常滑 大甕 12世紀 個人蔵
近年、消滅したと考えられていた窯業地の発見によって、製造技術の伝播や変遷が明らかとなり中世の窯業史が大きく変わろうとしています。今展覧会では12世紀前半から大窯業地として発展した常滑焼を含む瀬戸、越前、信楽、丹波、備前の六古窯の名品を中心に約150点の作品を展観。 米や麦などの穀物を蓄え、または水を溜めるといった当時の生活に欠かすことのできない壺や甕。 素朴ながらもがっしりと力強く、自然の焼け成りや焦げによって自然美を呈し、時にはオブジェのような表情を見せる中世のやきものの魅力に迫ります。 |
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瀬戸 灰釉牡丹文広口壺 14世紀 重要文化財 東京国立博物館蔵 (C)Image:TNM Archives Source : http://TnmArchives.jp/ |
越前 大壺 13世紀 福井県陶芸館蔵 |
備前 四耳大壺 福安(文安)元年銘 1444年 重要文化財 千光寺蔵 |
珠洲 大甕 12世紀 石川県立歴史博物館蔵 |
全国5会場を巡回する30年ぶりの大展覧会。東海地方では愛知県陶磁資料館がその会場となっています。 作品は窯業地ごとに分類され、順路に従って会場を一巡することで技法の伝播や影響関係、また各地域独自の発展の様子を見ることができます。 なかでも見所は「露出展示」。ガラスケース越しでは分からない、大甕の迫力ある大きさや無釉ならではのざらつき、輪積みの跡などを間近で体験することができます。 照明にも工夫が凝らされ、やきもの表面に残された製作時の痕跡をよりはっきりと見ることができます。燻銀のような艶を放つ『珠洲 大窯』の器肌にもくっきりと叩き文やつなぎ目が浮かび上がっているのが分かります。 |
常滑 大甕 12世紀 個人蔵 常滑 大甕 12世紀 愛知・常滑市立陶芸研究所蔵 珠洲 大甕 12世紀 石川県立歴史博物館蔵 |
信楽 大甕 |
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中世のやきものを楽しむ2つ目のポイントは“比較”です。 全国の窯業地に大きな影響を与えた常滑焼。12世紀末〜13世紀初期には常滑焼の影響を受けた越前焼が発祥。続いて丹波焼、そして加賀、信楽と同じく常滑焼の影響を受けて登場します。口縁や肩の作りに注目して各窯の製品を見比べてみると常滑焼との類似点を発見することができます。 また、各窯の特徴がよく現れているのが文様です。12世紀の常滑焼の特色である「三筋文」や信楽焼独特の「檜垣紋」など窯独自の発展を遂げた文様の豊かさは見ごたえ充分です。 窯業地ごとに展示されているので各窯の違いや、同じ窯の中でも時代と共に変遷するスタイルを見比べて、より深く、中世陶の魅力を堪能してみてはいかがでしょうか。 |
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信楽 大壷 14世紀 個人蔵 |
越前 双耳壷 15世紀 福井県陶芸館蔵 |
常滑 三筋文壷 12世紀 個人蔵 |
信楽 檜垣文小壷 銘富有柿 15世紀 滋賀・MIHO MUSEUM蔵 |
愛知県陶磁資料館・学芸員の長久さんに取材協力して頂きました。長久さんお気に入りのやきものは「珠洲」とのこと。最後の展示室に見事な珠洲の大甕が露出展示してありますのでお見逃しなく。 関連イベントとして行われる展示解説では、土の特徴や焼成の温度など製作技術について詳しい解説を聞くことができます。 |
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関連イベント  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ■記念講演 第1回 4月24日(日)午後1時30分〜3時 「中世陶器を愛でる―それぞれの味わいと魅力」 講師:井上喜久男(愛知県陶磁資料館) 第2回 5月8日(日)午後1時30分〜3時 「中世陶器研究の新段階―考古学的成果を中心に」 講師:井上喜久男(愛知県陶磁資料館) 会場:いずれも愛知県陶磁資料館 本館地下1階講堂 予約不要、参加無料。 ■本展企画者・井上喜久男による展示解説 4月29日(金・祝)、5月7日(土) (本展覧会企画者である井上喜久男によるギャラリートークです) いずれも 午後1時30分〜1時間程度 予約不要、参加無料。 ただし観覧券が必要です。 ■講演会 第1回 4月9日(土)午後1時30分〜1時間程度 「古瀬戸と中国陶磁」講師:森達也(愛知県陶磁資料館主任学芸員) 第2回 5月15日(日)午後1時30分〜1時間程度 「鎌倉・室町の工芸―金工、漆工、やきもの」 講師:長久智子(愛知県陶磁資料館学芸員) 会場:いずれも愛知県陶磁資料館 本館地下1階講堂 予約不要、参加無料。 ■学芸員による展示解説 4月16日(土)、4月23日(土)、4月30日(土)、 5月1日(日)、5月3日(火)、5月4日(水)、5月5日(木)、5月21(土) いずれも 午後1時30分〜1時間程度 予約不要、参加無料。 ただし観覧券が必要です。 ■会期中、茶室「陶翠庵」では、人間国宝 故・荒川豊蔵氏と加藤孝造氏の茶碗でお抹茶を楽しんでいただけます。(一服530円) |