インターネット版 No.96 全2ページ 1 | 2

1 ・特別レポート ・・・ 短期間でも公募展で大賞受賞の栄冠!
2 ・あるコレクターの眼 - S氏コレクション ・・・ 鈴木治の泥象とうつわ


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●女流陶芸大賞/長谷川園恵
 「積み重なる大地〜消えない汚染〜」
左●作品正面  中●裏面  上●上部部分
審査では「他を引き離して獲得した」受賞といわれています。


入賞を実現する仕組み
 今回の長谷川園恵さんの「女流陶芸大賞」受賞の一報は、深い喜びもひとしおでしたが、長く培われてきた九炉土の指導法と、カリキュラムの合理性が正しいと証明された結果としての評価でもあると思いました。
 それまで長谷川さんは作陶の経験がなく、九炉土の「陶芸指導プロ養成塾」で学び、本格的に土に触れました。そしてその2年時に女流陶芸展に初出品初入選を果たし、以降、4回連続での入選を経て、今回、5度目の応募で「大賞」受賞の栄誉へと結実しました。
 まったく作陶歴のなかった歳若い女性が、陶芸をはじめて足かけ7年目というショートスパンの内に難関公募展で連続入選し、受賞した最高賞は、賞自体を意識して目指さなければ到達できない目標でしょう。だとしたら、それはもはや偶然でも、運が幸いしたのでもない実力であることははっきりしています。
 では、実際にはどのように高水準の作陶を体得するのでしょう・・・・。たとえば、陶芸指導プロ養成塾に在籍すると、進級制作や卒業制作での大作作りが必須課題です。既に基本の技術などはマスターしていても、目的もなく大作を作る機会はまずありません。しかも、作品に向かう意識や意欲も問われますから、絶好の実地トレーニングです。
 また作陶に入る前には、構想している作品のデザインを、三方向から原寸大のスケッチで必ず描くといいます。そうすることで形の弱点やデリケートなカーブなどが見え、大作作りには欠かせない作業だとか。もちろんその段階での、岡本総長からの指導が徹底していて、それらを素直に受け留めた作者に、もし公募展へチャレンジしようという思いがあれば、なんと5割ほどの確率で入選できる指導レベルなのです。これらを統合して学ぶからこそ、短期間で公募展への入選・入賞を可能にしているのです。
 「それに作品のデザインや技術ももちろん重要ですけど、美術作品は、指先の技術だけではできないんですよ。土を通して作者の心が審査員など見る側に伝わっていきます。優れた作品には作者の心が宿っていますから、結局、作る人の総合力で作られるものなんですからね」
 岡本総長の言葉は重く、技術はもちろん、このような思索的な指導者の下で学べば、公募展への入賞も夢ではない現実なのだと痛感しました。 ■


京都市美術館(京都市左京区)の大展示室に展示された女流陶芸の入賞・入選作。
上●手前右に長谷川さんの大賞作品が並べられています。
坪井明日香
左より
「変貌した女―夜と闇と昼―」
「変貌した女―光と影―」
「変貌した女―光と風―」

京都市美術館の本館正面西玄関 同西玄関のホールには重厚感があります。



結果を考えずに、まずチャレンジです
長谷川園恵さん






現在、九炉土の講師となって活躍中の長谷川さん。
大賞受賞の長谷川園恵さんにインタヴュー


――― なぜ、これまで連続入選できたと思いますか?
 「最終的には賞を目指すつもりで作っていて、その意気込みでやるなら賞や入選よりも、まず去年の自作よりもいいものを作りなさいと、岡本先生にいわれていました。で毎年それを意識したのがよかったと思います」

――― 先生のアドバイスが有効だったんですね。ほかには?
 「自分で表現したいものには妥協せず、時間と体力の続く限り全部を注ぎ込んで毎年、作っていることでしょうか・・・・」

――― オブジェを作りはじめたきっかけは、なんでしたか?
 「進級課題では少し大きいものが制作条件でした。その時は傘立てやシェードしか浮かばなかったのですが、用途のない表現も陶芸の魅力と先生にいわれ、分からぬまま取り組むうちに、だんだん楽しくなりました」

――― では、作陶の基本姿勢は?
 「教える時も、自作を作る時も、やりたいと思うんなら、基本的にはチャレンジ。失敗しても自分でチャレンジして楽しい方が大事かなぁ、と思っています」

――― ありがとうございました。


意欲作がズラリ並ぶ
  「第43回 女流陶芸公募展」
「女流陶芸は1957年に坪井明日香氏の呼びかけにより、京都で結成。保守的な陶芸界に、プロ・アマ問わず女性の進出を促した功績は多大です。
左上●河北記念賞 木希容子 「露草色大鉢」
左下●文部科学大臣賞 塩冶友未子 「魂の記憶200Q」
右●京都府知事賞 宮本朋子 「大地の種」



第16回泉湧寺窯  窯元大陶器市
泉湧寺(京都市東山区)から、紅葉で有名な東福寺界隈にかけての地域には、50軒ほどの窯元があります。紅葉狩りをしつつ各窯元のショールームや特設のテントを丹念に覗いて歩けば、お買い得な掘り出し物も見つかりそう。
これは昨年の11月に取材したものですが、今年もまた同じく11月下旬に開催されます。紅葉狩りがてら、足を運んでみてはいかがでしょうか。
東福寺の紅葉は、一見の価値ありです。




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