インターネット版 No.28  全2ページ 1 | 2

1 ・現代陶芸の旗手達 (6)
2 ・HOTLINE ・・・ 電動ロクロの修得はセットメニューがお得!!
・使ってみたい!!釉薬 34 ・・・ 緋襷釉+黒マット釉+2号青銅釉+黄伊羅保釉+4号トルコ青釉

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 「現代陶芸の旗手達」において紹介する作家は、制作の本拠・所属団体・作風など異なるものであるが、現代日本の陶芸界において第一線で活躍し、少しも停滞することなく新たな創造を目指し鎬を削っているものたちである。勿論この他に陶芸界の長老とみなされている傑出した作家も幾人かはいるが、ここでは大家は除き、今最も脂ののりきった充実した活動の時期にあり、今後の陶芸界の担い手となるべき新鋭・中堅陶工たちに限定する。
 収録内容は、近作を中心とした代表作品・プロフィール・取り扱いギャラリーなどで、解説は作家の人と作品を論じたものとした。
 また、紹介作家は、現代日本の陶芸界を代表するもので、陶芸家のステータスシンボライズエンサイクロペディア「現代陶人名鑑」に収録保存し、陶芸ユーザーのニーズに応えるものとする。



北陸
・越前焼
熊野 九郎右ヱ門 Kurouemon Kumano
1955年6月生まれ
〒916-0024 福井県鯖江市長泉寺町1-2-25
TEL 0778-51-9096



「熊志乃茶碗」400,000円
「熊志乃旅枕」800,000円
(渋谷・黒田陶苑 個展DMより)



「熊志乃尺二皿」100,000円

Profile
1955年 福井県に生まれる
名古屋造形芸術短大で日本画を学び、卒業
76年 越前の窯元にて修行
82年 戸田宗四郎に師事
85年 旧ソ連、サハリンへ招待される
87年 「陶房・旅枕碗寮」を築き、以降、全国各地での個展活動をはじめる
2000年 ドイツ外務省より招待を受けドイツに渡る
●主な作品のテーマ
溶破寸前の「ドロドロ」とした美
●主な制作技法
ロクロ
●胎土の種類
福井県・越前産(珪石粘土、珪酸アルミニウム白粘土)
●主に使用する窯の種類
穴窯
●師
戸田宗四郎
●工房見学
可(JR北陸本線鯖江駅下車)
Message
私は一貫して想っています。何がやきものなのか? 何が化けものなのか? そして、声はどこから聞こえるのか…。1520度の窯の中から生まれる極限のやきものに、人生を写してほしい。泣く心を持ってほしい。そして生まれ変わってほしい。
極限状態の土に探る、やきものの普遍的な美しさ
 おそらく「美」や「生」の核心は、極まったなかに、ほんのわずかに幻影のように見え隠れするものに違いない、と熊野九郎右ヱ門氏は考えています。 それらを踏まえて、陶芸家として自身に投げかけている大命題のひとつに、『やきものと、化け物の境は、どこにあるのか?』があります。
 残念ながらこれには唯一無二の解答がなく、豊富な経験と知識、鋭い感性などをもった個々の人間が、鑑賞家としてのそれぞれの立場で判断を下すものでしかありません。 しかし、作家・熊野氏が目指すものは、あくまでも「美」の普遍性です。
 そういった疑問と思索をベースにして作られる一連の作品群は、「旅枕」や「地蔵」などと呼ばれる「花入」、または「壺」「茶碗」らの意識的な力強い造形と、越前産の土が崩れるばかりに焼き切った末に得られる自然な形態が相まみえて、他を圧倒した特異な特徴を現します。 野趣のある、とか、ダイナミックななどという形容が虚しいほどの作域ですが、しかし、きっちりと食の器や道具としての用途も考慮して作られていて、どれもが生命感あふれた作品ばかりです。
 焼成というプロセスそのものを探索しながら、不断に美を求める熊野九郎右ヱ門氏を見ていて、これこそが、知らずうちに忘れかけてしまっている「原初の陶芸家」のあり様だったはずだと、思わされることしきりです。
■作品扱いギャラリー
◎侘助/TEL.054-641-0609
藤枝市青木1-8-29
◎渋谷・黒田陶苑/TEL.03-3499-3225
東京都渋谷区渋谷1-16-14
の目
何万人もの人と作品を見つめ指導を行う中で、一握りの土が姿を現した時、常々この人にしてこの形ありと思うものであるが、これほどまでに作品イメージと人物像が一致するのは極限に迫る故であろうか。




