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◎はじめて作った作品 

編集部 ところで長岡さんは、九炉土の歴史とほとんど同じだけやきものを作り続けていらっしゃったのですね。

長岡なぜ陶芸が長く続いているかといえば、そういうことが吹っ切れないタチで、何でもやりはじめたら。 だから、陶芸は単なる癖と思って下さい(笑)。 それに、多分、岡本先生が教えて下さるから・・・(笑)。

佐藤ホントに好きなものを一つ持っていたら、長生きしても退屈しないと思いますけどね。

長岡長生きって、いくつぐらいのこと? 私のことを攻撃されてるみたい(笑)。

岡本ぜひ、100歳を越えても作っていてもらいたいと思います。

編集部長岡さんが最初に作ったものはどんな作品でしたか?

長岡それは大事に仕舞ってあります。 あれはね、本当に岡本先生と膝をつき合わせて作ったものだから。 湯呑みの小さいの。 小さくて、浅いのでね。
長岡 文さん
90歳を過ぎてもなお矍鑠(かくしゃく)たる長岡さん。笠原さんによれば「長岡さんは、いつ教室でお会いしても品格があって逸脱しない。落ち着いていて、生活している姿が上品で尊敬しております」とのこと。

― みんな同じものを作っているのは、 つまらないですよね。 できないくせに 私はそう思っています(笑)。 (長岡)
佐藤京子さん(右)藤井さんは「私たちに較べて京子さんは、背が高く手も大きくて、作品作りの発想も私たちとはまるで違いますね。 新しい空気を発散していて、楽しい話題でいつも一杯の方なんですよ」と佐藤さんの印象をいいます。

―家に来たお客様に、「器も料理も 全部手作りで、気持ちが入っていて感激した」 といわれて、ああ、陶芸をしていて よかったなぁと思いましたよ。 (佐藤)
佐藤私が最初に作ったのも、湯呑みだったと思いますね。
 最初の頃は、先生が後を廻ってくると、見られるのが恥ずかしくて嫌で、置いてあるものを隠したり、また廻ってくると今度は落としたふりをして(笑)。 でも、見られたくなかったそんな作品でも、その年の九炉土展にそれを出しなさい、といわれた時には、私を受け入れてもらえたのかなぁと思いました(笑)。

笠原私も湯呑みだけど、それは使わないです、恥ずかしいし。

長岡湯呑みとしてでなく、珍味入れみたいにしてね。

笠原友達の食器でなら食事はできますけど、自分の器に料理を盛って会食はできませんね。 気恥ずかしい。 もちろん、作る時はみんな忘れて作っていて、だから続いているんですから。

長岡私はちっとも恥ずかしくないけれど、おかしいのかしら。

笠原やっぱりね、友達の作品は巧いんだと思うの。

岡本笠原さんの作品はね、そのものが現れるんですよ。 筆使いや絵柄に自分が出ているんですね。 それが個性でいいところなんですけど、逆に、ご自身から見たら自分を見る気がして気恥ずかしいんじゃないかな。

笠原ああ恥ずかしい・・・(笑)
 ひとつ九炉土の思い出話をすれば、伊賀旅行は私にとってはとても忘れられない。 そもそも登窯を実際に見ることもなかったし、西山窯の坂本瀧山先生がついて教えて下さって。 後で素晴らしい色の灰被りのが出来てきて、「えっ、これ私が作ったの!」みたいなねぇ。
 作陶以外の他の部分も楽しかったし。 お月さまが綺麗だったとか、伊賀牛が美味しかったし・・・とにかく盛りだくさんで。


◎一生の楽しみ・・・・・陶芸
藤井九炉土の特徴は、自由に、それぞれがやりたいものをやっていることで、それに尽きると思う。 私自身もそうだし、周りでやっている方もそうだと思いますね。 それが心地よくて、長く続いていく。 誰かにいわれて作るんじゃないし、自分でやりたいものをやっているんだから、できなければ、未熟なんだからしょうがないと思って諦めてね。

笠原講師の先生方も、本当に一生懸命にやってくれていますね。 指導は徹底しているけど、とても感じがいい。

藤井どんなものでも、誰にでも同じように教えて下さるし、大したものだと思います。

編集部それでは皆さんに、今後の陶芸での目標、陶芸との付き合い方などをお聞きします。

笠原特にこんなものを作りたいというのはないんですが、この時代に陶芸が庶民にもできるようになったのは幸せだと思うし、だから足が続く限りは続けたい。 皆さんとのお付き合いも楽しいですし、続けていきたい。

長岡私も命ある限り、陶芸と付き合っていきたいと思います。

編集部九炉土には長岡さんが目標で、あのようになりたいという方が多くいらっしゃいます。

長岡それがいいのかどうか分かりませんが・・・(笑)。 毎年の九炉土展の時にね、岡本先生に、これが最後の展覧会でしょうというと、確か去年もそういっていましたよといわれます。 毎年、そういっているみたいですね(笑)。 最後のつもりで、いつもやっていますから。

藤井私みたいな怠け者がね、なんとなくやっているみたいで申し訳ないと思うんですけども、楽しいからやっているんでね。 この楽しみは奪わないで下さい。

佐藤私も教室に通えて、目が見えるうちはずっと続けたい。

岡本長年やっていて、なお陶芸が楽しいと思ってもらえるのは、単純な土いじりの部分と、奥の深い文化の部分とを融合させながら楽しめて、しかも感覚的なものも出せるし、実用的な道具を自分なりに作ることもできるからではないかと思います。
 陶芸と粘土細工とは違っていると私は判断していて、陶芸は文化度や芸術度がやや高いところで維持していければ、それ以上は難しく考えなくていいと思います。 ムリしない自然体が、長続きにつながるのでは・・・と思っていますから。

編集部長い時間、貴重なお話をありがとうございました。
(敬称略/構成・編集部)


九炉土での楽しい思い出や、陶芸の魅力を語る30周年の記念座談会出席者の皆さん。 ユーモアたっぷりに、終始和やかな雰囲気の中、あっという間に2時間が過ぎていきました。
左から 佐藤京子さん、藤井節さん、長岡文さん、笠原くにさん。
笠原くにさん佐藤さんに聞くと、 「笠原さんには(教室で)分からないことをいろいろと教えて頂くこともあるんですよ。 ひとつ聞くと、3つも4つも教えて下さって、ああ大先輩なんだなって思っています」。

―私が持っている「それなり」(笑)で、 これまでずっと陶芸を 続けてきました。 それなりでいいと思っています。 (笠原)

藤井 節さん(左)藤井さんのことを長岡さんは、「陶芸の豊富な知識を持っていて、私が相談するのにも都合がいいの(笑)。 背丈も手の大きさも私と同じくらいで、だから作る茶碗も同じような大きさのものができるんですよ」といいます。

―やっぱり陶芸は面白い! と実感したのは、九炉土でお皿を作って それに料理を盛って 食べたことからでしたね。 (藤井)
伊賀旅行の折に作った見事な皿を手に、懐かしく話す藤井さん。



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