笠間工芸 窯元 探訪





      松井康成作の様々な練上手作品



自転車でゆっくり走ろう
 笠間の街は、歩いて回るのはちょっぴり大変。 でも、車で走るとアッという間に一周してしまってなんとも味気ない、という感じ。 そこでちょうどいいのがレンタサイクルです。
 笠間駅前観光案内所で一日800円で借りられます。 またそこで、観光案内地図をもらってから出発するのを忘れないで下さい。 春秋の観光シーズンなら、ゆっくりと自転車で走るのが心地よく、 あちこちの窯元につい寄り道したくなってしまうはずです。 今日はまず、北大路魯山人の旧居「春風萬里荘」を目指して、ペダルを漕ぎ出しましょう。



 笠間駅から、まず南に向けて走ります。 「春風萬里荘」まではおよそ1キロほどですから、10分とかかりません。
 「春風萬里荘」は芸術の村地区のほぼ中央にあります。 優れた陶芸家としてはもちろん、書や篆刻、料理人などとしてもよく知られている魯山人の邸宅を、北鎌倉からこの地に移築したものです。 堂々たる入母屋造りは、なかなかの貫禄。 荘内には魯山人作の作品も展示されていて、しばし偉大な作家の発想の原点に思いを馳せたりします。 庭を散策しがてら、重厚な長屋門も見学しておきましょう。
 またすぐ近くには、笠間生まれの日本画家・田中嘉三の記念館もありますから、足を延ばすのも一興です。


春風萬里荘(北大路魯山人旧居)

笠間市下市毛 芸術の村内
TEL.0296-72-0958
東京の日動画廊創業主・長谷川仁氏により、神奈川県・北鎌倉にあった北大路魯山人が最晩年まで住んでいた住居を、ここに移築し公開しています。 建物は江戸初期に建てられたという茅葺きの入母屋造り。 母屋はもちろん、長屋門なども質実剛健で、魯山人の志向がはっきりとうかがえます。 有名な自作の織部タイルの風呂もあって、必見です。
    


 芸術の村を後にして、やきもの通りを経由し、ギャラリーロードに向かって進みます。 するとじきに、「製陶ふくだ」が見えてきました。
 この窯元の庭先には、高さが10メートルを越える世界最大という花瓶が立っていますから、ここだとすぐにわかります。 また、関東圏では最古といわれる登窯や、 職人さんたちの手際のいい仕事を見せてもらっているうちに、陶産地に来ているのだなぁ、という雰囲気が自然に漂って来るから不思議です。

製陶ふくだ

笠間市下市毛754
TEL.0296-72-0670
創窯は200年ほど前といいますから、笠間のなかでも歴史ある窯元のひとつです。 また、関東で最古という登窯も見学できます。 しかしなんといっても、庭先で天空に向かって聳え立つ巨大な花瓶(世界最大といわれる高さ10.7メートル)…というか、トーテムポールのような花瓶がこの窯元の名物でしょう。 ペルーのフジモリ元大統領にも贈られたという巨大花瓶、なんだか異様なほどの、独特な迫力があります。
     
                                       

                                                        
 いよいよやきもの通りに入ると、「かつら陶芸」「奥田製陶所」「共販センター」などが軒を連ねていますから、ターゲットを絞って買い物をするようにしましょう。 やきもの通りがギャラリーロードと交差するところに「向山窯プラザ店」があり、笠間らしい新しい感覚のクラフトの食器などが見つかります。

向山窯プラザ店

笠間市笠間2290-4
TEL.0296-72-0194
国道355号とギャラリーロードが交差するところにあり、なかなか便利です。 店内には手頃な価格帯の、普段使いにちょうどよさそうな器が、びっしりと並んでいます。 伝統をアレンジして仕上げた現代的な作風のもの、また、使い勝手を考慮して作られたクラフト食器、あるいは素朴な民芸調作品などあって、とにかく目移りします。 これだけ量があると、なにを欲しいかをまず決めてかからないと、買い物するのも大変です。
    


