インターネット版 No.76 全2ページ 1 | 2

1 ・茶とやきもの 50 ・・・ 「日本の美意識が作った古染付の味わい」
2 ・リラックス・セラミックス 15 ・・・ 香炉
・目にも旨い!男の簡単Cooking 44 ・・・ 葉わさびの稲荷寿司


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−−この連載も今号で50回目を迎えました。 毎回、安藤先生の幅広い知識を背景にしたお話を伺うことができ、興味深く感じている読者も多いようです。
 さて前号は、青磁の花入は茶人が見立てによって取り上げはじめた、ということでした・・・・。

安藤●人間も文化も気候や風土により、大きく影響を受けるものです。 湿気の多い日本では、最初のうちは中国陶磁の持つ完全無欠な美に接すると、憧れを持ちます。 ところが、青磁本来の美は美として、もっとしっとりとした風情のあるものを求めるようになります。 雅味あるものに惹かれ、心が癒されるのです。
 と同時に、中国の製陶技術も衰え、作られるものが変化します。 それらが相俟って、歴史的に様々なものが受け入れられているのでしょう。
 茶碗などの茶道具類は、時とともに日本からの注文によって作られる機会が増えていきます。
 たとえば遠州の時代には、景徳鎮窯に対して、染付の水指など、茶の湯の道具に適うものを発注していました。 それが「古染付」と呼ばれるものです。

−−現代の日本人にも、愛好家が多いですね。

安藤●元代後期に技術や様式が確立された、染付磁器に人気がありました。 それによって景徳鎮窯は、中国を代表する窯業地のひとつになったほどですから。
 なかでも古染付は、明時代末期頃から焼かれた、どちらかというと味わい深い染付です。
 これらの特徴は、やや渋い青色を呈していて、とくに口縁部などに釉剥れが見られ、これを「虫喰い」といいます。 それらは日本の茶人好みの、茶の湯の美意識に則った結果として取り上げられました。
 また、古染付の造形の提案者や注文主はこれまで判然としませんでしたが、今では研究が進み、遠州からの注文品だったことがほぼ断定されていますよ。

−−なるほど。 日本の有力な茶人からの要請によって、中国の窯では、独特の儀式が完成されていったのですね。

安藤●美は人間の心が感じるものですが、人間も社会状況の変化と無縁ではないということでしょうか。
 茶の湯も、時代に呼応しているといえましょう。
(構成・編集部)




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