漆黒の深みに映える初々しい緑。 抹茶の色と泡立ちの美しさがこれほど際立つのは、やはり黒茶碗ならではのこと。 茶碗を手掛ける作陶家が、やがては挑みたくなると聞きます。
そんな黒茶碗ながら、長岡文さんの作からは気負いのない優しさが感じられ、好感が持てます。 きっと、スッと伸びた端正な胴や、包み込むように丸味のある口元が、そう感じさせるのでしょう。 二宮暢子さんのあでやかな香炉との相性もピタリ。 茶席をグッと盛り上げます。
さて、そのお茶受けに、黒茶碗にまつわる逸話をひとつ。
利休は茶の湯の師として秀吉に仕えましたが、やがて切腹を命ぜられ、壮絶な最後を遂げます。 その発端が、黒茶碗を巡る好みの違いだったというのです。 真偽は分かりませんが、三浦綾子が小説に仕立てていて、スリリングに読むことができます。 こんな器へのアプローチもまた、楽しいものですね。 |
三浦綾子の小説は、「千利休とその妻たち」。
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作品:長岡 文 茶碗 高8.5 径11.0cm
作品:二宮暢子 香炉 高8.5 径8.5cm |
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