インターネット版 No.12  全2ページ 1 | 2

1 ・第6回 「九炉土干支コンテスト」特集 (1)
2 ・第6回 「九炉土干支コンテスト」特集 (2)
・ZOOM--UP (4) ・・・ 瀬戸焼

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 第6回 「九炉土干支コンテスト」特集
  

  
お待たせしました。いよいよ「干支コン」の最終審査の結果発表です。
全国公募となって、今回、いよいよ初のグランプリが決定! です。



「♪お馬の親子はなかよしこよし♪」 (形部門)
野川 涼 さん
東京都杉並区
講評暗い世相にあって、馬の温かみや優しさをリズミカルに作品に表現し、それが見る人に伝わりました。シンプルながらも丁寧に仕上げられ、緋色を巧みに使って、ほのぼのさを演出。大賞受賞作に比しても、グランプリに相応しい突出した実力と技術力のある作品です。

(岡本立世総長 以下同)
「遊び心によって、土の造形に生命感やアミニズムを吹き込むことをテーマにして制作しています。 昨今、子供たちをとりまく世界にも暗い話題が多く、動物のひたむきな子育てを見て、人間も考え直したいとさえ思うことがあります。 この作品で表した馬の親子の情感や、対話の様子によって、何かが伝えられたでしょうか?



◎ダントツの人気票
 「干支コン」の趣旨は、来年の干支を共通テーマとして、陶によるオリジナリティーあふれる表現をすることです。 といっても、作者個人が感じているものを土で作るには、相応の技術や表現力が必要となるでしょう。
 また、プロやアマチュアという立場を問わず、陶芸素材を活かして、その年を象徴するような作品を作って、多くの鑑賞者に見てもらうのが、「干支コン」を開催する大きな目的です。
 グランプリに輝いた野川涼さんの受賞作は、馬を介して、昨今の現代社会が失いがちな「家族愛」を、一般の観覧者に強く訴えかけました。 その結果、200票もの他を圧する人気と、審査員の支持を集めました。 



おめでとう!!入賞・入選作品発表 
 今年も「干支コンテスト」には、じつに多様多彩な「馬」が、全国各地から大集合しました。 入賞から入選作まで、力作33点をここに一挙に発表します! 
◎有効投票数は800票 

 第6回を迎えた恒例の「干支コン」。 毎年のことながら、応募された作品を見ていると、同じ干支(本年度は「馬」)という主題で作っているのに、形や色はもちろんのこと、なぜこんなにも発想がそれぞれ違い、個性豊かなのだろうと、ひたすら深く感心するばかりです。
 今回も強さを表現した馬や、温かさが感じられる作品、それに、思わず微笑んでしまうような馬など・・・予想通り多彩な馬々が、全国から大集合しました。
 また今年からは、一次審査を通過した34点の全作品が、賞候補を含む入選作として、「九炉土展」会場に晴れがましく展示されました。 さらに同展会場にて、一般観覧者の皆さんにアンケートをお願いし、すべての入選作を対象にした人気投票を実施。 その結果、有効投票数は約800票にもおよび、来場者の「干支コン」や陶芸に対する関心の高さが、はっきりとうかがえました。
 それら人気投票での成績も十二分に尊重しつつ、入選作は二次審査へと進み、先頃、グランプリ、および以下に写真で紹介するように各賞、それに佳作、入選作品が決定しました。



形大賞
「馬ーい酒」


竹中美利さん
東京都新宿区


講評展覧会場でひと目見ただけでは分かりませんが、この作は馬全体を各パーツに分け、それぞれを容器としてフルに活かしていて、秀逸です。さらに、馬への純朴な親しみを感じさせます。気取りのない心地よい作風で、作る楽しさが強く伝わってくる作品です。
「いつか牧場で馬を見ました。この作品では、そのなかで一番印象に残った大きな馬の持つ優しさを表現しました。各パーツの収縮具合、また足がへたらないように支えて乾燥させるのに苦労しました。でも、浮かんだイメージをアイディア通りに仕上げるのに夢中になり、制作は楽しかったの一言です」  
  

