純白の磁器が三川内焼の誇り

 三川内焼は16世紀末、朝鮮から連れ帰った陶工が、平戸藩主の命を受けて焼いたのがはじまりといいますから、400年の歴史があります。 第一の特徴は、きめ細かい磁肌と純白さです。 その白い肌を活かした染付、なかでも「献上唐子」に代表される絵付を伝統的に得意としていて、さらに、真似のできないような精緻微細、かつ優美な透し彫りを施した細工物にも特徴があります。
 それら三川内焼の歴史的な優品を鑑賞するのなら「三川内美術館」がベスト。 レベルの高い蔵品の数々、資料などが充実していて、心が動かされました。


◆ 三川内焼美術館 (三川内焼伝統産業会館内)
◆長崎県佐世保市三川内本町 343
◆TEL:0956-30-8080
◆古平戸焼とも呼ばれる江戸時代から焼かれてきた三川内焼の精華の総体がここに収集されています。 三川内焼の博物館・資料館としての役割、また40軒あまりの現代の窯元や陶芸家の作品も展示されていて、この産地の全貌を追って俯瞰することができる絶好の美術館です。 しかも、この内容にして観覧料が無料というのですから、なお驚きです!
  開窯400年記念に制作された「四百人唐子絵大皿」。 
  径102cm 1999年
三川内焼の実力と誇りを伝える優品。
左●「のし押え」(幕末〜明治期)。 右●「白磁毛彫虎置物」(幕末)
美術館入口   江戸時代からの名品が並ぶ
  展示室
現代作家のコーナーも 三川内焼の解説パネル



◆ 佐世保市うつわ歴史館 
◆長崎県佐世保市三川内本町 289-1
◆TEL:0956-30-6565
◆三川内焼美術館に隣接していますから、ぜひ立ち寄ってみましょう。 ここでは器という切り口から、土器、陶器、そして磁器と変遷したやきものの歴史を知ることができます。 また佐世保で出土した世界最古といわれる豆粒文土器も展示。 三川内焼の製造工程などが、映像とジオラマなどの模型を組み合わせて、分かりやすく展示してあります。

工房や職人の作業の様子が模型などにより精巧に
再現されています。
  
同館の外観。    館内の展示室。豆粒文土器(重文)も必見です。



◆ 平戸窯悦山 
◆長崎県佐世保市三川内本町 692
◆TEL:0956-30-8520
◆上手物の三川内焼の伝統として、磁器の極薄作りや、精巧な細工を施した白磁が有名です。 平戸窯悦山では、透し彫りのような細工物でさえ、ロクロで形を整えて作るのだと聞いて、ビックリ。 白磁の虫かごなどの作品も例外ではなく、鍛錬された確かな技術と作者の執念が、これらの伝統を支えているのだと痛感しました。
白磁で作った虫かご。 中には茄子とこおろぎの陶彫が入っていて2度ビックリ! 三川内焼に伝承される高度で精細な技術がいかんなく発揮された作。
 
窯の煙突が、ここが工房だと知らせてくれます。  彫りが見事な白磁の器、急須などが展示されていました。



◆ 平戸松山 
◆長崎県佐世保市三川内本町 901
◆TEL:0956-30-8657
◆三川内焼では、透し彫りも知られていますが、もう一方では、染付の唐子絵も有名です。 平戸藩の御用窯だった当時は、将軍や朝廷に唐子が絵付された製品が献上されていたほど。 その佳き伝統を受け継いでいるのが、平戸松山です。 見ていると思わず笑みがこぼれてくるような唐子の絵付は見事です。 愛着を感じる可愛らしい作品たちばかりです。
この窯お得意の唐子がビビットに描かれた八角の組皿。
唐子の表情のなんと可愛らしいこと。
   
豪壮な構えの窯元・平戸松山の出窓に染付の皿が見えました。  どの唐子絵にもそれぞれの個性があって見飽きません。


取材:2008年


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