インターネット版 No.21  全2ページ 1 | 2|

1 ・現代陶芸の旗手達 (3)
2 ・ZOOM--UP (6) ・・・ 萬古焼

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 「現代陶芸の旗手達」において紹介する作家は、制作の本拠・所属団体・作風など異なるものであるが、現代日本の陶芸界において第一線で活躍し、少しも停滞することなく新たな創造を目指し鎬を削っているものたちである。勿論この他に陶芸界の長老とみなされている傑出した作家も幾人かはいるが、ここでは大家は除き、今最も脂ののりきった充実した活動の時期にあり、今後の陶芸界の担い手となるべき新鋭・中堅陶工たちに限定する。
 収録内容は、近作を中心とした代表作品・プロフィール・取り扱いギャラリーなどで、解説は作家の人と作品を論じたものとした。
 また、紹介作家は、現代日本の陶芸界を代表するもので、陶芸家のステータスシンボライズエンサイクロペディア「現代陶人名鑑」に収録保存し、陶芸ユーザーのニーズに応えるものとする。



中部
・焼締
吉筋 恵治 Keiji Yoshisuji
1952年4月生まれ
〒437-0206 静岡県周智郡森町葛布436
TEL. 0538-85-0174

「自然釉窯変祭器」
高50.0 径39.0p
「自然釉窯変大壺」





「自然釉窯変徳利」

左と右「自然釉アニマル徳利」
中2点「自然釉ぐい呑」

Profile
1952年 静岡県に生まれる。静岡県立森高等学校卒業。
80年 滋賀県・信楽の神山易久氏に師事。続いて山口県・萩の田村悟郎氏に師事。
83年 静岡県・森町に半地下式穴窯を築いて独立。
89年 富嶽文化賞展出品。
91年 単室穴窯築窯。
94年 富嶽ビエンナーレ展に出品。
●主な作品のテーマ
大壺や祭器など、造形と自然釉の融合した作品
●主な制作技法
手捻り
●胎土の種類
信楽(黄の瀬)
●主に使用する窯の種類
穴窯
●師
神山易久、田村悟郎
●工房見学
可(天竜浜名湖鉄道遠州森駅下車)
信楽を名乗らず、「自然釉」と冠する焼締め陶
 静岡県周智郡は県の西部にあって、周囲を小高い山々に囲まれた静かな山里です。 しかしこの地に、もとより焼締め陶の伝統はありません。
 吉筋恵治氏は、およそ20年ほど前から、故郷である周智郡森町に穴窯を築いて独立し、焼締め陶を焼いてきました。 当初は、地元産の土を使って焼いてみましたが、焼締めの器には不向きでした。 そこで試行錯誤の末に、滋賀県・信楽産の黄瀬土を用いるようになったといいます。 しかしもちろん、いわゆる「信楽焼」をここで作ろうとしているのではありません。
 吉筋氏は「やきものの原点は焼締め陶にある」と考えています。 つまり、土を焼締めることによって得られる自然釉のダイナミズムや色を創作のテーマにしていて、薪の灰が付着しやすい信楽土は、都合のよい素材に過ぎなかったのです。
 近郊の山から伐採されたという木々が窯内で燃え、自然釉となって降り下りた吉筋氏の作品は、いずれも、えも言えない深く美しい色をしていて素敵です。
■作品扱いギャラリー
◎赤坂乾ギャラリー/TEL.03-3584-3850
東京都港区赤坂3-8-8
◎松坂屋静岡店/TEL.0542-54-1111
静岡市御幸町10-2
◎工芸むら田/TEL.03-3571-2505
東京都中央区銀座8-5
◎あるてざなあと匠/TEL.0285-24-5520
小山市城東3-15-24
◎浜松森田画廊/TEL.0534-56-3185
浜松市富塚町4691-2
の目
やきものとは、土を焼き固めることに始まり、その薪の灰が土に降り被り融合することで自然釉となり表面に景色をもたらす。 何千年も変わることなく、これからも変わることのないだろう焼締陶の奥深さは計り知れない。




中部
・化粧
山上 憲一 Norikazu Yamagami
1947年4月生まれ
〒413-0102 静岡県熱海市下多賀409-10
TEL. 0557-68-6161
E-mail kakichan@eos.ocn.ne.jp

「粉引組鉢」
(玉川・高島屋個展DMより)


「粉引貼草文皿」
(玉川・高島屋個展DMより)

