インターネット版 No.27  全2ページ 1 | 2

1 ・現代陶芸の旗手達 (5)
2 ・器で愉しむお茶時間 20 ・・・ ティーカップ&ソーサー
・使ってみたい!!釉薬 33 ・・・ 九炉土特製ビードロ釉

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 「現代陶芸の旗手達」において紹介する作家は、制作の本拠・所属団体・作風など異なるものであるが、現代日本の陶芸界において第一線で活躍し、少しも停滞することなく新たな創造を目指し鎬を削っているものたちである。勿論この他に陶芸界の長老とみなされている傑出した作家も幾人かはいるが、ここでは大家は除き、今最も脂ののりきった充実した活動の時期にあり、今後の陶芸界の担い手となるべき新鋭・中堅陶工たちに限定する。
 収録内容は、近作を中心とした代表作品・プロフィール・取り扱いギャラリーなどで、解説は作家の人と作品を論じたものとした。
 また、紹介作家は、現代日本の陶芸界を代表するもので、陶芸家のステータスシンボライズエンサイクロペディア「現代陶人名鑑」に収録保存し、陶芸ユーザーのニーズに応えるものとする。



中部
・彩色
米山 久志 Hisashi Yoneyama
1950年4月生まれ
〒409-2734 山梨県南巨摩郡早川町雨畑2381
TEL 0556-45-3042
E-mail c3yone83@town.hayakawa.yamanashi.jp

「青磁梅花文壺」200,000円
高33.0 径31.0p 
2001年
(新宿・三越 個展DMより)

「青磁梅花文鉢」10,000円
高10.0 径22.2p
「染付トラノオ文ビールカップ」2,500円(1客)
高10.2 径8.1p

Profile
1950年 東京に生まれる
75年 明治大学法学部卒業
76年 この年より茨城県笠間市にて修行を重ねる
83年 現在地に築窯・独立
93年 「めん鉢大賞展」入選
95年 伝統工芸新作展入選
96年 伝統工芸新作展入選
2000年 日本伝統工芸展に入選
01年 日本伝統工芸展に入選
●主な作品のテーマ
日本らしい、いかにも日本でしかできない感性を現したい。
●主な制作技法
赤土と信楽土の表面に粉引の土を掛け、鉄と銅で絵を描き還元焼成する。
●胎土の種類
岐阜県多治見産の赤土と信楽土のブレンド
●主に使用する窯の種類
ガス窯
●師
増渕浩二
●所属団体
日本工芸会
●工房見学
可(JR見延線見延駅下車)
Message
泥臭く、手の跡がどこかに感じられ、心が癒されるもの。そういうものを形やサイズ、モチーフに関わらず創り続けていきたい。
南アルプス山麓に住み、感じて作る里山陶芸
 JR見延線に並行して流れる、清らかで冷たい富士川に沿った道を離れ、白根・塩見・赤石という南アルプスの雄峰をすぐそこに仰ぐ、したたるほど豊かな自然に恵まれた山懐に、米山久志氏の工房・岳龍窯があります。
 まだ若い頃、誰しもがそうであるように、自分探しをしている最中のこと。 たまたま巨匠・荒川豊蔵(1894−1985 志野・瀬戸黒の人間国宝)の人となりを知って、やきものの道に進む決心をしたといいます。 以来、陶芸家として一貫して求め続けてきたのは、日本でなければできない、この土地でなければ焼けない、もっといえば、米山氏自身でなければ作れない「固有のもの」です。
 千差万別な人間の個性と同じようにしてある、その土地々々の気候風土が育んだ、水や風、土や花や木々。 それらをそこに住む者=作者のまっすぐな感受性で受けとめ、正直に器に映し込もうとするのが、米山氏の作るやきものといえます。
 野に咲く梅やトラノオの花、勢いよく伸びた草の葉や川に遊ぶ小魚たちへの感動が、普段使いの器にひっそり静かに納まっています…。 今、この土地に生き、この人でなければ生まれないと思える器の数々。 それが米山久志氏の作るやきものの魅力です。
■作品扱いギャラリー
◎暮らしのうつわ花田/TEL.03-3262-0669
東京都千代田区九段南2-2-5
◎うつわや布衣(ふい)/TEL.055-233-7388
甲府市国母2-14-12
◎陶遊/TEL.0545-53-5959
富士市石坂268-16
の目
大胆な構図に配された可憐な梅花は作品全体のバランスをリードし、厚めに施された青磁釉を通し優しく表現されている様はまさに氏の求める癒しを充分に感じさせるものとなっている。




