インターネット版 No.23  全2ページ 1 | 2

1 ・現代陶芸の旗手達 (4)
2 ・器で愉しむお茶時間 19 ・・・ コーヒーカップ&ソーサー
・使ってみたい!!釉薬 32 ・・・ 瑠璃釉+青銅釉

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 「現代陶芸の旗手達」において紹介する作家は、制作の本拠・所属団体・作風など異なるものであるが、現代日本の陶芸界において第一線で活躍し、少しも停滞することなく新たな創造を目指し鎬を削っているものたちである。勿論この他に陶芸界の長老とみなされている傑出した作家も幾人かはいるが、ここでは大家は除き、今最も脂ののりきった充実した活動の時期にあり、今後の陶芸界の担い手となるべき新鋭・中堅陶工たちに限定する。
 収録内容は、近作を中心とした代表作品・プロフィール・取り扱いギャラリーなどで、解説は作家の人と作品を論じたものとした。
 また、紹介作家は、現代日本の陶芸界を代表するもので、陶芸家のステータスシンボライズエンサイクロペディア「現代陶人名鑑」に収録保存し、陶芸ユーザーのニーズに応えるものとする。



中国
・布志名焼
舩木 伸児 Shinji Funaki
1960年9月生まれ
〒699-0203 島根県八束郡玉湯町布志名437
TEL. 0852-62-0710

「三日月皿」 「二彩釉金彩深鉢」



「鉄釉鉢」 「鉄釉楕円鉢」
高4.5 径31.5×26.5p
大阪・うめだ阪急個展DMより

Profile
1960年 島根県・布志名に生まれる。
84年 武蔵野美術短大デザイン科卒業。
89年 田部美術館大賞「茶の湯の造形展」優秀賞受賞。
90年 郷土工芸展・美術工芸部門にて奨励賞受賞。
91年 中国地方陶芸秀作展出展。
2000年 朝日現代クラフト展に招待出品。
「茶の湯−現代の造形展」(フィンランド・ヘルシンキ)に田部美術館より出品。
01年 田部美術館大賞「茶の湯の造形展」にて奨励賞受賞。
●主な制作技法
手捻りによる茶碗、スリップウェアなど
●師
父・舩木研児
●工房見学
可(要予約、JR山陰本線玉造温泉駅)
伝統の暗部を越える痛快な器
 布志名焼の舩木窯は、宍道湖南岸の湖畔に、長い間、窯を構える名家です。
 創窯は元禄時代(1695年頃)。 弘化2(1845)年に分家してできた窯が、現在の舩木窯に連なっています。 この窯の歴史的なターニングポイントは、なんといっても4代目・舩木道忠(1900〜63年)の頃でしょう。 柳宗悦、濱田庄司、河井寛次郎、バーナード・リーチといった、いわゆる民芸派と称される人々との交流がきっかけとなり、4代目は近代意識に目覚めたといいます。 しかし、民芸派に影響を受けて作家活動をはじめたからといっても、作るものは「民芸陶器」とはいえません。 個性の表出を旨としての活動ですから、まずはそれは、どんなジャンルにも収められない創作と捉えるべきです。
 舩木窯の6代目・舩木伸児氏にしても、同様です。 窯に伝わる素材や技法を踏まえながらも、今でなければ生まれない独特な器を作っています。 17〜18世紀のイギリスで隆盛したというスリップウェア(化粧泥で模様を施した器類)の技法を用い、巧みな装飾による明るくポップな印象の皿や鉢を、得意としています。 それらの作品には、ある種の痛快さがあって、好感が持てます。 それは多分、日本の伝統の暗部に囚われず、むしろ軽々とそれを飛び越えてしまったかのような、痛快な作品だからでしょう。
■作品扱いギャラリー
◎布志名焼舩木窯展示室/TEL.0852-62-0710
島根県八束郡玉湯町布志名437
の目
スリップウェアという言葉はあまり耳慣れない人も多いことと思う。しかし技法そのものはシンプルで伝統も有り布志名焼に限るものではない。ノズルから泥を押し出し描くイッチン盛は作家の感性が表れやすく楽しい。




東北
・会津本郷焼
渡部 正博 Masahiro Watanabe
1954年5月生まれ
〒969-6115 福島県大沼郡会津本郷町新町253-1
TEL. 0242-56-2851

