陶芸家の近藤濶氏が、分かりやすく丁寧に作品解説をしてくれました。 なかでも白眉は、直径が1メートルを超え、世界一大きな磁器の皿といわれる「梅染付大皿」(径126.6センチ)です。 幸いにも私たちは、特別に展示ケースの中に入って、作品を間近に見ることができました。
 70歳を過ぎていた制作当時の作者の、雄壮な染付の極まった技、また、旺盛な創作欲がそのまま伝わってくるようでした。
左●近藤悠三の代表作「梅染付壺」
右●中国で生まれ、世界に広がっていった染付。 でもそれらのなかに、近藤作品との類型を見つけるのは、きっと困難だろう・・・。そう思わせるほどに、ここに展示されている染付磁器は、絵付も器形も表現として唯一無二のものに感じられました。(ともに「近藤悠三記念館」にて)

左●悠三をして「夢の大皿」といわしめた直径120センチ以上ある磁器の大皿は見事。特別に記念撮影もできました。
右上●「石榴染付金彩壺」。いつでも写生ができるようにと、自宅の庭には石榴が植えられていたそうです。
右中●染付を描くのに、実際に使っていた筆。意外に細くてビックリ。
右下●かつて悠三が使った轆轤場。この質素な仕事場から、様々な雄壮な作品群が生まれ出たかと思うと、とても不思議です。



近藤悠三記念館
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雄渾な染付で描く命の力
 近藤悠三(1902−1985)は、京都に生まれ育った陶芸家です。 富本憲吉の助手などを務めてから独立。 早くから呉須や鉄呉須、釉裏紅に取り組み、頭角を現し注目されました。
 絵付の主なモチーフには梅、葡萄、石榴、薊、松などが好んで選ばれています。 その手法は徹底的な観察と写生を繰り返すことにより、生命感を見事に活写し、さらに独創的な陶芸的文様へと昇華していきました。
 それらの業績が高く評価され、1977年には、染付の技法により重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。
上●館内を案内して頂いた近藤濶氏。
下●京町家風の落ち着いた外観同様、静かな佇まいの展示室ではじっくりと作品鑑賞できます。
住所=京都市東山区清水新道 1-287
電話=075-561-2996
 



■藤平陶芸
京都市東山区六波羅竹村町 151
TEL. 075-561-3979
ここに併設された「清水焼登り窯資料館」では、築窯されて110年になるという歴史的な、また京都でも最大級の登窯が間近に見学できます。 かつては現役だった圧倒的スケールのこの窯を見ていると、京焼の往時の隆盛を容易に偲ぶことができます。
    

■陶峰窯(加古製陶所)
京都市東山区泉涌寺東林町 20
TEL. 075-561-3140
工房の門をくぐると庭があって、そこには窯から焼き出された製品が、無造作に並べられていました。 陽光に輝く白く美しい磁器肌に、精緻な染付模様が清冽な印象の器です。 丹精な仕事をする染付磁器専門の窯として評価の高い窯元のひとつです。
      

■景春窯(加春製陶所)
京都市東山区泉涌寺東林町 15
TEL. 075-561-6032
住宅街のなかを歩いていると、突然、ガレージの前に、成形を終えたばかりとおぼしき素地が乾かされていて、ここが窯元だと分かりました。 50年ほど前に開窯したというこの窯は、土ものを得意とし、なかでも花器作りにおいて定評があります。
    


《京都やきもの散歩---「近藤悠三記念館」と京焼窯元探訪・・・・・・・・・P2へ続く》




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