インターネット版 No.37 全2ページ 1 | 2|

1 ・現代陶芸の旗手達 (7)
2 ・リラックス・セラミックス ・・・ 茶香炉
・使ってみたい!!釉薬 37 ・・・ 燻し金彩釉+チタンマット釉+透明釉

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 「現代陶芸の旗手達」において紹介する作家は、制作の本拠・所属団体・作風など異なるものであるが、現代日本の陶芸界において第一線で活躍し、少しも停滞することなく新たな創造を目指し鎬を削っているものたちである。勿論この他に陶芸界の長老とみなされている傑出した作家も幾人かはいるが、ここでは大家は除き、今最も脂ののりきった充実した活動の時期にあり、今後の陶芸界の担い手となるべき新鋭・中堅陶工たちに限定する。
 収録内容は、近作を中心とした代表作品・プロフィール・取り扱いギャラリーなどで、解説は作家の人と作品を論じたものとした。
 また、紹介作家は、現代日本の陶芸界を代表するもので、陶芸家のステータスシンボライズエンサイクロペディア「現代陶人名鑑」に収録保存し、陶芸ユーザーのニーズに応えるものとする。



北陸
・焼締
今 千春 Chiharu Kon
1951年月3生まれ
〒940-2042 新潟県長岡市宮本3
TEL 0258-46-6838
E-mail regina1220@nyc.odn.ne.jp

「信楽窯変花入」 200,000円

「信楽組茶碗−日・月−」
250,000円
「信楽自然釉徳利」 30,000円
「刷毛目片口」 25,000円

Profile
1951年 新潟県長岡市に生まれる
武蔵野美術大学卒業
76年 陶芸家を志して修行をはじめる
81年 辻清明に師事する
91年 焼き締め陶公募展に入選
92年 淡交ビエンナーレ茶道美術公募展にて家元賞(奨励賞)を受賞
新潟光風会奨励賞受賞
●主な作品のテーマ
穴窯焼成による火色、窯変、自然釉と信楽土との調和
●主な制作技法
ロクロ、叩きなどにて成形
●胎土の種類
信楽原土
●主に使用する窯の種類
穴窯
●師
辻清明
●工房見学
可(JR信越本線長岡駅下車)
Message
体力、気力、知力の続く限りいつまでも。
異郷の地で焼かれた伝統的な信楽焼の典型
 陶産地とは、それぞれ固有の素材と作品の形態、また生産組織の構造や、独自の教育形態を有する共同体をいいますが、いつしか飛躍的に交通・物流網が発達し、また情報の交換などが進むにつれ、やがて産地はこれらの要素のうちのいくつかを失いました。 と同時に、「○○焼」という呼称も意味をなくしたといわれています。 それにかわって全国各地では、純粋に個人的な自己表現としてのやきもの作りを行う人々の活動が、多く見られるようになりました。 近代意識を持った個人作家の台頭です。
 今千春氏は、陶産地としてなんの歴史もない新潟県長岡市で信楽産の原土を焼いて、茶陶などの器を作っています。 「信楽(滋賀県甲賀郡)でなければ信楽の土は焼けない」、あるいは「信楽でなければ信楽焼はできない」という偏見は、もはや時代錯誤でしかなく、先に述べた理由によって、条件さえ整えばどこででも信楽焼の焼成が可能です。
 今氏の作る作品の特徴は、信楽土を穴窯焼成することによって生まれる装飾にあります。 自然釉の滴るような流れ、窯変の焦げと深遠な色々、それに明るい火色の妙などが重層的に合わさって、いずれも信楽土ならではの豊かな表情を現します。
 異郷の地で焼かれた伝統的な、本格派の信楽焼の一典型といえるのが、今千春氏の仕事です。
■作品扱いギャラリー
◎渋谷・黒田陶苑/TEL.03-3499-3225
東京都渋谷区渋谷1-16-14
◎陶 美土里/TEL.03-5486-3152
東京都目黒区東が丘2-11-12
◎染悟空/TEL.0492-48-7822
川越市新宿572-15
◎ギャラリー紺/TEL.0258-36-8182
長岡市大手通り2-4-9
◎斗々庵ギャラリー/TEL.0766-55-0365
富山県射水郡小杉町三ケ3347-2
の目
信楽焼を超える強い焼締が作者の身上と受け取れ、見事である。 この焼成技術を活かした火色を主とする作品も見てみたい思いがする。




