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わずか10軒の小さな部落に技術保全の結束が
粘土や材料となる原料は全て地元で、全員参加で調達。作品に個人の銘は入れず、個展なども行なってはならない。弟子は外から入れず、作業は家族で行なう。

窯元の軒先には作品が並ぶ 窯を持たない5軒がこの共同窯を使う 日田からバスの運行も有る



超越した技術と伝統の美に学ぶ
永い歴史と伝統を守る技法・飛びかんな・打ち刷毛目・櫛描き
   


飛びかんなは完成まで約8秒、シャッターチャンスもままならない。
この道40年の同業組合 組合長・坂本義孝氏に技術の解説を頂きます。
成形し白化粧泥を施した作品は飛びかんなに適した乾きへと進める。素地土は鉄分を含み、焼成後、赤く呈色するものを用いる。
蹴ろくろを用い、まず、止め台となる土を中心に置き、平らになるよう叩き棒で叩いていく。
その上に、あらかじめ半乾燥させた作品を置き、中心を確認する。
カンナは、鋼などよくはずむものを適度に曲げ用いる。
※時計のゼンマイを使用している。
カンナの先が土にわずかに食い込むよう当て、回転に合わせ中心から外へと進める。
この間わずか8秒。
次から次へと飛びかんなが施されていく様は、職人技を超えた機械のような正確さである。






打ち刷毛目は成形から始め、完成までわずか2分、技術の全てを見逃すまいと、目は釘付け。
まず、目の前の土をわし掴みに取り、あらかた手の平で丸めたかと思うと、アッという間にろくろの上に置かれ、叩き棒で平らに。
さらに、ろくろの速度を上げ、わずか2〜3回転で底が出来上がる。
手際よくヒモを作り、見る見る底の上に巻き付けていく。
※ヒモは太く短い。
左手を外に当て、右手で積み上げるヒモを挟むように締めていく。ろくろの回転を早める。
両手で土を締め上げ、表面のヒモの跡が消える程度まで進める。次に皮を用い口縁に当て、土ゴロシを行う。
土ゴロシが終われば荒伸ばし、さらに広げ、一気に皿の形へと進める。
皿の形ができた所で木ゴテを当て、形を決めると同時に表面の仕上を行う。
口縁に皮を当て成形は終わる。
この間2分足らず。
直ぐ様、大きめの刷毛に化粧泥をたっぷり付け、全面に均一に塗り付ける。
続けて、その刷毛を上下に軽く叩き付けるように刷毛打ちを行う。
刷毛打ちは約20秒で仕上がる。あまりに見事な刷毛さばきに見惚れているうちに、もう4枚目が仕上っている。感服。






次に披露して下さったのは、櫛描き、どうしたらこれ程正確に!
成形は途中まで打ち刷毛目と同様に進める。完成間際に口縁を少し端反りにする。
採寸も手を広げ、一発でOK。
即座に化粧泥を中心から外方向へと均一に塗り付ける。
特製の小さな櫛を手に、一気に描き始めた。慣れた手付きで2周、見事に同じタイミングで動いている。
計算してもこうはいかないだろうと思われる太めの線が描かれ、みごとな文様となった。
これは半乾燥へと進め、飛びかんなの文様を施すこととなる。


飛びかんなや打ち刷毛目の手法は、他の産地でも古くから行われているが、この早さ、この正確さは、徹底した技術継承と団結した販売手法による安定があればこそだと、小鹿田焼が守り続ける、わずか10軒の同業組合の意味とその力を知ることとなった。


・・・・・・ 次ページに続く