今回の長谷川園恵さんの「女流陶芸大賞」受賞の一報は、深い喜びもひとしおでしたが、長く培われてきた九炉土の指導法と、カリキュラムの合理性が正しいと証明された結果としての評価でもあると思いました。
それまで長谷川さんは作陶の経験がなく、九炉土の「陶芸指導プロ養成塾」で学び、本格的に土に触れました。そしてその2年時に女流陶芸展に初出品初入選を果たし、以降、4回連続での入選を経て、今回、5度目の応募で「大賞」受賞の栄誉へと結実しました。
まったく作陶歴のなかった歳若い女性が、陶芸をはじめて足かけ7年目というショートスパンの内に難関公募展で連続入選し、受賞した最高賞は、賞自体を意識して目指さなければ到達できない目標でしょう。だとしたら、それはもはや偶然でも、運が幸いしたのでもない実力であることははっきりしています。
では、実際にはどのように高水準の作陶を体得するのでしょう・・・・。たとえば、陶芸指導プロ養成塾に在籍すると、進級制作や卒業制作での大作作りが必須課題です。既に基本の技術などはマスターしていても、目的もなく大作を作る機会はまずありません。しかも、作品に向かう意識や意欲も問われますから、絶好の実地トレーニングです。
また作陶に入る前には、構想している作品のデザインを、三方向から原寸大のスケッチで必ず描くといいます。そうすることで形の弱点やデリケートなカーブなどが見え、大作作りには欠かせない作業だとか。もちろんその段階での、岡本総長からの指導が徹底していて、それらを素直に受け留めた作者に、もし公募展へチャレンジしようという思いがあれば、なんと5割ほどの確率で入選できる指導レベルなのです。これらを統合して学ぶからこそ、短期間で公募展への入選・入賞を可能にしているのです。
「それに作品のデザインや技術ももちろん重要ですけど、美術作品は、指先の技術だけではできないんですよ。土を通して作者の心が審査員など見る側に伝わっていきます。優れた作品には作者の心が宿っていますから、結局、作る人の総合力で作られるものなんですからね」
岡本総長の言葉は重く、技術はもちろん、このような思索的な指導者の下で学べば、公募展への入賞も夢ではない現実なのだと痛感しました。 ■ |