彫刻大賞
「天馬座禅す」
山上和子さん
東京都杉並区


講評彫刻部門は、干支そのものが形となった表現が出品の条件。となると、どうしてもテーマを写実的にとらえがちになり、デフォルメするのは難しくなります。ところがこの作品は、顔はリアルな表現ですが、座禅という虚構のポーズを馬にとらせた点が、ほかの作品にまったく見られない独創的な着想で、高く評価されました。
「私の未来を馬が考えてくれたなら・・・という着想から、この作品を思いつきました。頭の角度、首、肩のラインに、柔和な雰囲気を表現したくて、それを成形のポイントにしました。焼成後、思ったより頭部が下がりましたが 『謙虚であれ!』 ということと、真摯に受けとめています」

文字大賞
「白薩摩彩文字“馬”向付」
大木茂子さん
東京都渋谷区
 

講評
馬の字をデザインし図案化させて、白薩摩の器のなかに大胆に持ち込んだ構成力ある作品です。 しかもそれは、器としてじゃまにならないデザインで、むしろ文字が入ることで作品が引き締まり、オリジナリティーの豊かさが高評価を受けました。
「金文体の馬の字を、馬の絵に見えるようにアレンジしたのが、表現のポイントです。締切りギリギリのスケジュールで、しかも薩摩土のろくろ成形の難しさもあって、焼き上がるまでドキドキものでした」 


審査員特別賞
「若駒」(彫刻部門)
金子陽子さん
千葉県市川市

講評少し体をひねった若駒をモチーフに、削ぎ取って削ぎ取って、ごくシンプルに作品化した秀作です。彫刻大賞にならなかったのは、ムダを省いて削ぎ落としながら表現する難しさは、彫刻の分野だけに限らないために特別賞となりました。今にも走り出しそうな躍動感ある作品で、好感が持てて多くの票を集めました。
「若馬の伸びやかさを表現するため、形をシンプルにしました。表面を滑らかにするためにヤスリをかけたところ、赤土の石粒が浮き上がり、効果的でした。また首や体の傾きを決めるところでは、苦労しました」 

 



 

「ウマいなあ〜!(香炉)」(形)

築坂香峙さん 京都府

講評馬の形そのものに香炉としての用途を持たせ、人気票を多く集めた作品です。飄々とした馬の表情がタイトルと合致していました。台座をもう少し工夫すれば、馬との一体感が表現できて大賞が狙えたと思います。

 

「NO殺牧場の決闘」
(彫刻)


前田由美さん 山口県

講評茶目っ気とユーモアのある作品です。その点においては秀でた巧みさがあります。 トータルで見れば、下半身に動きのある造形を取り入れれば、もっと愉快な作品になり、きっと鑑賞者を “悩殺” できたように感じます。

 

「陶板ランプシェード」
(絵付)


西尾房子さん 東京都

講評2枚の陶板を、皮ひもでつなぎ合わせ、畳んでしまえるというアイディアある作品です。馬の絵付やその配置もよく、皮ひもを陶素材に変えて作品化すれば、大賞がぐっと近づきます。次作に大きな期待がかかります。

 

「ランプシェード〈躍動〉」
(絵付)


田中光雄さん 千葉県

講評備前土を効果的に用いていて、細かな配慮が見られます。できれば白化粧で隠してしまうのではなく、素地土を活かす工夫があれば、大賞にもう一歩近づいたと思います。また絵は形との必然性や、全体との統一感を取り入れて描くとさらにいいでしょう。

 

「左馬一輪差」
(文字)


竪山 明さん 福岡県

講評
堂々とした文字に動きがあって、審査員からも高い評価を得た力作です。それは、一般人気投票でもかなりの票数を集めたことでも明らかです。作品全体を見渡しながら作る構成力さえ加われば、大賞が受賞できました。次回作が楽しみです。

 



 
「ランプシェード〈親子で散歩〉」
(絵付)

當間さだ子さん 千葉県 
「扁壺〈駒つなぎ草〉」
(絵付)

藤井 節さん 東京都
「馬蹄香炉」
(形)

藤村晏里さん 神奈川県

 
「静かな馬(注器)」
(形)

筒井童太さん 埼玉県
「ひととき」
(彫刻)

水野文子さん 東京都

 



 
「初笑い(香炉)」
(形)

日高頌子さん 福岡県
「ツイストする馬」
(文字)

山田幸子さん 東京都

 
「親子馬」
(絵付)

佐古智子さん 東京都
「木馬市松皿」
(絵付)

村松美紀さん 神奈川県

 


★ 敢闘賞・佳作・入選は2ページに続きます ★



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