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高取焼 (たかとりやき) 

 高取焼は、福岡県の直方市、宮田町、岡垣町、山田市、飯塚市、福岡市などで焼かれてきたやきものです。 その歴史は古く、桃山時代に鷹取山西麓に最初の窯が築かれたといわれます。
 それにしても、ずいぶんと広範な地域に渡っていたものです。 現在の、高取焼を名乗る窯元が、小石原(朝倉郡)にある高取静山窯や高取八仙窯、福岡市にある亀井味楽窯など決して多くない現状を見ると、なおさら不思議と思えます。 今回は、この疑問にズーム・アップ!
 これは、長い歴史の中で度重なった転窯・増窯によるものでした。 たとえば、高取焼の初代は朝鮮出兵の際に日本に連れてこられた名工でしたが、この八山(和名・高取八蔵)だけを見ても、永満寺宅間窯、内ヶ磯窯、山田窯、白旗山窯など数度に渡り窯を移しています。 なかには、朝鮮への帰国を願い出て藩主の逆鱗に触れ、蟄居となったために開いた小規模な山田窯のエピソードも・・・。 日本のやきもの史に潜む悲哀を感じさせます。
 さて、これらのなかで注目すべきは白旗山窯です。 八蔵は開窯にあたり、小堀遠州の指導を受けています。 現代の茶陶・高取焼に特徴的な、瀟洒で軽妙な作風は、はたしてこの窯以来の、遠州による「綺麗寂び」の美感に源流があったのですね。

釉調は、酸化炎焼成で光沢を出すのが特徴です。
写真協力:福岡県東京事務所



白・飴・黒・黄・高宮・フラシ・緑青の7釉が伝統的高取釉。  






−−前号では、茶碗とその重さの関係について有意義なお話をお聞きしました。
 ところで、重さばかりでなく、現代の陶芸家らによって作られる「井戸茶碗」は、驚くほど大きなサイズのものが多いようにも感じます・・・・。

 安藤●井戸茶碗は「喜左衛門」(国宝)などの大振りな茶碗でも、口径はせいぜい15センチほどです。 また実際の茶席においては、薄茶を一服いただくのに、異様に大きな茶碗で飲むなどということは、まずあり得ません。
 それに薄茶で用いられる茶碗は、井戸以外ならなんでもいいというわけでもありませんよ。 やはり濃茶と薄茶の、お茶自体の格が違いますから。 当然ながら、その席に相応しい茶碗の格があります。
 ある意味では茶碗は主役なので、それに適した技術と精神性が作り手に求められています。

−−謙虚に、実際の茶席を踏まえて作ることが大切ですね。

 安藤●道具にはいろいろな取り合わせがありますから、もちろん茶碗だけが浮き立ってもよくありません。
 伝来の茶碗は、これまで多くの茶人たちによって厳選され、残ってきたものばかりです。 大きさも重さも、そして姿も、誰もが納得するような作りのものだけが、今に伝えられています。 つまり、大きさだけが判断の基準に置かれるほど、短絡的な価値観で茶碗は成立していません。

−−大きな井戸形の茶碗さえ作っていれば高く売れると、勘違いしている陶芸家が多いからかも知れません。

 安藤●井戸茶碗を作ってはいけないという気もありませんし、それに作らなければ上手になりませんからね。
 ただ名のある方の作にも、残念ながら茶席には使えないものが割と多く見られます。 反対に、本当にものがよければ、無名の方の作でも、茶席で取りあげることがあると思いますよ。 もとより現代のものだから使えない、などという狭い了見ではありません。
 とにかく、お茶の心を心として技術を会得していくような方なら、茶にかなうしかるべき姿形、大きさや重さの茶碗が作れるのではないでしょうか。
(構成・編集部)





濃い色の器に、真っ白な模様をつけたい・・・。さてあなたなら、どうしますか? 今回作者が選んだのは、「釉象嵌」の技法でした。 
40 藁灰マット釉+志野釉

 シックな地色と、躍動感のある白い模様のコントラストが清冽な今回の作。 この滲みのないホイップクリームのような純白を、作者はどう実現したのでしょう。 濃い色との組み合わせなので、なかなか難しいはず・・・・。
 実は、地の色は、信楽土に緑色の顔料を練り込んだ素地土の色でした。 そして白の模様は、生地を沈彫りし、その凹みに藁灰釉を埋め込むことで得られたもの。 つまり、色素地+釉象嵌の技法が、こんな深みのある白の表現を可能にしたのです!
 さらに全体に志野釉を吹き、落ち着きを持たせました。
 さて、釉象嵌のポイントは、かきベラで少し太めの幅に彫り、彫った分を埋め込むつもりで、筆で釉をためること。 藁灰釉は珪酸質が多く粘性があるため、流れ落ちるということもありません。
 この釉象嵌、すでにご紹介したイッチン(バックナンバー No.37)と比べてみて下さい。 きっと、釉の表現世界がますます広がります。
作品:辻 香織
高6.5 径16.0cm




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