近畿
・焼締
・釉焼
・彩色
山田 晶 Akira Yamada
1959年3月生まれ
〒520-0246 滋賀県大津市仰木の里1-11-1
TEL 077-571-2321
E-mail aki-hiro@mx.biwa.ne.jp

「方ノ台器」200,000円
高50.0 径35.0p 2001年

「銀彩丸皿」25,000円
高3.5 径30.0p 2001年

「銀彩角皿」7,000円
高2.7 径17.5p 2001年
「ペルシャ手角皿」6,000円
高5.0 径15.0p 2002年

Profile
1959年 京都に生まれる
京都産業大学を卒業後、京都市工業試験場、京都府立陶工職業訓練校などで学ぶ
86年 朝日陶芸展に出品
89年 「セラミック アネックス シガラキ '89」(滋賀県立近代美術館、信楽伝統産業会館)に出品
91年 独立・築窯。同年、「錫・皮・陶 三人展」(伊丹市立工芸センター)
92年 「The Wall」展(三越・京都祇園ギャラリー、淡路町画廊・益子陶芸村)に出品
94年 「ビヨント・ベセル 器の概念を越えて」(ニュージーランド マクドガル・ミュージアム)に出品
96年 土の周辺展」(フランス ヴァンドーム)などに出品
2000年 「国際陶芸交流展」(中国 中国美術館)、「光の茶会」(京都 京都芸術センター)出品
●主な作品のテーマ
日本的なものそのものより、その向こう側にあるもの。おそらく世界各地にそのルーツがあると思われる、それを探すことです。
●主な制作技法
手捻り、ロクロ、銀彩、ガラス粉を入れた釉など
●胎土の種類
自宅(大津市)で採れた土をベースに、信楽土をミックス
●主に使用する窯の種類
電気窯、ガス窯
●師
父・山田 光
Message
器と立体の境界にあるものを求めていきたいと思っています。また、陶器に限らず、いろいろなものと対話をしながら、やがて作品に反映できればと考えています。
「器のような造形」、あるいは「造形的な器」に見る器の将来
 生活様式の変化、多様化する食文化などが背景にあって、とくに陶芸界やその周縁では、「新しい器の形」がいわれて久しいのですが、実際にはこれまで、なかなか次のコンテキストを示すことができないままでした。 しかしここのところ、京都を中心とした関西在住の若手陶芸家らの間で、「気持ちのよい器」やら「カッコいい器」、あるいは「自分自身の生活にあった器」などが次々と具体的に提案され、器の周囲に新鮮な動きがうかがえるようになりました。
 そういう昨今の動きに同調するというわけではまったくなく、とりわけ以前から山田氏は、これまでの器の形に疑問を持ち、既存の範囲をなんとか超えたいと意識し、いわば「造形的な器」、または「器のような造形」作品を発表していて定評があります。
 陶のみならず、いろいろな素材を用いて作られてきた「器」は、歴史的にみれば、途方もない数と種類、形や装飾がこれまでにあったはずですが、同時に使い勝手や合理性ばかりを求めたために、類型的なものが多くなりました。 では祭器のように、日常を離れさえすれば、独創的な器の概念が見つかるかといえば、そうでもないように思えます。
 銀彩を施した陶のマチエールが印象に深く残るプレート、まるで中東諸国に見られるレンガを積み重ねたような塊状の器など、山田晶氏の作る「器のような造形」、あるいは「造形的な器」を見ていると、ほどよい加減の存在感や確かな新しさがあって、今を生きる私たちに共通する心地よさが感じられて仕方ありません。
■作品扱いギャラリー
◎土の花/TEL.03-3400-1013
東京都港区南青山5-11-22
◎にん/TEL.03-3400-1357
東京都渋谷区渋谷2-8-4
◎器館/TEL.075-493-4521
京都市北区紫野東野町20-17
◎SAIJOショップ/TEL.078-332-1100
神戸市中央区三宮町2-8-7
◎かざぐるま/TEL.0849-31-5365
福山市住吉町1-40 住吉スクエア
の目
氏がテーマとしているもの、目標としているものが見え隠れするような作品を見つめていると伝統や歴史を超えることの難しさがひしひしと伝わる思いがする。しかしいつかそれが何かが見えた時またその作品と出会えることを楽しみと待ちたい。




