バック「平型めしわん」 いずれも高5.1 径15.0p 1992年 作品撮影:大堀一彦/中嶋勇 |
■優れた感性と機能性
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これが陶磁器のデザイナーとして、内外にあまねく知られている森正洋氏がいう、自身のデザインのポリシーです。 やきもの王国佐賀県・有田の隣町といっていい磁器産地、長崎県の波佐見を本拠地にして、森氏は陶磁器のプロダクト・デザイナーの道を開き、長く活躍してきました。 それらの仕事の方法はといえば、ある程度の量産にかなう生産性とコスト、また機能的な器のデザインという複数の目的を、いつも同時に求めながら、しかし根気強く、作業が進められてきました。 その結果、使い勝手がすこぶるよく、かつ安価で求めやすい、しかもなにより、ミニマムで美しい数々の日常の食器たちが生まれたのです。 それらの実績のひとつとして、Gマーク(グッドデザイン)に選定された器だけでも、これまでに111点を数えるといいますから、ひとりの陶磁器デザイナーの仕事としてのその数の多さには、かなり驚いてしまいます。 |
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それだけに、少し気を付けて見ていれば、郊外の洒落たレストランやジャズの流れる都市の喫茶店、あるいは、知人の家での会食の機会などに、期せずしてそれら森氏のデザインによる食器に出くわすことも、結構多いものです。 そして森氏自らにも、このようなエピソードがあるといいます。 かつて、アメリカを旅している時でした。 たまたま当時、ニューヨークにアトリエを持って制作していた高名な洋画家・猪熊弦一郎氏(1902〜93)に、偶然出会ったといいます。 初対面の割には、猪熊氏にずいぶんいろいろと親切にしてもらったそうです。 おまけに、ぜひにと食事にも誘われてしまいました。 あまりに熱心な招待だったため、ついにそれを受けることにして、猪熊邸に行ってみてビックリしました。 その会食の席で使われていたのが、なんと自らがデザインした食器揃いだったからです。 聞けば猪熊氏は、以前から森氏のデザイン作品の大ファンだったそうです。 |
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そのようにして、多くの人々から支持され続けて50年。 その間には、数々のベストセラーやロングセラーの器も生まれました。 1960年、記念すべき第1回グッドデザイン賞を受賞し、多くの人々から賞賛されたのが「G型しょうゆさし」です。 |
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「象の鼻」ともいわれる流れるようにチャーミングな注ぎ口。 手で持っても、大きすぎず、また小さすぎない手頃なサイズ。 どっしりとした安定感がある形をしていながら、でも、決して野暮ったくない美しいフォルムと清潔感…。
もちろん、見た目だけでなく、使っても尻洩れなどないように、注ぎ口の形状は充分に工夫されています。 まさに、機能性とデザイン感覚が一体になって生まれた、森デザインの傑作のひとつです。 |
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では具体的には、一体、どのようにしてこれらの日常の、美しく愛らしい器たちが発想され、デザインされていくのでしょうか? 森正洋氏に聞いてみることにしました。 |