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−−今回からは、茶入に次ぐ大切な茶道具、お茶碗の話をお聞きしていきたいと思います・・・。

安藤●以前お話ししましたように、お茶を直接入れる容器という意味で、茶道具としては茶入が最重要視されます。
 ですがお客様の側からすると、茶碗は直接手にして、しかも口に当てて茶をいただくものであり、茶入はあくまでも亭主だけが扱う道具です。
 それに一般的にいっても、ただの入れものとしての機能の器より、使う器の方により親しみがわきますから、どちらかというと、現実的には茶入よりも茶碗に執心する人が、やはり多いのではないですか。

−−確かに人気がありますから、陶芸家の個展などでは、茶碗を主役に発表しています。
 ところで、日本に抹茶が渡ってきた頃は、どんなお茶碗を使って飲まれていたのでしょうか?


安藤●茶碗を歴史的に見ますと、抹茶の発生から考えても、茶は天目茶碗でひとりずつ、一服ずつ点てて飲んだのがはじまりです。
 天目茶碗では決して飲み回しをせず、貴人(きにん)が一服だけし、お相伴の人たちは別の茶碗を使うという扱い方もあるくらいなのです。

−−天目茶碗で一服だけ飲むのが、本来のお茶の飲み方だったのですね。

安藤●ところがそれが、侘茶の台頭とともに、次第に飲み回しの様式に変わってきたといわれています。また料理なども盛り込みとなり、皆さんに回すようになりました。
 私はこのような形での飲食は、亭主に手間をかけさせないということもありますが、世の中が平和でない時、戦乱の時代の人心を反映した、特徴的な傾向だと思いますよ。

−−?? 一体、どういうことでしょうか。

安藤●たとえば、中国の料理は取り回しですね。 中国では日本の下克上のような時代が絶えず続いていましたから。
 つまり、主客が一緒になって食べるのですから、そのことが毒を入れていない証となっているのです。  
 (構成・編集部)






(16)  カップ&ソーサー小皿
この作品の明るく朗らかな絵付を見ていたら、石黒宗麿のある作品を思い出しました。その作風と生き方は、創作の原点を教えてくれるようです。  

 クリーム色の地に、ピンクと白の大柄な花模様。 コスモスでしょうか。 器の全面に描かれていますが、不思議に“描き過ぎ”と感じないのは、パステルトーンの色調とタッチの大らかさのせいかもしれません。 穏やかな秋のひとときが似合いそうな佐藤京子さんの作品です。
 最近では伝統的な絵具に加え、チューブ入り絵具や陶彩パス、液体顔料などの扱いやすい着色材が開発されています。 こんな恩恵も取り入れ、カラフルな絵付をもっと楽しみたいものです。
 そこで思い起こすのが、石黒宗麿のチョーク描きの絵付です。 宗麿は鉄釉陶器の人間国宝ですが、作風は斬新多彩で、多くの陶技に取り組みました。 チョークを絵付に用いたのも、昭和20年代当時では衝撃的だったに違いありません。

作品:佐藤京子
    カップ 高7.0 径11.0cm
    ソーサー 径13.0cm
    小皿 高4.0 径12.5cm

お菓子:チーズケーキ (くるみ堂)
 その根底には大いなるアマチュアリズムがあったといいます。 陶家の出でなく、因襲におもねることのない自由さを大切にしていたからです。 器作りにつまづいたら思い出してほしい、ちょっと勇気づけられるお話です。 




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