全国旅手帖沈壽官窯・壽官陶苑/薩摩焼

沈壽官窯・壽官陶苑 [ちんじゅかんがま・じゅかんとうえん]






薩摩焼の里・美山で400年以上続く名門・沈壽官の窯です。薩摩藩御用達の白もんを焼き続け、12代当主は透かし彫や浮彫の考案者といわれ県内でも5人しかいない透かし彫職人の一人に数えられています。また、14代当主は司馬遼太郎の『故郷忘じがたく候』の主人公でも知られる色絵薩摩の担い手です。



15代 沈壽官氏

現当主は15代沈壽官氏。鍛えられた細心の技を使って、12代の彫の技法を受け継ぎ、気の遠くなるほど丁寧に細工された器肌に、華麗な上絵付を控えめに施した気品ある作品を作り出しています。
「蝉の羽のような貫入が入っているのが、白薩摩の理想」とおっしゃる通り、とくに極めて微細な網目状の貫入がびっしりと入った素地の美しさは格別です。
「八角皿」
15代の作る白薩摩は、定評があります。「素地土は陶器としての温もりと、白の清潔感を残す土作りをいつも大切にしたいと思っています」と語る沈さん。
徹底したこだわりで、土は自らブレンドし、余分な負荷をかけないようにと成形の時から細心の注意を払って作業します。香炉などの二重透しや繊細な細工ものの成形時などには狂いが生じる原因となるからことさら慎重です。ロクロ成形の場合は、土ころしをあまりせず、一回で伸ばすところを、二度、三度と分けて挽き上げ、土をいたわり成形します。素材を愛おしみつつ、かつ大切に扱う様や、ひとつの香炉の透彫りに1カ月ほども費やすことなど、薩摩焼に対する誠実な思いがひしひしと伝わってきます。









15代沈壽官「翔鶴皿」

伝統的な鶴の意匠が、典雅な雰囲気を漂わせた秀作です。




15代沈壽官 「亀甲小皿」(表と裏)

「赤絵の具は、まるで老婆が縁側で居眠りをするように、ゆっくりと力を入れずに擦るといい色になるんです(笑)」と当代。金彩と赤絵が上品な文様としてあしらわれているのが、控えめながら強い印象を残します。

「いい仕事とは、ごまかさずに誠実にやること。 私たちは人のできることはやらない、できないことをやります」。その言葉からは、400年間、一子相伝で李朝陶芸の秘法を継ぎ伝え、薩摩の歴史とともに生きてきた沈壽官家の当主としての揺るぎない自信が感じられました。



■伝世品収蔵庫



鶴の木型(写真右)
収蔵庫には沈家歴代の代表作品や関連資料などが展示され、400年の重い歴史を知ることができます。壁にはレリーフのような鶴の木型が飾られています。



■ショップ・ギャラリー


武家門をくぐり植え込みの間を進んでいくと、正面に壽官陶苑の作品展示・販売所が見えます。ここには15代の新作や窯ものなどが展示されています。薩摩焼の高貴な作りが堪能できます。



■ロクロ室・窯

邸内には窓越に作陶風景が見学できる「ロクロ室」が設けられています。
工房では20人ほどの職人が、ロクロ、透彫り、糊入れ、絵付などを分業で行います。
 ■15代 沈壽官氏 略歴
1959年
1983年
1984年
1987年
1988年

1990年
1999年
2000年
鹿児島県に生まれる
早稲田大学卒業
京都府立陶工高等技術専門学校修了
ベルナルド・コンペディション(フランス)入選
イタリア国立美術陶芸学校卒業
チルコロ・フィオーレ(イタリア)入選
韓国にてキムチ壺制作
15代沈壽官を襲名
明知大学(韓国)客員教授に就任
鹿児島・山形屋にて襲名展
DATA
住所 鹿児島県日置市東市来町美山1715
TEL 099-274-2358
OPEN 9:00〜17:00
休業日 第1・3月曜日
料金 収蔵庫入館料/高校生以上500円
アクセス JR鹿児島本線東市来駅よりバスにて「美山」下車すぐ
URL http://www.chin-jukan.co.jp/

※掲載情報は変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください


大きな地図で見る

広告