インターネット版 No.67 全3ページ 1 | 2| 3

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3 ・リラックス・セラミックス 14 ・・・ アロマポット


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「Ar陶ニュース」50号記念特集
「陶房 九炉土」
30years Memorial Album
■取材/撮影協力 : おはし処 四万十川 常連、株式会社友和
陶芸の魅力+喜び一杯!
「陶房 九炉土」が、今年、創立30年を迎えました。 陶芸をはじめるきっかけは様々でも、生き生きと作陶に取り組み、一生の趣味として息長く続ける方がここには数多く在籍しています。各曜日の教室を訪ねて、作陶の魅力や楽しみ方、 そして胸の内にある作陶観を聞いてみました…。
*氏名のあとの( )内数字は、作陶キャリアです。


〈Part1・・・@〉

先見性あるコンセプト         

 数ある全国の陶芸教室のなかでも、実績と規模、指導ノウハウの熟成度や多様性において、屈指の存在といわれている「九炉土陶芸クラブ」が、このほど創立30年を迎えました。
 近年、何度か訪れた陶芸ブームによって、新たに陶芸教室が生まれ、消えていく動向を横に見ながら、同クラブでは堅実に、アマチュア作陶家の皆さんに陶芸の魅力や素晴らしさを伝え続けてきました。 その結果として、作陶の醍醐味や感動を体感した方も多く、また気ままな一過性や流行などではない、生涯つき合っていける普遍的な趣味としての作陶を、しっかり浸透させることに貢献してきました。
 今でこそ世の中が経済的に豊かになり、技術革新も進んで作陶には親しみが持たれるようになりました。 ところがこのような時代を迎える30年も前から、すでに「個性の尊重」や「完全自由時間・自由制作」をコンセプトに掲げ、岡本立世総長によって同クラブが開設されたのです。 これらの方針は、当時の社会背景からして画期的なことでした。 しかしそういった枠組みにおいても、技術指導は疎かにせず徹底され、基礎から高・難レベルまで広くカバーされました。 この指導方針の根底にあったのが「個々の能力を伸ばすこと」だったからです。
 すなわち、経験や習熟度によって異なるそれぞれに相応しい、最適な指導法を検討し、個人の持つ様々な能力を発見・開発、高次に向かって導いていったのです。 また、評価基準は作者固有の感性と資質に照らし合わせることをテーゼとし、その人らしい個性的表現を尊び、決して標準化しませんでした。
 特筆すべきは、現在でもこれらの基本方針は色褪せず本質的であり、同クラブでは着実に実績を重ねています。 向学心を刺激するカリキュラムがさらに拡充され、興味深いオプションが次々と生まれ続けています。


生ある限り陶芸を続けていたい
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長岡 文さん (30年 名誉会員) 

九炉土の歴史とともに歩み、30年間作り続けてきた長岡さんは、自ら使うものが自分の手で作れることが陶芸の素晴らしさといいます。 「だからどんなにデコボコでも、歪んでいても構わないんですよ。 私は、生きている以上、一生陶芸を続けたいと思っています」


岡本総長のアトリエ「穏里庵」での朝食のひと時。

伊賀・西山窯で茶碗を作る。


想像とは違う焼き上がりの面白さ
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新井 泉さん (10年以上)

手作りが好きで、器が好きで、たちまち陶芸に夢中に。 なぜハマったかといえば「良くも悪くも、思い通りにならないから(笑)」。 それが面白さに拍車をかけました。 それに、人とは違うものが作りたいと思っていて、それが実現できるのも陶芸の大きな魅力とも。
ザックリとした土を選んで電動ロクロに据えて、
成形がはじまりました。


作る過程にドラマがあります
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岩崎弘子さん (13年)

作品が完成したら、岩崎さんはいつも1週間ほど、ゆっくりと、じっくりとただ作品を眺め続けるのが常です。 するとどこかにその作品の魅力が発見でき、同時に、制作過程でのドラマが再び思い起こされ、昂揚した気分が味わえるそうです。 静かな、感動の瞬間!
基本技術がしっかりと身についている岩崎さん。
紐作りによる成形にリズムがあります。


楽しみながら"遊ぶ"意識で作る
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西尾房子さん (13年)
西尾さんは、毎日、抹茶を飲むのが習慣です。 その折に、自作の茶碗をその時の気分次第で選んでは、一服を楽しむのです。 きっとその場には、至福の時間が流れているに違いありません。 「私にとっての陶芸とは、楽しみながら“遊ぶ”という意識」といいます。
作るのはもっぱら茶碗。
今日の工程は夏茶碗の成形(左と右)と釉掛け(中)。



生き続く指導ポリシー         

 では、実際に同クラブで作陶を楽しむ会員の皆さんは、日頃どう感じながら取り組んでいるか、また、陶芸と自身との関係性をどうとらえているのかを、インタヴューし検証してみました。 すると異口同音ではありますが、要約すると以下のような意見や感想が聞こえてきました。
 ・・・しっかり教えてもらえる、丁寧に教えて下さる、技術に幅ができる、能力を伸ばしてくれる、好き勝手作れる、自由にやれる、束縛されない、自分のイメージをはずせる、教室の雰囲気が好き、仲間の人間性がいい、様々な人から刺激を受ける、いい出会いがある・・・などです。
 つまり、創設当初に岡本総長が掲げた「楽しく、自由に、個性を伸ばせる場」というポリシーが、しっかりと会員の皆さんの内面に波及し、実質として生き続けてきたのだといえます。
 今回の特集取材に協力頂いた皆さんは、作陶のキャリアはもちろん、性別、年齢も様々です。 しかし陶芸という共通項によって結ばれ、和やかな雰囲気のなか、ひとつとして同じものを作らず、自己に忠実に自由に制作していました。
 また同クラブには、30年を筆頭に、趣味としての陶芸を息長く続ける方が多く在籍しているのも特徴です。 そのことと、個人の資質や感性を認め、固有の能力を伸ばして導こうとする基本方針とは、決して無関係ではないはずだと痛感しました。
 岡本総長はじめ、講師の先生方の細心の配慮はもちろん、会員の皆さんの情熱、場という空間などが一体化し、「九炉土陶芸クラブ」が健全に発展しているのを強く実感しました。 ■



陶芸はいいなぁと、つくづく感じます
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佐藤京子さん (20数年)        
 
今日はロクロでの大物作り。電動ロクロが回転しはじめた途端、いきなり真剣モードに入りました。
「陶芸をやっていると、いつもフレッシュな気分でいられるのが大きな魅力」と、佐藤さんはいいます。 つまり、なにを作っても、作るたびに新たな発見があり、知らなかったものを知る歓びがあるからです。 佐藤さんの土への飽くことなき挑戦が続いています。


いい加減なところがいいところ
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藤井 節さん (20年以上)
「気負いを持たず、いつも悪戯をするような気持ちでやっていこうと思っているのよ(笑)」。 しかし結局、そこに楽しみとしての陶芸の、本当の豊かさのようなものが生まれるのではないかと、藤井さんははっきりと感じているように思えるのです。
藤井さんの信条は、自然体の陶芸。成形中の「変形花入」に、藤井さんの姿が重なって見えるようでした。



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