インターネット版 No.45 全3ページ 1 | 2|

1 ・第8回 「九炉土干支コンテスト」結果発表 <申>
2 ・ZOM--UP (11) ・・・ 高取焼
・茶とやきもの 37 ・・・ 「茶席で取り上げられる現代の茶碗とは?」
・使ってみたい!!釉薬 40 ・・・ 藁灰マット釉+志野釉

1/2ページ

第8回「九炉土干支コンテスト」結果発表

 
    

お待たせしました!申年の幕開けとともに、「干支コン」審査結果の発表です。
全国から集まった様々な猿が、賞を狙って競い合いました!!

「猿と、蟹と、丸(柿)と、三角(おむすび)の四角関係」
  (彫刻部門)

 


滝 亮さん
・・・・・・・・・・・・・・・
神奈川県横浜市
講評「猿蟹合戦」に登場する各々のキャラクターが、とても秀逸に表現されている作品です。 柿のヘタにいたるまでを細かく観察し、リアルに形作り、釉の発色によって特徴を見事に再現しました。 技術がしっかりしていて表現力も豊かであった点で、高い総合評価を得ました。 ただあまりに物語性を意識しすぎたため、主題である「猿」の印象がやや弱くなりました。 それが遠因となり、グランプリにわずかに届かなかったのが悔やまれます。
(岡本立世総長 以下同)
1994年から独学で陶芸をはじめ、彩象美術展、陶芸アマコン大賞展などで受賞、入選を重ねる。 
「幼い頃、絵本で慣れ親しんだ猿蟹合戦をテーマに取り組みました。 とくに釉薬の色と、物語に登場する4つの要素の構成や配置に気を配りました。 また猿と蟹に関しては、顔の表情や手の動き、ハサミの開き具合などによって、気持ちが表現できるように努めました」

 



人気大賞(彫刻部門)
「見せず聞かせず言わせざる」

  
小澤康麿さん
・・・・・・・・・・・・・・・
愛知県瀬戸市 
講評今回創設された賞です。 それほど一般の人気投票では、ひと際多くの票を集めた作品でした。 あえてほかのファクターを取り入れず、猿だけに集中して全体を構成したことで成功し、存在感や強さが増しました。 そういう意味でかなりの秀作ですが、釉などの材料の使い方で審査員を納得させることができていれば、グランプリにも手が届いた作品です。
1980年より陶器メーカーにデザイナーとして勤務し、95年に独立。 2000年、まねき猫大賞を受賞。 瀬戸市や東京などで個展。
「複雑に絡み合う今の世の中では、気づかないうちに『見せず、聞かせず、言わせざる』というような状況が起きているかも知れません。 形を強調するために釉はシンプルにし、かすかに緋色が出るように焼成に気を使いました」




形大賞
「モンキー・ブラザーズ(猿型小鉢)

  
冨田良介さん
・・・・・・・・・・・・・・・
長崎県東彼杵郡 
講評主題となる干支そのものが、器としての用途をなす形部門の模範ともいえる秀作です。 把っ手は手と尻尾、胴体が器になり、猿の全身が鉢全体を構成しています。 器としての実用性があり、利用価値の高いデザインです。 手付鉢のなかに無理なくテーマが活かされています。 見事なアイディアと造形力の成果です。
1998年、長崎県窯業技術センターで研修。 02年に波佐見町内の陶芸体験施設の館長となる。 西部工芸展入選。
「イメージと実際の形とのバランスがとれず、四苦八苦しました。 腕が手長猿のような柔らかいカーブになることを心がけました。 やんちゃな弟と、それを見守る兄という感じです」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
彫刻大賞
「孫悟空」

  
佐古智子さん
・・・・・・・・・・・・・・・
東京都北区 
講評観音様の掌のなかで暴れる悟空のヴィヴィッドな様子が、見る側にはっきりと伝わってくる優れた作品です。 また細部にわたって手を抜かず丁寧に作り込まれており、まさに大賞にふさわしい作です。 また釉の発色にも腐心の後が見え、焼成を重ねることによって得られた効果が、高ポイントに結びついた労作です。
1996年から九炉土信濃町校で陶芸を学ぶ。 98年からは陶芸通信講座も同時に受講する。 干支コン受賞、女流陶芸展出品。
「『西遊記』のワンシーン、孫悟空が観音様に挑む姿を表現しました。 悟空のやんちゃさや躍動感がでるように工夫しました。 彩色はすべて上絵付で、焼成を3回しました。 また観音様の手は重厚な感じの金に仕上がり、気に入っています」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
文字大賞
「染付絵文字“さる”壺」

