インターネット版 No.85  全3ページ 1 | 2| 3

1 ・「陶房 九炉土」陶芸クラブ 30th 記念座談会 @
2 ・「陶房 九炉土」陶芸クラブ 30th 記念座談会 A
3 ・茶とやきもの 52 ・・・ 遠州流・安藤宗良先生にインタヴュー 「穴の空けられた伊賀花入」
・BOOK ・・・ 現代日本の陶芸 vol.2


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「陶房 九炉土」陶芸クラブ  30th 記念座談会
30周年企画のまとめとして、九炉土の歴史ともいえるベテラン会員さんによる座談会を行いました。
陶芸に親しむ、各々の理由が聞けました。
自由に、作りたいものが
作れる心地よさ
座談会出席者。右から笠原さん、長岡さん、藤井さん、佐藤さん、岡本総長。  
なぜ、九炉土で作陶を続けて
きたのですか?
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◎作陶ことはじめ

岡本「陶房九炉土」は一昨年、お蔭様で30周年を迎えました。
 今日は「Ar陶ニュース」誌上での30周年記念企画の締めくくりとして、座談会を開催させて頂こうと思います。
 九炉土には、20年を越える会員の方は大勢いらっしゃいますが、なかでも先輩格の4人の方々にご参加頂きました。
 クラブというのは、多くの人々によって組織されることから、その方向性や性格付けが大切ですが、本日ご足労頂いた4人は、偶然にも、本質をしっかり守り、ぶれないためのお目付役的な存在の、長岡さん、藤井さん、そして芸術性や個性といった私が最も重要視している取り組み姿勢にバリエーションを与えて下さっている笠原さん、佐藤さんといった性格的にも両極端なメンバーになりました。
 皆さんには、九炉土での作陶や、人生の半分くらい関わっているご自分と陶芸のこと、また、将来についてなどを大いに語って頂きたいと思います。

笠原30年間、九炉土の創設当初は、都内に陶芸教室はどれくらいあったんでしょう。

岡本教室自体は10軒くらいはあったでしょうね。 ただ九炉土のようなスタイルでやっているところはなかったと思います。

長岡教室でみんな同じものを作らせるってのは、つまらないですよね。 私は上手くはできないくせに、そう思ってるんですよ(笑)。

岡本そうですね、先生に限りなく近づけばいいというやり方では、面白くないですから。 作るものを自由にしたなかで、機会を見つけつつ、基本的な姿勢や技術は教えなければという思いはありました。 でも作るものを決めたり、手を入れ過ぎてしまったりしないようにという姿勢は貫いてきました。 結構大変なんですよ、手を出さずに横で見てるのって(笑)。

笠原今でも忘れられないのは、湯呑みを作っていて、それがどんどん拡がってしまって、おまけにヒビ割れてきてどうしようもない・・・。 その日は家に帰ってから肩がコチコチに凝っていて、あの頃は緊張して作っていたなと、今も思い出しますね。
 私は子供の頃、図工で粘土をあてがわれると、もうどうしたらいいか分からなかった。 それが小学校教諭時代の先輩 ・染野幸子先生(女流陶芸会員、前九炉土会員)に誘われて、 「あなたのそれなりのができるわよ」といわれた。 ああそうか、それなりでいいんだと思った。 それが陶芸のはじまり。 私が持っている「それなり」(笑)で楽しめばいいってことですね。
 それから私は、化粧泥がすごく面白い、釉よりも。 釉の面白さとか不思議さは、まだよく分からないですね。

岡本釉薬は偶然に混ざり合ったり、温度により融けが少なかったり多かったりして色も違う。 化粧泥は土だから、自分のやったものにしか期待はできない。 つまり偶然はないから、しかし、やったことはそのままであり裏切らない。 そういうものが好きだという人は、制作の意図が見えているんですよ。

藤井私はね、実用誌の仕事をしていたものですから、料理を撮影するのに器を選ばなきゃなんなくて。 それで器を探して歩いたり、借りてこないと撮影ができないことになるんですね。 ところが、いい器は簡単に貸してはくれませんしね。 狭い範囲でしたけど、足を棒にして歩き回りましたね。 でもうまくハマった時って、やっぱり器っていいなって思って。 それで器が気になりはじめました。

編集部それがどうして作ることになったのですか?

藤井そうしているうちに、とにかく器が好きになったんですね。 でも見ていると、これがこうだったらもっといいだろうとかね、そんな感じで見ていたら作りたくなって。 自分でもこんなふうなのを作ってみたいとか、思うようになったんですね。
 それで最初は、九炉土でお皿を作って、早速それに料理を盛って食べましたね(笑)。 やっぱり陶芸は面白いですよね。



岡本立世総長
 「陶房 九炉土」創設者


長岡 文さん(名誉会員)
  作陶歴=30年


藤井 節さん
  作陶歴=20年以上


笠原くにさん
  作陶歴=約25年


佐藤京子さん
  作陶歴=20数年
佐藤ねぇ、本当に楽しいですね。 私は家に人を呼びましたよ。 3人くらいのつもりが、結局、15人くらいになって。 皿に絵を描いてあったのが、料理で隠れて見えなくて。 それがだんだん見えてくると、それを上手におだてる人がいて(笑)。 でもね、そこに来ていた人に、「器も料理も全部手作りで、気持ちが入っていて感激した」といわれて、ああ、陶芸をしててよかったなぁ、楽しみが拡がるなぁと思いましたね。

笠原それにしてもあの時代、とにかく岡本先生が自由というのでスタートして、教室にいつでも、何時間いてもいいというのはとても都合がよかったです。

岡本今も時間は自由ですから。

笠原私たちはのんびりとやってますから。 そうかと思うと、30分くらいしか時間がなくても来る人がいて。 それでも来てやりたいんだなって。

長岡私たちは、お喋りの時間が長いですし・・・(笑)。

岡本作るのを時間で決められるのはね。 ただ、初心者コースは90分に設定しているんですけどね。 1時間も土をいじっていればヒビが入ってしまい収拾がつかなくなる。 それは初心者にも無難に作品が作れるための、妥当な90分間なんですよ。



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