そもそもこの「たち吉陶芸倶楽部」東京校は、九炉土千駄ヶ谷校の培ってきたレベルの高い作陶指導法と、京都の老舗・たち吉のブランドイメージが重なって開講に至ったもので、いわば陶のコラボレーションです。
この講座でとても大切にされているのは「基本技術」の修得。 陶芸の楽しさを実感するためには、最終的には作者のイメージ通りに作品が作れることに集約できるから。
つまり、作者自身の自分スタイルを謳歌するためには、まず基本の技術さえしっかりと学んでおけばよいのです。
たとえば、今回の「たち吉賞」や「岡本立世賞」などの受賞作品も、その点が評価の一部になっているのは注目です。
東京校の出品作を審査した岡本立世総長は、「賞を受けるような作ならば、基本技術をしっかりと身につけたうえでの、自然体な表現が必要になりますよ。
それがあってはじめて楽しく、自由に作れるようになるはずですからね」とおっしゃいます。
そのうえで「たち吉賞」は、自由な、自然体な雰囲気が作品に溶け込んで一体化した寄金義紀さんの作品に決まり、また、計画性のある作品作りをしていながらも闊達さが感じられ、意図通りの効果が得られた作を完成させた堀佳世さんに、「岡本立世賞」が贈られました。
確かにこの2作をじっくり鑑賞してみると、それぞれの味わいが異なっていることに気がつきます。 堀さんの「二枚葉」は、わざわざ彫りを入れてリアルに葉脈を作り込み、そしてプランに沿って意識的に色を配置し、成功を納めているようです。
他方、寄金さんの「片口大鉢」は、片口というオーソドックスな形の器を作ろうとしながら、刷毛目の力強さと造形のバランスが絶妙にとれています。 「堀さんの作はデザイン力があり、意志を持って作っているのがよく伝わってきますよ。
寄金さんの片口は、形に負けない刷毛目の強さが魅力。 技巧だけに走らず、自然体な作りに好感が持たれますね」(岡本総長)。
技術賞の3作に目を転じてみても、それぞれが高レベルな基本技術を用いて、完成度の高い作品に仕上げています。 細部の丁寧な作り込みにも感心します。
こうして努力賞を含めた入賞作を見渡すと、目と心に届く印象深い作ばかりだと思います。
もちろん京都校の出品作も、講師の先生方の個性的な表現を受け継いで、華麗でかつ典雅な作が多く並んでいました。 イベントとしても定着した本展は、東京校、京都校ともに互いによい刺激であり、また目標にもなっていると感じられました。
■ |