(17) 湯呑みと皿 | |
昭和40年頃、誰一人、電気窯に馴染みのある作家のいない備前で、緋襷(ひだすき)の電気窯焼成を思いつき、完成させたのは、金重素山でした。 | |
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とある料理屋で出された、使い込まれて心底美しい焼締め湯呑み。 これが、名もない窯物だと知って驚いたことがあります。 「道具は育てるもの」と聞きますが、佐野貴映さんの備前湯呑みもシブさのなかに毎日なでながら育ててみたい和やかさを感じます。 近藤正子さんの備前皿には柚子色が映えて、日本的な茶の間の風景になりました。 さて、二つの器には備前らしい緋襷の装飾が見えます。 そこで今回は、茶陶の巨匠にして緋襷の名手・金重素山(かねしげそざん)のお話です。 緋襷といえば古備前に名品が多いためか、古式の薪窯を使って桃山の緋襷を再現しようという陶芸家も多くいます。 ところが素山は電気窯を使った緋襷焼成を創案・完成し、「緋襷の素山」と称されるほどの格調高い作品を遺したのです。 こうした先駆的な試みには中傷もありましたが、笑って聞き流したといいます。 晩年も「わしが欲しい茶碗を作る」といった老成の巨人。 創作の自由さを愛した、澄んだ眼の人でした。 |
作品:佐野貴映 湯呑み 高8.0 径6.5cm 近藤正子 皿 径15.0cm お菓子:柚子だんご (ふるや古賀音庵) |
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