−−茶碗を奥深く鑑賞するために、これまで多くのことを教えていただきました。 ところが、いくら見ていても分からないもののひとつに、茶碗の重さがあります。 やはり、茶碗としての適度な重量というようなものが、あるのでしょうか? 安藤●茶碗の重さとひと口にいっても、土の種類によって重さが異なりますから、当然、茶碗それぞれの重量も違っています。 たとえば、備前と高取の茶碗を較べてどちらが軽いとか、どれが重くて使いにくいか、などをとやかくいうのはまったく意味がありません。 違う土の性質を同じ条件で見て、一元的に較べていうのはおかしいのです。 各々の土には個々の特質があって、そして重さも違うわけですからね。 もし備前の茶碗として重く感じられるのなら、備前としても素地が厚く作られている、ということになるはずです。 −−はい。 それぞれの土によって、また製法によって、それなりの茶碗の重さがあっていいのですね。 これまではやはり、主観だけで軽重を判断しがちでした。 安藤●それから高台脇の削り方などで、それなりの重さに仕上がると思いますよ。 茶碗を手にとって重いと感じる時は、やはり高台脇あたりから少し上が、肉厚になっています。 −−ということは、やはり重量も姿形に影響してくる、ということですね。 とくに、陶芸家らによって作られる昨今の茶碗をご覧になって、どのように思われますか? 安藤●皆さんがどのようにして作っているか、よくは分かりませんが、茶碗を写真で見ているだけで、伝来の茶碗を手にとって見ていないのでは、と思うものがあります。 写真には見込みの深さも写りませんし、厚さや重量感ももちろん分からない。 酒好きはぐい呑などの酒器作りが上手といわれるように、茶を知らない人には、茶碗がうまく作れないはずです。 上辺だけでなく、その心を会得していれば、当然のことながら、茶碗は手にとって茶を飲むものですから、「用の美」の本来の姿が分かると思います。 |
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(構成・編集部) |
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