2/2ページ


(20)  ティーカップソーサー
カップの片側についた把っ手、対のソーサー。何気なく使っているティーカップは、日本産の湯呑みと大分違った形をしています。そんな形の来歴を辿るのも、器の愉しみ方の一つです。 

 開き気味の口元を、手慣れたアラベスク模様が飾っています。 繊細な把っ手や広縁のソーサーとのバランスもよく、優美な印象の写真の器は、紅茶用のカップ&ソーサーです。
 ティーカップといえば、コーヒーカップとともに西洋陶磁器の花形です。 中国、インド、セイロンからヨーロッパに伝わった紅茶は、初期には薬として珍重された上流階級の飲み物でした。 当然、器もそれにふさわしい姿で発達してきたのでしょう。
 そこでティーカップにまつわる、とっても面白い把っ手の話。 1600〜1700年代のカップには把っ手がなく、ソーサーは深かったといいます。 把っ手は、技術的に未熟で取れやすかったのでつけない場合も多かっ



作品:安藤富美子
    カップ 高4.5 径12.0cm
    ソーサー 径18.5cm
たとか。 ソーサーは「西欧人が猫舌で、カップの中味を一度ソーサーにあけて冷まして飲んだ」というのです。 猫舌は愉快な推理ですが、何だか他の理由もありそうですね。
 ところで、日本の湯呑みに把っ手は・・・。 興味は尽きませんが、それはまた、次の機会に。






時を忘れて見入るほど美しいビードロの溜まり、そして、思いもよらぬ発色…。
市販では手に入らない特製ビードロ釉の登場です。 
33 九炉土特製ビードロ釉

 たっぷりと深さのあるフォルムと、厚くラフな縁造り。 この作品の持つプリミティブな魅力を一層引き立てているのが、大胆に流し掛けられた釉薬です。
 今回ご紹介するのは、伊賀土に合わせて調整された九炉土特製のビードロ釉です。 一見、異種の釉の重ね掛け?と思わせる変化に富んだ発色が、この釉最大の特徴。 掛かり具合によって3段階ほど色調が変化し、釉薬の醍醐味が味わえます。
 たとえば3〜4回ほど重ね掛ければ、見込みに見られるような深く澄んだ萌葱青が出現します。 くすんだ緑や茶、時に赤っぽく見えるところは2回前後の掛かり方。 サラッと1回流れた箇所が、縁の白っぽい部分です。
 このように微妙に変化する釉を操るには、偶然を遊ぶくらいの心の余裕も大切なファクター。 もちろん、こうしたいというプランは必要ですが、いよいよ作業となったら、心持ちを大きく構えて度胸よく!が大成功の秘訣です。


作品:山上和子 高13.5 径22.0cm



1ページ | 2ページ
tougeizanmai.com / バックナンバー