インターネット版 No.71 全2ページ 1 | 2

1 ・第26回「陶房九炉土会員作陶展」レポート ・・・ 釉の景色 美しの森 @
2 ・第26回「陶房九炉土会員作陶展」レポート ・・・ 釉の景色 美しの森 A


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第26回 「陶房九炉土 会員作陶展」レポート
釉 の 景色
     美 し の 森
    
今展で第26回を数える「陶房九炉土会員作陶展」では、「釉の景色」という統一テーマに沿って作陶に取り組んだ成果が発表されました。釉薬が主題なだけに、例年に増して美しく、彩り鮮やかに感じられる秀作が会場一杯に並べられ、活況でした。
 出品者それぞれの制作の狙いや感想などを紹介しながら、本誌上で改めて会場を一巡してみたいと思います。

九炉土展の会場(新宿センタービル・
朝日生命ギャラリー)は連日の大賑わい。



意志ある作の清々しさ

 美しく、奥深い釉薬への憧憬と軒昂な探求心に裏打ちされて、今回の九炉土展のテーマは「釉の景色」です。 日頃からこの課題を心に留めて作陶を重ねてきた会員の皆さんの成果が、先頃展示・発表されて大盛況でした。
 まるで色の森を彷徨うかのように、会場を一巡して気がつくのは、「釉の景色」という統一テーマに向かって制作されたにも関わらず、それぞれの作が闊達で多様百出ということです。
 でも、それだけの理由では、この会場全体を流れる心地よい雰囲気と、熱気の原因は語れません。 そこで改めて冷静に見て思うのは、多分これら出品作の多くは、「これを作ろう!」という明確な意志を持って作られていると思えることです。 作品とそこに添えられた作者の言葉によって、それは一層際立ってきます。
 具体的には、釉薬の対比、調和、配分、変化など、テーマに対して鋭く切り込む秀作もあれば、一方では自然の移り変わり、や季節感、四季など釉による絵画的表現に工夫を凝らした出品作があって、どれも見事です。
 ものを作る前に当たり前のようにあって、でも意外と見過ごされてしまいそうな、作者の意志と感覚=個性が、ここでは清々しいほどクッキリとしていて、容易に見て感じられるのです。
 そしてその基盤には、様々な個性を導き出し、作者それぞれの技術を支えて経験へと転化し続けてきた、「陶房九炉土」の30年間の実績と、それに伴う多大な恩恵によっています。 そしてそのことを、作者と指導者の相互が承知している点でも稀な陶芸クラブだと思います。  ■



=使用した釉薬の種類  =九炉土展出品作品の狙いや感想など
・牛込美代子さん 「灯籠」 燻金彩+黄伊羅保+青銅
明るいところに置いても存在感があるように、渋めの色使いにしました。

・大澤繁子さん 「花入(筒形)」 1号トルコ青+透明+志野
湖のように神秘的なイメージを出すために、1号トルコ青釉を使いました。

・佐藤京子さん 「跡(夕)」 チタンマット+青銅+燻金彩
雪国の夕暮れ・・・。白い雪の原に続く道や轍、木の枝に降り積もる雪景色を釉で描写しました。

・藤井 節さん 「そぎ作り花入」 黒天目
そぎ作りによる形と釉の掛け方がよくかみ合って、1種類の釉薬でも変化のある奥深い色が出せたと思います。

・中野敏子さん 「角切四方皿」 黒天目+4号トルコ青結晶
梅の花が狙い通りにもっと青く出ると、一層よい作品になったのではないかと感じています。
・深川紗智さん 「裂 RETSU」 黒マット+青銅+黄伊羅保+火色+4号トルコ青結晶
最も自分らしい釉掛けで、枯れゆく景色を主題にしたところ、大きくひび割れて思いもしない力強さが表現できました。

・長岡 文さん 「鶴首花入」 1号トルコ青+織部
透明感のある緑色のなかに多様な変化をつけて楽しみました。

・岩崎弘子さん 「長板皿A」 4号トルコ青結晶+青銅+紫
3種の釉薬を大胆に用いて特徴を引き出し、皿のなかに草原を表現しました。

・深澤暁美さん 「壺『こぶし』」 燻金彩+チタンマット+火色+桃山黄瀬戸
燻金彩の木の幹にチタンマットで花を描き、釉薬の微妙な変化を期待して制作した作品です。

「陶房 九炉土」陶芸クラブ 30th @
名誉会員・長岡 文さんに感謝を込めて……
今年、設立30年を迎えた「陶房九炉土」。
開講まもなくに会員となり、今もなお現役で旺盛な制作欲を持つのが長岡文さん(名誉会員、90歳)です。 同展会場で岡本立世総長より、永年の研鑽を顕彰し、また感謝を込めて花束が贈呈されました。
長岡さん(左)に花束を贈る岡本総長。