中国
・備前焼
星 正幸 Masayuki Hoshi
1949年7月生まれ
〒701-4273 岡山県邑久郡長船町磯上油杉3066
TEL 0869-26-3764
E-mail p-hoshi@mx32.tiki.ne.jp

「プレート」高3.0 径26.0×26.0p 1998年
(備前焼ギャラリーこう 個展DMより)


「鉢」
高9.8 径20.5p 2002年
(瑞玉ギャラリー 個展DMより)
「合子」 
高11.5 径17.0p 2001年
(工芸ギャラリー手児奈 個展DMより)


「ひとり茶碗」
高11.0 径15.0p 2001年
(ギャラリーせい 個展DMより)
「手鉢」
高15.0 径26.0×18.0p

Profile
1949年 東京に生まれる
73年 上智大学文学部卒業
75年 備前焼窯元にて修行
79年 森陶岳の「相生大窯」に参加
87年 田部美術館大賞茶の湯の造形展入選
一水会陶芸展にて硲奨励賞を受賞
88年 一水会陶芸展にて佳作賞受賞
91年 焼き締め陶陶芸展にて記念賞受賞
92年 「めん鉢大賞」展入選
93年 朝日現代クラフト展招待出品
●主な作品のテーマ
自らのために創っています
●主な制作技法
紐作り、削り仕上げ
●胎土の種類
主に伊部(備前)下松の陶土を用い、水簸はせず、単味(混合しない)で使用
●主に使用する窯の種類
穴窯
●所属団体
岡山県備前焼陶友会
●工房見学
可(JR赤穂線長船駅下車)
Message
自身の心が動かされるものを、じっくりと見つけ出して下さい。
味≠ゥら解放されたシンプルでライトな本格備前
 およそ焼締め陶を主題とする陶芸家にとって、とくに土は作品の根幹にかかわる重要な素材です。 もちろん陶産地・備前においても、その状況に変わりはありません。
 現在、主に備前の土を用いて焼締めを焼く作者の多くは、現代の備前様式に則った形の器を焼いています。 ところがそんななかにあって、同じ備前産の土を使いながら、表面的には、星正幸氏の作る器ほど、爽やかな印象に焼き上がった、またモダンな形の器を知りません。 そしてまさにその点こそが、星氏の作る備前土による焼締め陶の格段の特徴であり、また最大の魅力となっています。
 備前焼の本質を意識しながら、一方で、安易な備前様式に属さないオリジナルな質感や器形を探そうとし、星氏はこれまでの備前焼に見られなかった作品を多く作ってきました。 また、土を固く焼締めるノルマを自身に課しながら、しかし、焼成によって得られる装飾はほどよく抑えられていて、実に、ライトでシンプルな焼締めへと至っています。 当然ながらこれらの器には、古さが微塵も感じられなくて、そして、清潔感にあふれていて秀逸です。
 なにより星正幸氏の焼く作品は、焼締め陶にありがちな曖昧模糊とした味≠ゥら解放されていて、自由で、清々しさが感じられ、素直に好感が持てます。 自らの作を備前焼と名乗らない、誇り高き「備前」です。
■作品扱いギャラリー
◎ギャラリーせい/TEL.03-5766-1799
東京都港区南青山6-14-3
◎瑞玉ギャラリー/TEL.03-3961-8984
東京都板橋区板橋2-45-11
◎工芸ギャラリー手児奈/TEL.052-332-0393
名古屋市中区千代田3-14-22
◎コーヒーハウス 音工房/TEL.0724-76-5505
阪南市南中山472-2
◎ギャラリー恵/TEL.093-522-5730
北九州市小倉北区京町1-2-8
の目
こだわりのない素直な造形と備前土の質感を活かした浅めの焼成は、多くの備前焼作家の中でも一際印象付ける個性となっている。




