◎陶磁器に関わる中核施設 |
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岐阜県東濃地方、とりわけ多治見市とその近隣市町で焼かれるやきものが、「美濃焼」です。 和食器はもちろんのこと、洋食器やタイルなども大量生産され、日本の全生産量の半数近くを、美濃産が占めるといいます。 まさに、「陶都」と呼ぶに相応しい陶産地といえます。
陶都・多治見までは、名古屋駅からJR中央本線に乗ればおよそ45分。 名古屋のベットタウンという役割を果たしながら、他方で、美濃焼の生産地であり、同時にやきものの集積地という性格も併せ持っている街です。
とはいっても、今でこそ桃山陶の華・志野や織部焼は、歴史的に美濃で焼かれたものと証明されていますが、長い間、なにかと愛知県瀬戸市の「せともの」のネームバリューに押され続け、後塵を拝してきたのも、れっきとした事実です。 |
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自然環境との調和を考慮して設計されたという「セラミックパークMINO」の橋梁部分。 |
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ところが1986年から、トリエンナーレ(3年ごとに開催)形式ではじまった「国際陶磁器フェスティバル美濃」展の成功によって、国内はもとより、海外においても「MINO」の名は、とてもよく知られるようになりました。 |
同展は、美濃の三市一町(多治見市、土岐市、瑞浪市、笠原町)などで開催されていて、その中核となる催しが、世界規模の陶磁器コンペです。 対象作品は「陶磁器デザイン部門」と「陶芸部門」のふたつに分かれ、ファエンツァ(イタリア)やプラハ(旧チェコスロバキア)などの国際的な陶芸コンペを意識した、名実共に日本最大級のやきものの公募展です。
前回(第5回)の実績からいえば、陶芸部門は約1300点、陶磁器デザイン部門には約400点、陶芸先進国の欧米やオセアニアに限らず、中南米やアフリカなどを含む、52の国と地域から作品の応募があったそうです。
今秋、多治見市東町地内にオープンする「セラミックパークMINO」は、もともとこの国際的な陶磁器コンペの主会場に、という構想から立上がった計画でした。 そして日本初の、やきものを中心テーマにすえた産業と文化の複合的な施設を標榜し、「国際陶磁器フェスティバル美濃'02」をオープニング・イベントとして、「セラミックパークMINO」が本年10月12日に、いよいよオープンを迎えることになりました。
総面積約17ヘクタールという広大な敷地内には、自然が体感できるようにと、多くの散策ルートも作られています。 施設内部に入っていくと、コンペなどの会場となるメッセと、同時に開館する「岐阜県現代陶芸美術館」のほか、国際会議場、ライブラリーやレストランなど、様々な機能が備わっています。
またもちろん、同施設を中核として、多治見市街地などの周辺地域とも関係を保ちながら、「オリベストリート」や「どんぶり会館」など、種々のプロジェクトや観光施設との連携をはかる使命も、忘れてはいません。
桃山時代から現代へと連なる、古き佳きやきものの伝統と、近代的な工業生産品としての陶磁器が同居する産地・美濃。 それら豊かな陶芸文化を背景にして、「セラミックパークMINO」は、世界各地からの陶磁器に関する人と、情報の集まる中心施設となるよう、大きな期待を集めつつ活動を開始します。 |
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ピーター・ヴォーコス 「ウォーキング・ウーマン」
岐阜県現代陶芸美術館蔵
作品撮影:斎城 卓
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八木一夫 「頁1」
岐阜県現代陶芸美術館蔵
作品撮影:斎城 卓 |
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