インターネット版 No.8  全2ページ 1 | 2

1 ・特集 やきもの散歩<3> ・・・ 「伊万里・鍋島 名品展」と渋谷松濤周辺 (1)
2 ・特集 やきもの散歩<3> ・・・ 「伊万里・鍋島 名品展」と渋谷松濤周辺 (2)
・BOOK ・・・ 「楽しい和食器」 テーブルウェア愛好会
・ZOOM--UP<3> ・・・ 出石(いずし)焼

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 やきもの散歩<3>
「色絵寿字宝尽文八角皿」径20.8p 鍋島
江戸時代(17C末〜18C初) 戸栗美術館蔵
伊万里 名品展」
   渋谷
松濤(しょうとう)周辺
渋谷・ハチ公前の交差点は、人とクルマの喧騒の渦。 ところが少し奥に入ると、静かで、とても落ち着いている街です。今号では、そんな渋谷・松濤・神宮前界隈を、やきものを探してゆっくりと歩いてみました。 

「色絵寿字吉祥文鉢」(部分)径22.1p 伊万里 
江戸時代(17C末〜18C初) 戸栗美術館蔵


●肥前磁器の名品に、ため息
 渋谷駅周辺は、昼夜を分かたず人やクルマが行き交っていて、流行を先取りした若者たちが、主役を張る街です。 そればかりか最近では、IT関連のベンチャー企業が次々と拠点を構えはじめ、注目されています。
 その一方では、美術館や陶芸の専門店、工芸を扱うギャラリーも多くあって、文化・芸術の発信地としての役割を担うという、多面性のある地域です。
 東急百貨店の本店の西北、ちょうどNHK放送センターと、駒場(目黒区)の東大キャンパスに挟まれるようにして佇む高級住宅街が、渋谷区松濤です。
 渋谷駅から歩いても10分弱ほどの距離ですが、今日のスタート地点は、井の頭線の神泉駅とします。 駅で電車を降りると南側は道玄坂上、北に進むと松濤の街が広がっています。

 すぐ西側を走る山手通りの騒音が嘘のように静かな、昼なおひっそりとした街並みを歩くと、石造りの外観が独特な建築物が目に飛び込んできました。 「渋谷区立松濤美術館」です。 この美術館では美術品の収集は行わず、年に4、5回の特別展が開催され、絵画や彫刻、それに工芸などのジャンルをテーマとして、鋭く切り込みます。
 館内を見学したら、近接する「鍋島松濤公園」の池の周りを、ぜひ散策してみましょう。 東京都心では珍しくなった湧き水の池は澄んでいて、樹々の緑が心地よい空間を作っています。 思わず深呼吸がしたくなるほどの、すがすがしさです。
渋谷区立松濤美術館

●渋谷区松濤2-14-14 ●TEL.03-3465-9421 ●渋谷駅より徒歩15分、京王井の頭線神泉駅から徒歩5分 ●美術品の収集は行わず、様々なテーマの企画展示を中心に活動する館。 また美術教室、講演会など積極的に開催しています。

  澄んだ池が美しい「鍋島松濤公園」。
昭和3年頃、「松濤」の地名が生まれたといわれます。

 さて次は、公園の角を曲がって東(宇田川町方面)へと向かいます。 フランス料理の老舗「シェ・マツオ」の前を通り過ぎてすぐ、左手にお目当ての「戸栗美術館」が見えてきます。

 同館の収蔵品の主体は伊万里、柿右衛門、鍋島などの有田磁器、それに中国や朝鮮の古陶磁などで、およそ一万点もの美術品を所蔵しています。 なかでも伊万里と鍋島はとくに傑出していて、質・量ともに世界有数のコレクションといわれるほどです。
 現在は、館蔵の伊万里や鍋島の逸品だけを選りすぐり、展示する企画展(囲み記事参照)が開催中です。 完璧とも思える精緻華麗な磁器の様式美と技術力の極みを、じっくり鑑賞することができます。
戸栗美術館

●渋谷区松濤1-11-3 ●TEL.03-3465-0070 ●渋谷駅より徒歩10分、京王井の頭線神泉駅から徒歩5分 ●実業家・戸栗亨氏が蒐集した日本、および中国・朝鮮の陶磁器を中心にしたコレクションを保存し、一般に公開しています。 とくに伊万里、鍋島など肥前磁器では世界有数のコレクションです。


「染付桜花文皿」径20.4p 鍋島 
江戸時代(17C末〜18C初) 戸栗美術館蔵



「館蔵 伊万里・鍋島 名品展」 9月29日〜12月24日(月曜休館) 
 伊万里焼は現在の佐賀県・有田町で焼かれ、製品が伊万里港から出荷されたために、開窯初期からその名を冠して呼ばれた華麗な磁器です。 はじめは中国の染付を手本とし、やがては独自に赤絵の技術を完成させ、今日まで続いて焼かれています。
 また同じ有田産の磁器でも、鍋島藩窯により有職風の文様をまとった、完成度の高いやきものが量産されました。 徹底した技巧主義によって作られたこの器を、鍋島といいます。
 そしてこれら肥前産の磁器は、ともに元禄・享保年間(1688〜1736)に焼かれ、日本を代表する磁器となりました。
 本展では「伊万里」と「鍋島」が、とくに館蔵の優品より選ばれ、比較展示されています。 豪華絢爛な古伊万里の金襴手、格調高い鍋島の様式美、各々の魅力がたっぷりと堪能できます。 

「色絵荒磯文鉢」径24.7p 伊万里 
江戸時代(17C末〜18C初) 戸栗美術館蔵



●好みの器を見つける
 日本の美を心ゆくまで堪能したら、今度はガラリと趣を変え「Bunkamura ザ・ミュージアム」に立ち寄ってみましょう。
 ここでは、おもに19世紀末美術や海外美術館のコレクションなど、西欧の良質な美術品に触れることができます。 それに松濤と道玄坂地区が接するこの界隈には、陶芸作品を企画展示するギャラリーや、現代的で実用的な器を扱うショップが多くありますから、やきものファンならこちらも見逃せません。
Bunkamura ザ・ミュージアム

●渋谷区道玄坂2-24-1 ●TEL.03-3477-9252 
●渋谷駅より徒歩8分 ●社会と女性との関わり、19世紀末の美術、それに海外の美術館コレクションといった3つ方針を基本として企画展を開催しています。  


<<やきもの散歩・・・P2へ続く・・・>>



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