インターネット版 No.60 全3ページ 1 | 2| 3

1・<特集> 20世紀陶芸界の鬼才 加守田章二展
2 ・<特集> やきもの散歩 6 ・・・ 「加守田章二展」と丸の内・八重洲周辺
3 ・PREVIEW ・・・ 「九炉土展」に弾ける個性 今年のテーマは「私の個展」


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20世紀陶芸界 鬼才
加守田章二
 KAMODA SHOJI                

「曲線彫文壺」
高24.5p 1970年
作品写真協力:朝日新聞社(以下同)
戦後日本の陶芸史に、欠くことのできない陶芸家・加守田章二の大規模な回顧展「20世紀陶芸界の鬼才 加守田章二展」が開催中です。170点の出品作を鑑賞しながら、この陶芸家の真髄をたどる絶好の機会です。


「彩陶長方皿」
径80.5×30.5p 1971年
岩手県立美術館蔵

「筒形銀彩陶」 「壺」
高33.6cm 1970年 小川美術館蔵 高43.9cm 1976年 岩手県立美術館蔵


灰釉で地歩を固める

 加守田章二(1933−1983)は、大阪府岸和田市に生まれ、京都市立美術大学に進んで同校教授だった富本憲吉に学びます。 大学を卒業後、茨城県日立市の日立製作所関連の製陶所などに勤務の後、26歳で栃木県・益子に独立しました。
 加守田章二の仕事を語る時、この益子での自立の年(1959年)から、岩手県・遠野に新たにアトリエを作って独創的な作品を発表しはじめる1970年までの間を益子時代、1970年以降を遠野時代として大別されていわれます。
 益子時代の仕事は、独立当初は飴釉、鉄釉、石灰釉、糠白釉などの日用雑器が中心でした。 しかしやがて、古代の須恵器に魅せられ、自然釉の研究を重ねるようになります。 東京での初個展(1965年)でも一連の灰釉作品が発表され、多くのファンを魅了したといわれます。 この個展がひとつのエポック・メイキングとなり、加守田は陶芸家としての地歩を確かなものにしました。
 多くの愛好家たちを夢中にした加守田の灰釉作品の特徴は、なんといってもメリハリの効いた造形と、細部の作りのシャープさ、それに美しい釉薬の自然な雰囲気でしょう。 本展覧会にもこの時代の、多くの代表的な灰釉作品が出品されていますから、じっくりと鑑賞できます。
夭逝の鬼才
 作家としての地位が固るに従い、周囲が騒がしくなってきます。 そこで喧騒を避け、自由な創作活動に専心するため、 岩手県遠野市に新たなアトリエを作ります。 36歳のことでした。
 以降、その工房で作られ、東京で発表される作品群は、遠野時代の作品と呼ばれます。 独創性や完成度はもちろんですが、半年に一度ほどのペースで発表されるそれらの作品は、前回の個展とはまったく異なる作風でした。 次々と創案されるそれら作品は、どれも高い評価を得ます。 この遠野時代の偉大な成果で、一気に日本の陶芸史上に名を残す作家となったのです。
 なかでも特に、驚きと賞賛をもって迎えられた作品群は、1970年発表の「曲線彫文」シリーズでした。 まるで大地から生まれ出たような、そして、土の本源的な力を壺のなかに封じ込めたかのようにも思える、圧倒的なパワーを内蔵した作品です。
 そして49歳の若さで夭逝したこの作家は、現在、20世紀陶芸界の鬼才と呼ばれているのです。 ■
   
「灰釉壺」 「灰釉鉦鉢」
高33.4cm 1964年 径40.0cm 1966年 東京国立近代美術館蔵


        
「彩陶壺」 「彩色壺」
高26.5cm 1971年 敦井美術館蔵 高21.3cm 1982年
          
 

加守田章二
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20世紀陶芸界の鬼才

会期9月10日(土)〜10月23日(日)
会場東京ステーションギャラリー
住所東京都千代田区丸の内1−9−1
TEL 03−3212−2485
 加守田章二の出現と、その仕事は日本の陶芸界において、まさに画期的でした。
 なぜなら、加守田の作品は、立場や見識や好みが異なる多くの人々を、納得させることのできるものだったからです。それまでの日本の陶芸の、概念を変えてしまった、ともいえます。
 今回の大規模な回顧展は、京都を皮切りに、山口、東京(詳細は上記)、次いで岩手(06年6月3日〜7月17日 岩手県立美術館)、岐阜(同7月29日〜10月9日 岐阜県現代陶芸美術館)へと巡回の予定です。
 本展に出品される170点余の、いずれも秀作に触れながら、夭逝の作家・加守田章二の生涯に、改めて思いを馳せてみたいと思います。



1988年に開館した美術館。美術、建築、デザインなどのジャンルの企画展を年、5〜6回開催。

 
                                                                                              

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