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P1の続き・・・・・《京都やきもの散歩---「河井寛次郎記念館」と京焼窯元探訪


五条坂から泉涌寺へ 
 江戸時代から京焼の産地として知られていたのは、清水坂や粟田口など。 ところが時代を経るにしたがって、東山連山に沿うようにして、だんだん南側へと広がっていきました。 五条坂から蛇ケ谷、日吉地区へ、そしてさらに泉涌寺エリアへと、窯場は拡大していきます。
 そこで今度は、五条坂をあとにして、車で東大路通りをそのまま南へと向かいます。 新熊野神社を少し過ぎた辺りで、道は泉涌寺方面へと、ゆるく左へカーブを切ります。 皇室ゆかりの「御寺」としての品格を保つ泉涌寺の周辺は、歴史的には最も新しい京焼の産地といえます。
 まず最初に、このエリアの中心的な施設といわれる「青窯会会館」を訪ねることにしました。
 青窯会というのは、同地区で陶業を営む60軒ほどの窯元が集まって作られた協同組合です。 そのため会館内には、各窯元の製品が展示販売されています。 また、どの窯で、なにが作られているのかを見渡せる点でも、とても便利だと思いました。
 そしてもしここで、気に入った器が見つかったなら、その窯元を紹介してもらって、訪ね歩くのもいいかも知れません。
 会館を出てすぐ右隣が、「俊山窯」の工房になっています。 広く明るい仕事場ですが、どの作業台にもびっしりと道具類や半製品などが置かれていて、活気がありました。 訪ねた時は、ちょうど赤絵を入れる作業の真っ最中でした。 白化粧のうえに、細い筆で迷わず絵を描いていきます。 見ていると息が詰まりますが、気持ちがいいほどの熟達の筆運びに感心しました。
 この窯の作品がほしいと思ったら、「わくわく」を訪ねてみましょう。 ここは俊山窯専門のショップです。 店内には、普段使いによさそうなフリーカップや小鉢類、また、本格的な茶会でも使えそうな抹茶碗まで、ひと通り揃っていて、価格も良心的に感じられました。
 この泉涌寺界隈には、染付磁器専門の窯元や、丁寧な仕事で評価が高い工房など、注目されている小さな窯元がまだまだ多くあります。 時間に余裕をもって、また、ゆっくりと廻りたいと思いました。 (次号へ続く)



■高台寺
京都市東山区高台寺下河原町 526
TEL. 075-561-9966
豊臣秀吉の没後、その菩提を弔うために秀吉夫人の北政所(ねね、出家して高台院湖月尼と号す)が、1606年に開創した寺です。 上の写真は同寺の開山堂と霊屋を結ぶ階段で、龍の背に似ていることから、「臥龍廊」といわれています。

■石塀小路
高台寺道から西へ抜ける小路。 人ふたりがやっとすれ違って歩けるほどの、石畳と木塀の風情たっぷりの小路です。 ここをもう少し進むと、両側の家々の塀が石垣へと変わります。 この辺りは、山村美紗原作のサスペンスドラマのロケ地にもなっていて「アッ! どこかで見覚えある」などと思うかも知れません。

■田ごと(光悦水指弁当)
京都市下京区四条通河原町西入ル御旅町
TEL. 075-221-1811
往来の激しい四条通りに面した小さな入口。 暖簾を潜るとそこには、打水された石畳や庭が設えてあって驚きです。 京料理・田ごとの「光悦水指弁当」は、光悦作の信楽の水指を模したという自慢のお弁当。 素材を活かした風雅な味わいに、大満足でした。

■泉涌寺わくわく
京都市東山区泉涌寺東林町 12
TEL. 075-561-9333
俊山窯の製品や、日展、日本新工芸展などで活躍する当代森俊次氏の作品が展示販売されています。 白化粧を施したうえに、滋味深い色絵が入れられる俊山窯の器には、独特の品格があってなかなか魅力的です。 全国的に熱心なファンが多いというのも頷けます。
 
   



京焼、清水焼……正しいのはどっち?

森俊山先生(京都陶磁器連合会会長)講演会
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このツアーのために、講演して下さった森俊山先生。
 京都の陶業振興のための要職を務め、一方で、伝統工芸士にも認定されている森俊山先生から、興味深い話を伺いました。
 京焼の起源は、室町時代の末期から。 「資産家や寺が窯を築き、お庭焼としての創窯だった」そうです。 そうして「素材も技術も信楽や美濃など、外部に依存しつつスタートした」とか。 ちょっと意外な感じです。 それが現在では、「500人(軒)ほどの窯元や作陶家を擁す大陶産地」に成長したのです。
 ところで、京都のやきものの名称は、清水焼か、それとも京焼かどっちなのでしょうか。 「産業としての陶芸品は、紆余曲折を経て『京焼・清水焼』というのが正しい呼称」だそうです。 機会があれば、ラベルに気をつけて見て下さい。




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