  
八谷栄子さん
・・・・・・・・・・・・・・・
佐賀県西松浦郡 
講評磁器の壺に染付で絵付を施し、その意匠のなかに「さる」というかな文字をさり気なく溶け込ませており、見事にデザイン構成されています。 作品全体がリズミカルで軽やかな印象にまとめられていて、多くの観覧者に好感が持たれました。 文字が装飾としても活かされた、大賞らしい優品です。
1986年より陶房九炉土にて作陶をはじめる。 98年、景徳鎮陶瓷学院(中国)へ留学。 01年に佐賀職業訓練校陶磁器科を修了。 佐賀、東京などで作品発表。
「磁器土に呉須で表現しました。 日本独自のかな文字のなかに、“さる”の動きを想像できるような作品にしたいと思いました。 とくに呉須の濃淡による表現に、腐心しました」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
絵付大賞
「山猿のいる風景」

  
村松美紀さん
・・・・・・・・・・・・・・・
神奈川県相模原市
 
講評白い釉は降り積もる雪でしょうか。 岩のうえに佇みじっと寒さに耐える猿は、ベンガラで描かれています。 しかもその猿の表情には、野生に生きる獰猛さや逞しさまでもが活写されていて、凄味を感じます。 無駄な線も見あたらず、素朴な釉を使って深い世界観を巧みに表現し、絵付大賞にふさわしい佳品といえます。

 
1997年より九炉土千駄ヶ谷校で陶芸を学ぶ。 中級を経て上級コースへと進む。 99年より干支コンへ出品、各賞を受賞。
「毎年、年が明けると干支コン出品のためのデザインを考えはじめます。 ロクロは2年目で、歪な形が多く整えるのが大変です。 絵も思うように描けず、2度目でやっとこんな感じにまとまりました」




「INORI」(彫刻部門)

  
塩田喜彦さん
・・・・・・・・・・・・・・・
大阪府八尾市
講評造形的には余計なものを削ぎ落としていって、シンプルに構成していながらも、猿の印象や動き、表情を巧みに表していて優れています。 芸術作品としての狙いはよく、志の高さがはっきりと窺える作品といえます。 また、一般の人気投票ではそれほどの高得票ではありませんでしたが、審査員票で高ポイントを獲得しての授賞です。
1998年、陶芸通信講座の開講当初から受講をはじめ、これまで全講座を受講。 干支コンで受賞・入選を重ね、アマチュア陶芸大賞展、アマコン大賞展に入選。
「四国へお遍路にいった時の思いを、表現してみようと考えました。 しかしイメージと、それを作品化する技術力との狭間に置かれて悩み、少しずつ妥協しながら、また時間に追われつつの制作でした。 ところがそんな状況がかえって幸いし、思いを純に土に叩き込められたような気がしています」

 



「掛け一輪花生〈和み猿〉
(形)

筒井童太さん 埼玉県
講評猿の顔を透かしにし、手を上手く作品に取り込んだ作品です。 作者にはアイディアもしっかりとした技術もあります。 ただもう少し猿の手足や、体の形に工夫があって動きがでれば、もちろん上位入賞が狙えました。
「猿の腰掛け、チュッ!」
(形)

杉原 京さん 愛知県
講評すっきりとまとめられた作品です。 もちろん腰掛けとして使えなくても構いませんが、形部門での応募となると、実用性をもう少し考慮したらよりよいのではないでしょうか。
「モンキーカップル」
(彫刻)

兵後則子さん 三重県
講評シンプルなクラフト的な手法による作品で、デザインもよく好感が持たれました。 板の厚み、腕や脚のカット幅、雌雄の表情にもう一歩踏み込むことで、上位の賞を目指せます。
「石の上にて物思い」
(彫刻)

両角 香さん 東京都
講評いかにも猿らしいイメージで作られていて、一般の人気投票で割と多くの票を集めました。 ただしアートとしてのコンセプトや、制作の目的が伝わり難かったことが残念に思えます。
「瓦型花器〈御幣猿〉
(絵付)

佐々木謙光さん 長野県
講評釉薬も一部には使われていますが、焼締めが主体となった作品で、やきものとして見た場合、焼成技術に長けたものが見受けられます。 猿の表情がはっきりしたら一層よかったでしょう。



「汁注ぎ〈どーぞ〉」
 (形)

筒井童太 さん 埼玉県 
「三猿
 〈目ール猿!?、聞く猿、言う猿〉
(彫刻)

保田土夫 さん 大阪府
「積極猿・香炉
 〈見る猿・聞く猿・発言猿〉

(形)

 有賀正訓 さん 大阪府

 
「木の上にも3年・・・!?」
(彫刻)

中山恵里 さん 静岡県
「新猿訓」
(文字)

山本 昇 さん 長崎県

 



「私きれい?」
(彫刻)

下農由紀子 さん 大阪府 
「森の温泉“猿の湯”」
(彫刻)

島田ゆみこ さん 神奈川県
「お茶目な猿」
(彫刻)

 中十七波 さん 石川県

 
「今年は、カツ…猿…ソース???」
(形)

竹中美利 さん 東京都
「三猿人形〈見るサル、聞くサル、しゃべるサル〉
(彫刻)

前田由美 さん 山口県

 

★干支コンテスト<申>特集の詳しい内容は、『Ar陶NEWS バックナンバーNo44号』で掲載しております。 ★




1ページ | 2ページ
tougeizanmai.com / バックナンバー