「染付山水紋水指」
100,000円


「赤地金襴手華竜紋酒呑」
15,000円



「窯変椿花生」50,000円


「粉引汲出し」
1,500円

Profile
1954年 福島県に生まれる。父は鳳山窯4代目・渡部豊。
東洋大学卒業後、京都にて修行。
京都府立陶工高等技術専門校、京都市工業試験場を経て、滝口和男氏、藤平陶芸などで陶技を学ぶ。
その後帰郷。
86年 独立
●主な作品のテーマ
炭化焼成ののち彩色を施した窯変赤彩花紋器。また、会津本郷の伝統である染付の継承をテーマとしている。
●主な制作技法
ロクロ成形、下絵付、上絵付、粉引など。
●胎土の種類
会津本郷産の大久保土、京都の磁土、もぐさ土、信楽荒土
●主に使用する窯の種類
ガス窯、電気窯
●師
父・4代目渡部豊
●所属団体
会津工芸新生会
●工房見学
可(JR只見線会津本郷駅下車)
Message
会津本郷の伝統・白磁染付を継承し、さらに独自の窯変、粉引などの技法による、日常使える「用に適した陶磁器」を作っていきたい。
陶と磁の次代を見晴るかす
 会津のやきものといえば、すぐに、質実剛健な土ものの雑器が思い浮かぶかも知れません。 ところが江戸時代後期に、かねてから会津藩の念願だった真っ白い肌の磁器製法が肥前・有田から伝わり、焼成に成功しました。 以来、会津には磁器の伝統が200年の間、現在まで脈々と生き続けています。 なかでも鳳山窯は、創窯から当代に至るまで、一貫して染付磁器を焼いてきたことで、よく知られています。
 鳳山窯の5代目当主となる渡部正博氏も、山水、あるいは花鳥の意匠による青華絵付を得意としています。 白い磁器に、アクセントとなる幾何学的なパターン模様を配しながら、中央に山紫水明の風景が活写された作品を見ていると、意識の底に沈んだ記憶と感覚が刺激されます。 新古典的で、秀逸な染付作品といえます。 またそれだけにとどまらず、個性的な炭化焼成を施した一連の作や、粉引などの土ものにも長じています。
 陶郷・会津本郷にあって、陶と磁というふたつの素材の次代の姿を見晴るかすのが渡部正博氏の仕事なのです。
■作品扱いギャラリー
◎会津本郷陶磁器会館/TEL.0242-56-3007
福島県大沼郡会津本郷町川原町1823-1
の目
染付や金襴手は日本のやきものの一角を担う大切な技法であるが、豊富な経験が基となる職人技術を身に付けた陶芸家は少なくなる一方である。是非この技法を現代にマッチした造形にも取り入れていかれることを願いたい。




中部
・化粧
佐藤 喬 Takashi Sato
1945年6月生まれ
〒413-0103 静岡県熱海市網代549-36
TEL. 0557-67-0806
E-mail sato-se@mtd.biglobe.ne.jp

「叩きハケ目扁形花入」





Profile
1945年 宮城県に生まれて、東京で育つ。
68年 武蔵野美術大学卒業。辻清明氏に師事。
栃木県・益子の塚本製陶所にて研修。
70年 京都にて修行。
76年 熱海市網代に独立・築窯する。
●主な作品のテーマ
伝統に偏らない未知の造形作品
●主な制作技法
化粧掛け(ハケ目)
●胎土の種類
黄の瀬原土、伊賀原土
●主に使用する窯の種類
ガス窯
●工房見学
可(JR伊東線網代駅下車)
Message
薪窯による、未知の作品に挑戦します。
本源的な野趣に富んだ力強さ
 古くからの陶産地にある因習に囚われず、自由に作陶したいと考えて、20年ほど前から、静岡・伊豆半島に創作の本拠地を求めて進出する陶芸家がぐっと増えています。 佐藤喬氏は、もっとも早い時期にそう思って伊豆にやってきたひとりです。
 刷毛目、粉引という化粧掛けによる伝統技法を用いて、これまで作品を作ってきましたが、伝統様式に溺れて器を作ってきたつもりは毛頭ありません。 佐藤氏の作品の特徴は、オリジナルな形に、雄渾な刷毛目を施した作品の屈強さにあります。 本源的な、野趣に富んだ力強さが魅力です。
 よき伝統を吸収し、ことさら伝統の古さから解放されることを意識して作ってきた佐藤氏は、近く新たに薪窯を築いて、未知の作品作りに取り組むといいます。 しばらくは、この作家の動静から目が離せそうにありません。
■作品扱いギャラリー
◎三洲園/TEL.0558-72-0707
静岡県田方郡修善寺町940-2
◎ギャラリー炎彩/TEL.0558-85-2200
静岡県天城湯が島
◎陶心庵川久/TEL.045-942-9594
横浜市都筑区仲町台1-23-7
◎ギャラリーにっそく/TEL.022-278-2641
仙台市青葉区中山2-1-13
の目
伝統にはその良さはあるが、これまでに無いものへの探求心とまたその形や用途へのチャレンジ精神はアーティストなら誰しも少なからずあるはずだ。しかしそれを極めることは難しい。テーマの絞り込みが決め手となる。




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