 今度は、そのままギャラリーロードを直進し、「笠間工芸の丘」を目指して南ゲートから「笠間芸術の森公園」に入ります。 前号でも紹介した通り、ここには美術館や窯業指導所などがあって、 笠間の中核的な複合施設です。 今回はとくに、「工芸の丘」内の「松井康成展示室」を訪ねましょう。
 松井康成(1927−2003)は、笠間を拠点に仕事を続けた陶芸家で、1993年に練上手の技術により重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。 同展示室では精緻で見事な、様々な手法による練上作品を見ることができますから、時間に余裕をとり、じっくりと作品鑑賞したい好ポイントです。


笠間工芸の丘

笠間市笠間2388-1
TEL.0296-70-1313
笠間市の東方に拡がる54haにもおよぶ広大な丘、「笠間芸術の森公園」の一角に建っています。 ひと口に「笠間工芸の丘(クラフトヒルズKASAMA)」といっても、 大小7つの複合施設の総称として名付けられています。 「センタープラザ」を中核に「ふれあい工房」「窯場」「専用工房」「貸工房・匠」「クラフトホール」、そして「登り窯」からなっています。 やきものを見て、買うだけでなく、ここでは訪れた人々誰にでも、実際に作ることを体験し、楽しんでもらうのをひとつの大きなテーマにしています。
   
 



様式にとらわれない器
 「工芸の丘」で出合った松井作品を堪能したら、次はギャラリーロード沿いの窯元やギャラリーをはしごして歩きましょう。
 まず、南口ゲート前にあるショップ&ギャラリーの「スペースnico」はお勧めですから、ぜひ覗いて下さい。
 ここでは、笠間とその周辺で活躍する作家の作品を扱っています。 笠間という土地や何らかの様式などにとらわれていない発想の、しかもセンスのいい器だけを扱っていて、 安心して見ていられる店のひとつです。
 ほかにも「かまげん」などが道路沿いにありますから、訪れてみましょう。 巨匠から若手作品までズラリとあって、幅広い品揃えはさすがです。
 もしまだ時間があれば、「笠間日動美術館」にも寄ってみましょう。 また、美術館の近くには手打ち蕎麦の「一茶庵」がありますから、電車に乗る前に軽く腹ごしらえもできます。 東京から最も近い陶産地・笠間にでかけましょう!


スペースnico(ニコ)

笠間市笠間 芸術の森公園前
TEL.0296-73-0750
芸術の森南口ゲートの真ん前にあるショップ&ギャラリーです。 強烈な個性の主張もなければ、決して地味でもない器が品よくゆったりと展示され、品揃えのセンスはかなりのもの。 個展もたびたび開催されていて、時々はチェックしたくなる店のひとつです。 また店内は落ち着いていて、静かな環境の中で、ゆっくりとお目当ての作品を探し、鑑賞することができます。
    
  


かまげん

笠間市笠間2255-3
TEL.0296-72-0039
ギャラリーロード沿いにあり、看板がよく目立ちます。 中にはいると、採光をふんだんに取り込んだ明るい造りで、作品も見やすくできています。 若手作品から伊藤東彦氏などベテラン・巨匠級まで。 笠間とその周辺在住作家までカバーしています。 店内を見回していたら、佐伯守美作のレアーな赤絵の器がさり気なく展示してあったりして、印象に残りました。 じっくりと作品に向き合えるギャラリーです。
    


笠間日動美術館

笠間市笠間978-4
TEL.0296-72-2160
日動画廊の創設者、長谷川仁・林子夫妻の金婚式と創業45年記念に、故郷である笠間に開館された美術館です。収蔵品は長谷川氏のコレクションが基盤となっていて、 岸田劉生、藤田嗣治、カンディンスキー、ピカソ、印象派…などがずらりと揃い、美術品・資料併せて2000点を超えているそうです。 なお、前ページで紹介した魯山人の旧居「春風萬里荘」は、同館の分館です。
 
         


手打ち蕎麦 一茶庵

笠間市笠間1057-1
TEL.0296-72-0441
蕎麦好きの間で一茶庵といえば、栃木・足利の名店ですが、ここもその流れを汲む系統でしょうか。 茨城県産の蕎麦を石臼で挽く本格で、特に変わり蕎麦がおすすめだとか。 蕎麦つゆはしっかりとした辛口の江戸前で、ざる一枚が600円。 ただし休日の昼時は、行列を覚悟した方がいいかも知れない人気店です。
    

取材:2005年


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