インターネット版 No.30  全3ページ 1 | 2| 3

1 ・特集 基本が自然に、しっかりと身につく!・・・ 「九炉土流指導法」で、初心者も失敗知らず(1)
2 ・特集 基本が自然に、しっかりと身につく!・・・ 「九炉土流指導法」で、初心者も失敗知らず(2)
3 ・とっておき WANLKING POINTS (7) ・・・ 壺屋(つぼや)
・目にも旨い!男の簡単Cooking (29) ・・・ 手羽先の黒胡椒スパイシー揚げ

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●要点を外さない指導
 その日、九炉土千駄ヶ谷校の第一教室では、「初心者コース」の第2回目の授業が行われました。 いずれも、本格的に陶芸をするのははじめてという、20数名の方がすでに集まっていました。
 さて、講師の先生が姿を現して準備を整えだし、やがていよいよ始業の時間となりました。 すると教室内は心地よい緊張感のなかにも、楽しさと期待の入り交じった雰囲気に、自然に変わっていくから不思議です。
 最初に先生から、今日の授業で作る「湯呑み」の作り方についての、概要を押さえたレクチャーがありました。 どのような手順で作るか、あるいは注意点はなにかなど、理解しやすく具体的に解説されます。
 たとえば、湯呑みの底になる部分を最初に作りますが、その際の土の量は、「ゴルフボールくらい」という的確なアドバイスが出ました。 もちろん、人によってゴルフボールの印象は微妙に違いますが、そこには頓着しません。 とにかく、野球のボールでもなければピンボールの玉でもないというサイズの指示が絶妙で、教室全体にパッと伝わっていくのが分かりました。
 恐らく「○○グラムの土を手にとって」というと、土に慣れない初心者は、きっと戸惑うでしょう。 その後の制作の様子を見ていると、かなり大きめなゴルフボールから、やや小さめなゴルフボールまで色々ですが、講師の先生はなにもいいません。 つまり、サイズの大小は個性や好みと見なして尊重するのです。 湯呑みをきっちり作ることとは、ほとんど関係がないのでしょう。
 そうして湯呑みの底が決まったら、次はいよいよ紐土を積んでいきます。 ここで再び講師の先生から、土の積み方についてのポイント指導




がありました。 積んだ土は「外側は下から上へ、内側は上から下へ」と土を寄せて、しっかりと密着させるのだそうです。 そしてこの技術こそが、陶芸をやるかぎり必要となる、もっともベーシックで重要な必須技術だといいます。 講師の先生方はそれを充分に承知していて、ポイントを決して外さない見事な授業でした。


        
いずれも、初心者コースでの授業風景。 制作に入る前に、各プロセスの要点を押さえたアドバイスがあります。 多少サイズが大きくても小さくても、形が細くても太くても大丈夫。 安心して、間違いなく湯呑みが作れることを主眼に、生徒の皆さんは導かれていきます。



●自然に身についた基礎技術
 初心者コースの湯呑み作りを見ていて思ったのは、初心者の多くが陥りやすいつまずきや、あるいは、なるたけ早い段階で身につける必要のある陶芸の必須技術を、講師の先生方が熟知していて、それを先回りしながら授業をしている、ということでした。 また、たったひとつの湯呑みを作りながらも、確実に、的確にポイントとなる技術を伝えようとする姿勢が、強く窺えたのです。
 つまり、九炉土陶芸教室には、趣味で陶芸を楽しもうとする方々の気持ちや、技術に関する豊富なデータが蓄積されています。 それらを根拠にして、「どうすれば失敗なく作れるか?」を考えて、結論を導き、そうしてからやっと、私たちに方法や技術を、分かりやすく伝えてくれる場なのです。 そしてそれらの総体を、「九炉土流指導法」というのだと思いました。
 現在は、上級クラスで作陶三昧ですが、初級コースでは基本技法を納得できるまで、特にキッチリと教わったという遠藤真理さんに、お話を聞きました。
「私の場合、初級では基本技術を何度も反復して繰り返し、丁寧に教えていただきました。 でもそのお陰で、上級に進んでからも失敗しらずで、とても楽しい作陶が続けられていますよ」
 当然、技術的な詳細は分かりませんが、しかし、九炉土で教わる技術には、全部それなりの理由があるはずだと、遠藤さんは気がついています。
「初級で教わったことは、なにも知らない状態ですから、不純なものが入らずに、そのまま身についていると思います。 だから教わった基本以外に知らないし、やらないわけですから、したがって、間違いも起きていないんですよネ(笑)」
 これまでに焼成後、作品に亀裂などが入ってどうにもならないようなことは一度もなく、失敗はないといい切ります。
 また、陶芸をはじめて1年ほどという武田宏枝さんも、初級コースを経て、現在は中級コースに進んでいます。
「手捻りは単純な作業ですが、難しい・・・。 でも、今のところ、技術的にストレスを感じながら作ることは、全然ありませんよぉ。 失敗もありません」
 武田さんのお話からは、とても伸び伸びと、作りたいものを自由に作って楽しむ様子が、手に取るように伝わってきました。
「少しずつ、自分を表現しながら作ることもできるようになりましたよ。 それでも、技術的な破綻はありませんからねぇ」
 基本技術がしっかりと、自然に身についているからこそのエピソードに聞こえました。
 そうして出来上がった作品は、どのクラスでも画一的でなく、むしろ個性や好みを色濃く反映した楽しげな作品ばかりです。
 こうして陶芸にチャレンジする皆さんを応援し、失敗なく、つまり楽しく作れるように「教える」ことを、ずっと考え続けてきたのは、「九炉土流」を提唱する岡本立世総長なのです。
初級コースで基礎を丁寧に教わったお陰で、今が自由に楽しめると遠藤真理さん(上級コース)はいいます。 「作品は母が喜んで使ってくれて、励みになるし作り甲斐もあります。 陶芸は奥が深く、他人とは較べられるものでなくて、最高の趣味だと思います」
 
「最初に作った湯呑みは、ぐい呑っぽい湯呑みでした(笑)」という武田宏枝さん(中級コース)。 「友だちにあげたけど、そういえばその後、評判を聞きません・・・。 どう思ってるのかなぁ」。 陶芸を存分に楽しんでいるのが、はっきり伝わってきました。
基本が自然に、しっかりと身につく!

《特集 基本が自然に、しっかり身につく! P2へ 続きます》 



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