   
・大久保尚代さん 「花瓶」 黄伊羅保+黒マット+4号トルコ青結晶+青銅+ビードロ
中国の幽谷を想い描いて釉掛けに挑戦!

・中原達也さん 「信楽土大鉢」 志野+そば+鮮紅天目
料理を引き立てる簡素な内側と、釉が華麗に滲む外側との対比が楽しめるようにと思って作った大鉢です。

・増井和美さん 「耳付花入」 金茶窯変+白天目
金茶窯変と白天目の重なりの結果として出来る、釉の変化の面白みを狙って作りました。

・福永千草さん 「中皿」 チタンマット+黒マット+黄伊羅保+火色+青銅
つやの少ない釉を選んで使い、ぼかしながら吹き分けて制作しました。

・日比野喜代子さん 「角皿」 黒天目+4号トルコ青結晶+赤結晶
雅を求めて・・・・。

・原 恵美子さん チタンマット+燻金彩
    「若武者(五月人形)」 薄い釉を吹き、濃淡をつけることにより土の質感や、人形の形を生かすように心掛けて制作しました。

・片山百合子さん チタンマット+ワラ灰マット+桜桃色+紫+カナリア黄+織部
    「花のささやき」 限りなくやさしく、繊細な感じに・・・・。

・近藤正子さん 「五角形鉢」 カナリア黄+織部+燻金彩
カナリア黄釉と2種の釉の配分をテーマとして取り組みました。


・荻野美代子さん 「深山」 黄伊羅保+青銅+火色
荒々しい山々の連立を思い出しながら。

・和田千賀子さん 「夢吹雪」 ビードロ+チタンマット
スローモーションビデオで見た花粉が飛散する様をイメージして・・・・。

・柳川桃登子さん 青銅
        「緑釉長方皿」 今回は緑釉にこだわってみました。

・足立尚子さん 「伊賀四方壺」 織部+黄伊羅保+黒マット
伊賀土に窪みを作り、織部釉の釉溜まりを狙いに作成しました。

・西尾房子さん ルリ+ワラ灰マット+亀甲レモン+志野+亀甲ヒワ+桜桃
       「ランプシェード 鳩」 今宵も和やかに。

・大谷楠世さん 「魚文様大皿」 4号トルコ青結晶+桃山黄瀬戸+黄伊羅保
渋めに。魚を包むように黄瀬戸、周りは黄伊羅保釉で強に仕上げました。


・笠原くにさん 「野分」 志野+チタンマット
素地に荒いグレーの土を使い弁柄と呉須の絵付をし、一部にチタンマット釉で野分の景色を表現しました。

・加藤啓子さん 「葉形皿」 桃山黄瀬戸+織部+黄伊羅保+青銅+火色
木の葉が紅葉した風情を出せたらと思い、工夫してみました。

・有賀礼子さん 「草文壺」 チタンマット+黒マット
夕暮れをイメージし、これら2種の釉薬を使って制作しました。

・竹中美利さん 茄子のヘタの部分に燻黒釉を使ったことで、いっそう茄子らしさが引き立ちました。

・柳橋くに子さん 椿文様を際立たせるために対面に織部、カナリア黄釉を吹きつけた鉢を作りました。

・小沼千江子さん 菓子鉢にワラ灰マット、織部、カナリア黄、黄伊羅保の4種の釉を掛け、その融合を制作の狙いにしました。


・新井 泉さん 「皿」 織部+ビードロ織部+カナリア黄
白化粧のうえに3種の釉薬を効果的にぼかして施し、透明感を狙いました。

・山端直子さん 「水盤−旭−」 火色+特製ビードロ+黒マット+青銅
火色の丸とビードロ釉の緑の調和。

・菊地順昭さん 4号トルコ青結晶、黄伊羅保、青銅釉を使い、吹きつけの濃淡により微妙な色の変化をつけました。


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