インターネット版 No.41 全2ページ 1 | 2|

1 ・発見!陶の里のユニーク美術館 ・・・ 市之倉さかづき美術館
2 ・とっておき WALKING POINTS (11) ・・・ 上野(あがの)
・HOTLINE ・・・ 養成塾の応募は今がチャンス
・器で愉しむお茶時間 24 ・・・ コーヒーカップ&ソーサー

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盃に人生を重ねて見る 

 平らで浅い、酒を飲むための器が「盃」(さかづき)です。 この盃、もともと「つき」とは器を表す言葉といい、酒を入れるつきだから、「さかづき」となったのだそうです。
 また、漢字で表記すれば、同じさかづきでも、「盃」「杯」「坏」などいろいろとあります。 各々の素材や形状によって、使い分けられています。
 その盃の名品を生産するようになったのが、美濃・市之倉でした。かつての当地は山間の小さな村で、交通の難所だったとか。 そのために、小さくて運びやすく、しかも匠の技が表現できる盃が、必然的に多く作られるようになりました。

巨匠館では、巨匠作家8人の作品が常設展示。
 とくに、江戸時代末期から明治30年頃にかけてが、製産の最盛期だったといわれています。 もっぱらその頃は、染付磁器を得意としており、磁器産地として知られていた九谷や京都にも決して劣らないくらいの、きわめて高水準の品質を保っていました。 また、当時のそれらの技術は、残念ながら、現代においても復元が不可能なほど高度なものといいます。
 そんな特産の盃の佳き伝統を広く世にアピールし、地域振興を図るために、昨年、さかづき美術館がオープンしました。
 まず1階の展示場では、幕末から昭和にかけての、市之倉の主産品である盃が展示されています。 ほかに、他産地の盃の古今の名品、それに酒にまつわる工芸品なども見ることができます。 2階は巨匠館となっていて、地元が輩出した人間国宝や巨匠作家ばかり、8名の秀作が展示されています。
 ほかに、あらゆるジャンルの新作展・企画展を催すギャラリー「宙」があり、意欲的な作り手らによる作品発表が続けられています。
 もちろん、ミュージアムショップやレストランなども充実しています。とくにショップ内の100余のボックスギャラリーでは、若手陶芸家やクラフトマンなどの様々な作品が展示され、目を奪われます。
 現代の陶芸シーンでも、ぐい呑や盃は、茶碗を小さくしたものと見なされ、価格も茶碗の10分の1の見当です。 作る側も見る側も、高く評価していることがよく分かります。
 結婚式の三々九度で、契りの盃として登場するように、おめでたい席や門出に傾ける盃など、人生の折々で世話になってきた盃・・・・。 市之倉さかづき美術館では、そんな自らの人生を振り返りながら、名工らによって作られた盃を、静かに鑑賞するのも一興でしょう。

様々な盃が並ぶ1階の展示場では、ゆっくりと作品鑑賞できるように設えてあります。

意欲的な作品から、地元の物産まで見られるミュージアムショップ。



手のひらの宇宙
市之倉さかづき美術館
 幕末から明治時代にかけての美濃では、職人達が万国博覧会や内国勧業博覧会などを目指して技を競い合い、五輔、五平、四郎兵衛、重助、幸兵衛、才平ら多くの名工が輩出し、世界的にも高い評価を得ました。
 また昭和初期からは、桃山陶ブームがわき起こり、近代作家としての陶芸家が誕生しました。 加藤土師萌、荒川豊蔵、5代加藤幸兵衛らです。 また現在でも、人間国宝の加藤卓男氏、鈴木藏氏らを筆頭に、安藤日出武、玉置保夫、7代加藤幸兵衛各氏らが活躍しています。
 同美術館で、これらの名工の残した盃や、現代作家の作品を鑑賞すれば、きっと小さな盃のなかに広がる大きな宇宙を感じることができるでしょう。

住所=岐阜県多治見市市之倉 6-30-1
電話=0572-24-5911
開館時間=10:00〜17:00
休館日=火曜日
URL=http://www.sakazuki.or.jp



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