近畿
・万古焼
冬柴 文廣 Fumihiro Fuyushiba
1950年4月生まれ
〒519-0913 三重県四日市市西坂部町2847
TEL 0593-32-8222
E-mail ffuyushiba@hotmail.com



「釉描彩窓抜泰山木図飾壺」
150,000円
高35.0 径22.0p
「赤絵安南紋茶碗」
150,000円
高35.0 径22.0p


「釉描彩絵変り湯呑揃」 20,000円
高8.8 径5.8p

「赤絵唐草紋汲出碗皿揃」 20,000円
高7.0 径7.8p

Profile
1948年 長崎県長崎市に生まれる
70年 金沢市創作工芸展受賞
石川産業工芸展金沢市長賞受賞
輸出陶磁器デザインコンクール受賞
71年 金沢美術工芸大学卒業
79年 日本現代工芸美術展
中日国際陶芸展
朝日陶芸展などの公募展に入選
その後も出品入選を重ねる
89年 万古焼総合コンペティション最高賞受賞
同年、日本現代工芸美術家協会退会
2001年 イギリスにて作陶、ペンリスにて開催されたジャパン・フェアに出品
●主な作品のテーマ
釉彩と上絵彩色による自然植物の表現
●主な制作技法
釉薬にて墨絵表現、焼締め後、上絵着色し植物画の深みを出す
また、伝統文様との融合表現、染付、燻(いぶし)焼、赤絵
●胎土の種類
瀬戸鉄粉黄土
●主に使用する窯の種類
電気窯・ガス窯
●師
大樋長左衛門
●所属団体
萬古陶芸協会 副会長
●工房見学
可(近鉄名古屋線四日市駅下車)
Message
「豊かな精神生活のための作陶活動」が、私の大学卒業作品のテーマでした。 今まさに実践しています。 これからも夢のある作品創りに邁進するつもりです。
装飾的な陶芸の到達点としての一表現
 まだ金沢美工大に在学中の青年時代から、冬柴文廣氏は地元・石川県で開催された工芸展やコンペに入選・受賞歴を重ねていて、作家としての早熟ぶりがうかがえます。 長崎に生まれ、金沢に学び、やがて陶芸家としての独立・成長の地は、三重県四日市市を選びました。
 四日市といえば、江戸時代に開窯した萬古焼の故郷として知られ、昨今では、朱泥の急須ばかりがなにかと目立ちますが、萬古のやきものの伝統のひとつに赤絵があります。
 皿や壺など、赤絵を窓枠のように配してぐるりと囲んで構図を決めて、中央には素地土の素材感そのままを巧みに見せながら、釉描彩という技法で立体的に植物の姿を映した作品が、冬柴氏の代表作です。 アトリエの近くや、鈴鹿山脈に自生する野の花々がモチーフに選ばれ、リアルな自然が、生き生きと陶のうえに再現されています。
 萬古焼の伝統技術や文様、野の花の感動的な美しさ、さらに自らの創意が加わり一体となって結実したのが、冬柴陶芸の成果です。 そこには、技術的巧者としての創造性が遺憾なく発揮され、装飾的な陶芸のひとつの到達点として表現されています。
■作品扱いギャラリー
◎伊勢福くつろぎ屋/TEL.0596-23-8823
伊勢市宇治中之切町52
◎つろぎ/TEL.0724-51-3733
大阪府泉南郡熊取町大久保南4-1351
◎器る・くーる/TEL.03-3464-4028
東京都渋谷区恵比寿西2-11-9
◎クラフト遊/TEL.058-266-1052
岐阜市八幡町9-3
◎壺中庵/TEL.0566-92-0100
安城市高棚町井池183
の目
釉薬によって描かれた文様、そして伝統的な赤絵、異なる手法であるが、モチーフとしている植物の可憐さと大胆な筆使いが氏の個性となっている。



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