インターネット版 No.66 全2ページ 1 | 2

1 ・茶とやきもの 46 ・・・ “用の美”を前提としたほどよい大きさ
・ZOOM--UP 19 ・・・ 大樋焼の巻
2 ・器で愉しむお茶時間 30 ・・・ コーヒーカップ&ソーサー


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−−−−これまで、8回に渡って水指にまつわる様々な話をお聞きする機会を頂きました。
 いよいよ今回は、水指をテーマとして取りあげる最終回です。 締めくくりに相応しく、実用的な水指の使い方、しまい方、それから、水指を作る場合のアドバイスなどありましたら教えてください。


安藤●茶事などで、焼締めなど無釉の水指を使う際には、「水を効かす」とよいでしょう。
 これは、使う前日の晩くらいから、水指全体を水にたっぷりと浸けておくことをいいます。 そうしてカサカサとした陶肌に潤いを与えると、土の色も見違えるようによくなり、活き活きとしてきます。
 反対に、水指は花入と同様で、水を入れて使う道具のために、使用後の手入れや後始末がとても大切ですからね。

−−はい、備前などの水指はきっと思いの外、水分を吸っている気がします。 実際には、どんなしまい方をすればよいのでしょうか?

安藤●使用後に水をあけたら、乾いた布でよく拭きます。 箱にしまう前に、完全に水分をとって下さい。
 冬場は部屋に陽の光が射し込むため、ガラス越しでも構いませんから、陽に当てて充分に乾かします。 一晩では乾かないものもありますから、慌ててしまわないで下さい。
 それから蓋は、塗蓋なら固く絞った濡れ布巾などで拭いたあと、もう一度、柔らかい布で充分に拭きます。 水分が残っていると、跡がつきますから気をつけて下さい。 しかし塗り物ですから、乾燥させ過ぎてはいけませんよ。

−−はい。 後始末はとかく面倒に思えたりするものですが、カビが生えて後悔しないようにしたいと思います。
 それから最後に、私たちが水指を制作する場合のアドバイスなどありましたら、ぜひお願いしたいのですが・・・・。


安藤●水指はあくまでも水を入れて使う道具であり、しかもある程度の容量が必要になります。 また、柄杓を入れて汲むわけですから、口はあまり小さくしないで下さい。
 根本的には、水指においても “用の美” を前提とした均衡のとれたほど良い大きさや寸法が求められるということです。
 皆さんの次作に期待していますよ。
(構成・編集部)





ZOOM-UP <19>
大樋焼の巻 (おおひ) 
 大樋焼は、石川県金沢市に江戸時代から続くやきものです。 金沢といえば色絵の九谷焼が有名ですが、大樋焼は楽焼の窯。 しかも窯元が密集するわけではなく、唯一、大樋長左衛門窯が330年の伝統を守っています。
 なぜ、九谷薬の懐深くにポツンと楽焼の窯が存在するのか・・・・? 今回は、この謎にズーム・アップしてみましょう。
 大樋焼は、京都・楽家の脇窯です。 脇窯とは、茶人たちの間で流布した言葉で、楽家以外で楽焼を焼く窯の総称。 ただし趣味的に焼かれた個人の窯は加えません。 明治以降、日本各地に楽焼が広がり、脇窯の数も増えていきました。 しかし、楽家の技術を直接受け継ぐという意味では、大樋焼は、現在、ただ一つの由緒ある脇窯なのです。
 その昔、加賀藩主・前田のお殿様がお膝元に茶の文化を育てようと考え、裏千家四世千宗室仙曳(せんそう)を茶道茶具奉行として招きました。 その際、茶碗師として同道した陶工が、初代長左衛門です。 長左衛門は、楽家より飴釉の技法を譲り受け、金沢市大樋町に窯を開いたといわれます。 これが、大樋焼のルーツ。 楽焼の窯が、金沢に存在する理由でした。
 加賀文化の情緒を色濃く残す主計町茶屋街。 この近くに大樋美術館はあります。 茶の歴史に触れるなら、一度は訪ね、くだんの飴釉を目にしたいものです。

飴釉輝く大樋焼。
金沢市立中村記念美術館蔵



大樋美術館 TEL.076-221-2397
写真協力 : 金沢市観光課



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