Profile
1947年 東京に生まれる。東京都立工芸高校デザイン科卒業。
74年 日本伝統工芸展に初入選。
75年 独立・築窯。日本伝統工芸展への入選を重ねる
80年 日本工芸会正会員に認定される。
92年 伝統工芸新作展にて奨励賞を受賞。
●主な作品のテーマ
たとえば「粉引貼草文皿」(写真参照)に代表されるようなシンプルで新しい器、また同時に、使いやすい器を目標に制作しています。
●主な制作技法
粉引(白化粧)
●胎土の種類
赤土
●主に使用する窯の種類
電気窯
●師
野中春甫、山田勢児
●所属団体
日本工芸会正会員
●工房見学
古くてシンプルな素材による、新しい白い器の創造
 山上憲一氏の定番は、なんといっても粉引の器です。 東京に生まれ育ち、暮らしてきた陶芸家が作るこの粉引の器に、実は、多くのファンがいます。
 手抜きなしに作られた白い小さな醤油差や、なんの変哲もないような汲出しに、いつもふと惹かれてしまうのです。 それらの器には、さり気ないひと工夫が認められ、しかもそれが、使う側に立った配慮なだけに、一層、心地よく感じられるのでしょう。
 窯や道具にこだわることよりも、また、大見得を切って芸術をやろうなどとも叫ばず、ただただ、家庭の食卓にのぼるような普段使いの器を、しっかりと作ろうと思っているのです。 このような陶芸家としての謙虚でたゆまない姿勢こそが、粉引という古くてシンプルな素材をもってして、しかし、新しい器を生み出す源となっているのだと感じられます。
 東京生まれのこの人の作に限って、野暮な器は見たことがありません。
■作品扱いギャラリー
◎器る・くーる/TEL.03-3464-4028
東京都渋谷区恵比寿西2-119
◎つかもと/TEL.0488-31-2084
浦和市仲町1-4-10 浦和名店センター1F
◎みつぼり/TEL.045-971-0500
横浜市青葉区鉄町1403
の目
高級食器が店先を飾る昨今、いかにもシンプルで土くさいやきものがよく目にとび込む。その器こそ今人気の粉引や刷毛目文様である。赤やグレーの胎土に化粧泥と呼ばれる白土を施すだけであるが、それだけに難しさも大。




九州
・唐津焼
川上 清美 Kiyomi Kawakami
1948年12月生まれ
〒847-0023 佐賀県唐津市半田3073-4
TEL. 0955-77-3198

「絵唐津茶碗」230,000円
高8.0 径14.5p 2001年

「黒唐津大壺」650,000円
高44.0 径41.0p 2001年
「朝鮮唐津水指」350,000円
高16.5 径 23.0×16.5p 2001年

Profile
1948年 長崎県・対馬に生まれる。明治学院大学法学部卒業。
愛知県瀬戸窯業訓練校を経て、唐津、備前などで修行を重ねる。
88年 唐津市に独立する。
●主な作品のテーマ
茶陶、酒器、食器など、唐津の土の持ち味を引き出すことをテーマにしている。
●主な制作技法
ロクロ、叩き、刳り貫きなどによる成形
●胎土の種類
唐津産の原土を精製して用いる
●主に使用する窯の種類
登窯
●工房見学
可(JR筑肥線唐津駅下車)
Message
個展を中心に活動しています。唐津焼の可能性を幅広く試みるとともに、やがては真の唐津らしさを求めていきたいと思っています。
荒々しさと、細心さ…… アンビバレントな魅力の唐津
 唐津焼は、佐賀県の西部地域から長崎県一帯にかけて焼かれていた陶器です。 すでに桃山時代の前期に開窯していたといわれ、とくに茶陶の優品を多く残してきた産地として、あまねく知られています。 しかしひと口に唐津焼といっても、朝鮮唐津、絵唐津、黒唐津、彫唐津、三島唐津、斑唐津、黄唐津、蛇蝎唐津、瀬戸唐津、奥高麗など、実に多彩です。
 唐津を焼こうと志した陶芸家の宿命は、これら多様な唐津のやきものの様式のいくつかを、自家薬籠中のものとしなければならないことです。 もちろん川上清美氏も御多分にもれず、絵唐津、朝鮮唐津、黒唐津、粉引、斑唐津、黄唐津など、様々な技法を自在に繰って制作しています。
 とくに、黒唐津の壺や朝鮮唐津の花入に見られる焼成による荒々しい装飾性と、細心の配慮によって作られた造形性の、アンビバレントな魅力が特徴です。 そしてそれらを作ることによって鍛錬された感受性を、今度は、たとえば絵唐津の一碗に静かに封じ込めていこうとするのです。 そこには確かに、この作者なりの伝統の読み直しという作業があるように思えてなりません。 いよいよ形になりはじめた、新しい唐津の息吹を感じる仕事といえます。
■作品扱いギャラリー
◎長縄/TEL.03-3792-3969
東京都目黒区碑文谷6-3-1
◎炎色野/TEL.03-5485-8922
東京都渋谷区渋谷2-10-5
◎陶屋敷/TEL.0742-23-6788
奈良市小西町9-1
◎炎群/TEL.0955-73-5368
唐津市呉服町アーケード
◎松永陶苑/TEL.0955-42-4047
佐賀県西松浦郡有田町本町
の目
唐津の町も今では大産地であったことを感じさせる面影はない。唐津焼の名は知られていてもどのようなものかまで知る人は少ない。唐津焼とはそのように控えめで素朴なものである。17世紀頃の秀作に学ぶものは大きい。



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