九州
・有田焼
井上 康徳 Yasunori Inoue
1958年6月生まれ
〒844-0028 佐賀県西松浦郡有田町西部307
TEL 0955-42-4438
E-mail yasarita@po.saganet.ne.jp

「白磁緑釉刻文花器」
高25.0 径35.0p

「彩釉彫文皿」(5客) 40,000円
径18.0p

「白磁波文皿」(5客) 35,000円
径17.0p

「彩釉彫文徳利」20,000円 「青白磁線ぐい呑」12,000円

Profile
1958年 佐賀県有田町に生まれる
81年 成蹊大学工学部卒業。同年より父・井上萬二に師事し、陶芸の道に入る
82年 西部工芸展出品
83年 日本伝統工芸展に初入選。以降、これまで12回の入選を重ねる
85年 この年より現在まで、九州山口陶磁展入選・入賞、佐賀県美術展入選・入賞、西日本陶芸展入選・入賞、一水会陶芸部展入選・入賞
90年 日本工芸会正会員となる
98年 国際交流基金作品買い上げ
2000年 西部工芸展正会員賞受賞
01年 一水会会員優賞を受ける
02年 西日本陶芸展にて優秀賞(文部科学大臣奨励賞)受賞
●主な作品のテーマ
伝統技法を用いて、現代的な作品を作ること。彫りや釉に変化を持たせ、白磁による表現の幅を広げること
●主な制作技法
ロクロ成形、素焼前に彫りを入れる。また、施釉時に釉薬の掛分などを行う
●胎土の種類
天草陶石、白磁の特上石
●主に使用する窯の種類
ガス窯
●師
父・井上萬二
●所属団体
日本工芸会、一水会、佐賀陶芸協会、有田陶芸協会
Message
見て使って、楽しんでもらえる作品作り、「生活のなかにとけ込んでいける」作品作りを心がけています。
白磁の領域拡大を進める詩的な作業
 かつて、色絵磁器の人間国宝だった13代今泉今右衛門氏(1926−2001)が、「私の家では、みそ汁までも磁器の器を使って食べていて、子供の頃は、それが日本中どこででも当たり前のことだと思っていました(笑)」と、いっていたのを思い出します。
 やはり同じ佐賀県・有田町出身で、白磁の技術で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されている井上萬二氏(1929−)を父に持つ康徳氏は、幼少の頃、一体、どんな器を使って毎日の食事をしていたのでしょうか?
 それはともかく、井上康徳氏の作る白磁の器は、昨今の多様化した日本の食文化を機敏に反映し、バリエーションに富んだ豊かな器形が特徴です。 しかも、それらの器に施された彫りや彩釉などの文様は、けっして白磁のフォルムそのものの美しさを損なわないように控えめで、むしろその造形性を強調するかのように、周到に計画され施されています。 白磁の領域を固定せず、徐々に拡大化しながら進められている仕事ともいえましょう。
 輪花、角、楕円、波に円…、それら井上氏の作る繊細で詩的ですらある白磁の器たちが食卓に上ったら、それだけでさぞや楽しい晩餐になることでしょう。
■作品扱いギャラリー
◎井上萬二窯内展示室/TEL.0955-42-4438
佐賀県西松浦郡有田町西部307
の目
伝統工芸とはこういうものである!ということをしみじみと感じさせるような均整のとれた作品は白磁ならの美を醸し出している。そしてこの技術にデザイン力が加わった時、器を楽しむ食文化をリードすることは間違いないことであろう。



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