インターネット版 No.34  全2ページ 1 | 2|

1 ・とっておき WALKING POINTS (9) ・・・ 備前(びぜん)
・器で愉しむお茶時間 23 ・・・ コーヒーカップ&小皿
・使ってみたい!!釉薬 36 ・・・ 黒マット釉+青銅釉
・ZOOM--UP (8) ・・・ 越前焼
2 ・BOOK ・・・ 「唐九郎のやきもの教室」
・茶とやきもの 33 ・・・ 遠州流・安藤宗良先生にインタヴュー「はじめに茶碗全体の姿を見る」
・目にも旨い!男の簡単Cooking (31) ・・・ 小松菜のゴマ和え

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  とっておき
★ WALKING POINTS ★   <9> 

備前 (びぜん)
(岡山県備前市)

一歩入って民の道を歩くと、こんな窯垣も見つかります。
名もなき道に発見する
陶郷・備前

 1000年の伝統を誇る焼締め陶・備前焼は、窯煙が絶えることなく現代まで営々と焼き継がれてきました・・・・。
 そんな思いと歴史を胸に抱きながら、備前焼の根拠地といえる赤穂線の伊部駅前に降り立つと、その呆気ない雰囲気に正直いって少し戸惑ってしまいます。
 駅前には大型トラックなどの往来が激しい国道二号線が、ただ走るばかり・・・・。 それでも、今電車を降りてきたばかりの駅舎を振り返って見れば、登窯をモチーフにした設計だとわかりますし、右手には「岡山県備前陶芸美術館」や窯元の煙突らしきものもチラホラ眺められます。 ああ、陶郷にやって来たんだなぁ、という気持ちが、じんわりと広がってくる瞬間です。
 国道二号線の信号を渡って、まっすぐ進んでみましょう。 いくつかの陶商(備前では、備前焼の卸店や小売店をこういいます)


焼締め陶の王・備前焼の魅力は奥の深さ。
写真協力:岡山県東京事務所
や、窯元の専売店があって嬉しくなってきました。 やがてその道は、旧山陽道に突き当たります。 とはいっても、車一台がやっと通れるほどのアスファルト道路で、散策しながら歩くには打ってつけ。左右どちらに歩いても、窯元が軒を連ねていて退屈しません。左側へ進むと、途中には喫茶店もあり、一服できますからお勧めです。
 でも、伊部散策の醍醐味は、この旧山陽道から一歩入った名もない民の道に発見できます。 たとえば、ビシッと焼き締められた窯変花入が、出窓にさり気なく飾ってあったり。 ひょっとしたら、陶芸家のお宅かも知れません。 また庭を囲う壁が窯垣になっていて、古い窯道具や陶片が埋め込まれる家々も散在しています。
 ガイドブックに載っていない、そんな飛びきりの風景を偶然発見した時、窯場を巡って歩く楽しさがきっと満喫できます。






 (23) コーヒーカップ&小皿
白い器のコーヒーとチョコレートは、いかにも美味しそうな組み合わせ。それにつられて今号も、ひき続きコーヒーの話題です。お互いを引き立てるコーヒーとお菓子の相性を考えます。 

 やわらかなクリーム色に、わずかにさした織部釉のアクセントが上品です。 写真のカップは、半磁器土に透明釉を掛けたもの。 そして、お菓子の小皿は赤土に唐津釉を掛けた作品です。 同じ白い器でも、磁器の作る空間とは、また違った趣きですね。
 ところで、コーヒーとお菓子にも相性があるのをご存じですか? たとえば今回は、ベルギー産のチョコレートに合わせて深煎りコーヒーをいれました。 つまり、甘味の強いお菓子には苦味の効いた濃いコーヒーを、というわけです。
 そこで、組み合わせの基本です。 生クリームなどを使った濃厚ケーキには、イタリアンローストやフレンチローストの深煎りコーヒーがピッタリ。

作 品 : 赤尾衣代  コーヒーカップ 高5.0 径8.5cm
     岩崎弘子  小皿 径13.0cm

お菓子:チョコレート (GODIVA)
一方、果実パイやクッキーなどのあっさり系デザートなら、一般的なブレンドやアメリカンなど中煎り〜浅煎りコーヒーがいっそう味を引き立てます。
 豆や粉を数種類常備するなんて、ちょっぴり贅沢かもしれません・・・・。 でも、コーヒータイムの至福は、きっと保証します。






酒注ぎといっても、どこか都会的な感じのするこの作品。その印象は釉薬に負うところが大きいようです。さて、その釉使いとは? 
36 黒マット釉 + 青銅釉

 この作品の持つ都会的な雰囲気は、単に無機質な色や形のせいではなさそうです。 青みがかった黒の微妙な色合いや、キラキラと金属光を放つマットな質感・・・・。 これらが合わさって、モダンで独特な印象を醸しています。 その立役者が、今回ご紹介する黒マット釉と青銅釉です。
 釉掛けは、まず黒マット釉を浸し掛けにし、さらに青銅釉を全体に吹き掛けます。 青銅釉の量は、青っぽく変化の大きいカ所で3度ほど重ね掛けした程度。 もう少し濃く吹いて色の変化を楽しむのもいいでしょう。
 黒マット釉はひたすら真っ黒な、いわば没個性な釉薬です。 ところが下地と考えれば、それ自体が変化に乏しい分、上に掛ける釉の効果が予測しやすいといえます。 ここでは黒を押さえ込むほど個性の強い青銅釉を合わせ、しかも控えめに吹いた事が、作品のユニークさを生みました。
 まさに、釉の世界は無限大! 知るほどに、驚きも待ってます。

作品:大木茂子 高9.2 径15.0×8.0cm





ZOOM--UP <8>
越前焼 (えちぜんやき) 
 越前焼といえば日本六古窯のひとつで、中世から続く北陸最大の産地です。 といっても六古窯に加わったのは、昭和になってから。 それまでは「越前焼」の名もなかったそうで、ちょっと意外です。 そういえば越前焼の本拠地は福井県丹生郡越前町かと先走り、その実、宮崎村や織田町だったのでとまどったことがありました。 中心施設「越前陶芸村」も宮崎村にあります。 そこで、今回は、越前焼の名前のルーツにズーム・アップ!
 それは昭和23年のこと、「国立博物館ニュース」にある論文が発表されました。 古陶磁研究家の小山冨士夫が、それまで謎に包まれていた古越前の重要性を説いたのです。 これがきっかけとなって、越前のやきものは六古窯に加わることになりました。 また当時、散在する窯の地名から平等焼、織田焼、熊谷焼などと呼ばれていましたが、小山はこれらを総称して「越前」としました。 これが、越前焼の名前のルーツ、以来、衆目を集めるようになったのです。
 さて、そんな越前を訪ねるなら5月がおススメ。 越前陶器まつりが開かれます。 寒風吹きすさぶ冬もいいですよ。 なぜって越前ガニに甘エビの美味な季節、海岸線には可憐な水仙も咲き乱れます。 どうです。 旅の支度、さっそくはじめませんか!

6日間も焚く穴窯。越前では多く見かけます。

写真協力:福井県ビジネス支援センター


陶芸まつりでは市価の2〜3割はおトク!




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