中部
・常滑焼
・化粧
伊藤 雄志 Yushi Ito
1945年8月生まれ
〒479-0824 愛知県常滑市白山町2-63-1
TEL 0569-34-2203

「練込み手皿」
径23.7×22.4p
2000年 (水野屋 個展DMより)

「粉引鉢」
1995年 (ギャラリーCERA 個展DMより)
「粉引酒器」 右「粉引組皿」
2001年 (豊しま 個展DMより)

「粉引片口」 右「志炉い器」
2002年 (清翠陶苑 個展DMより)
「刷毛目鉢」径28.5p
「組鉢 5客組」径18.5p
1998年 (水野屋 個展DMより)

Profile
1945年 愛知県常滑に生まれる
製陶工場に勤務している折、全国の産地を廻っていた日根野作三氏と出会い、指導を受ける
78年 フランス・ヴァロリス国際陶芸展にて金賞受賞
79年 日本工芸会正会員に認定される
83年 常滑・信楽ジョイント展に出品
92年 マレーシアI・T・M大学にてワークショップを行う
94年 韓国・慶州にて作陶
97年 タイにて作陶をする
98年 韓国・慶州にて日韓米の3陶芸家によるワークショップを行う
99年 インドにて行われたワークショップに参加
2000年 東海伝統工芸展の審査員となる
現在まで長三賞陶芸展にて長三賞を5回、奨励賞3回、それぞれ受賞
●主な作品のテーマ
自身の内面の表現
●主な制作技法
塩釉による練込み、粉引など
●胎土の種類
白土、赤土、磁器土
●主に使用する窯の種類
灯油窯
●師
冨本五郎
●所属団体
日本工芸会
●工房見学
可(名鉄常滑線常滑駅下車)
Message
行動し、様々に感受し、それをいかに豊かに、温かく表現し、作品化しようかと思いめぐらしています。
近代作家の精神と、クラフト運動の本質が混交して生まれた器
 愛知県常滑という中世からの大陶産地に生まれ、育った陶芸家なのに、この人の作るものはいわゆる「常滑焼」ではありません。 どちらかというと、その土地から受ける刺激や臭いを好まないタイプの作家であり、したがってその分、伝統やブランドへの依存など微塵もなく、自立しています。 伝統の産地にいてもいなくても、どんな状況にあっても周囲に囚われず、自らの考えだけでものを作ることができる陶芸家です。
 そんな伊藤雄志氏の作るやきものの特色は、素朴さのなかに感じられるモダン感覚の鋭さといえます。 たとえばそれは、ほんの少しだけ揺れているロクロ造形によるフォルムであったり、象嵌によって引かれた一本の線の頼りなさ、あるいは線による主張であったり、または、偶然を装ったかのように配される化粧土の作る風景の場合もあります。 そして、そんな微妙な佇まいのなかにこそ、なんともいえない作者特有の精神性が立ち現れるのです。
 それらは、土という素材の持つ素朴さや強さと、作者である伊藤氏の持つ天性の感覚とがせめぎ合い、時に、和合してできたどれもとても素敵な器たちばかりです。
 クラフト運動の本質ともいえる精神を受け継ぎ、愚直に思えるほど「よいもの」をひたすら求めて作り続けるのが、陶芸家・伊藤雄志氏の終わりのない目標です。
■作品扱いギャラリー
◎水野屋/TEL.0569-21-1003
半田市中町2-48
◎陶いわおか/TEL.0427-72-2232
相模原市二本松3-21-16
◎シャンペイトル/TEL.03-3498-1944
東京都港区南青山6-5-39
◎益田屋/TEL.03-3362-3281
東京都新宿区百人町2-20-17
◎青玄洞/TEL.011-621-8455
札幌市中央区南2条22丁目
の目
一般的に評価されがちな完成度の高さを求めるのではなく、作者のみが理解し基準としている出来上がりの良さが伝わる素朴さは、土を素材とすることの形や表現の意味をうったえているかのような気がする。



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