備前 (びぜん)
(岡山県備前市)

一歩入って民の道を歩くと、こんな窯垣も見つかります。
名もなき道に発見する
陶郷・備前

 1000年の伝統を誇る焼締め陶・備前焼は、窯煙が絶えることなく現代まで営々と焼き継がれてきました・・・・。
 そんな思いと歴史を胸に抱きながら、備前焼の根拠地といえる赤穂線の伊部駅前に降り立つと、その呆気ない雰囲気に正直いって少し戸惑ってしまいます。
 駅前には大型トラックなどの往来が激しい国道二号線が、ただ走るばかり・・・・。 それでも、今電車を降りてきたばかりの駅舎を振り返って見れば、登窯をモチーフにした設計だとわかりますし、右手には「岡山県備前陶芸美術館」や窯元の煙突らしきものもチラホラ眺められます。 ああ、陶郷にやって来たんだなぁ、という気持ちが、じんわりと広がってくる瞬間です。
 国道二号線の信号を渡って、まっすぐ進んでみましょう。 いくつかの陶商(備前では、備前焼の卸店や小売店をこういいます)


焼締め陶の王・備前焼の魅力は奥の深さ。
写真協力:岡山県東京事務所
や、窯元の専売店があって嬉しくなってきました。 やがてその道は、旧山陽道に突き当たります。 とはいっても、車一台がやっと通れるほどのアスファルト道路で、散策しながら歩くには打ってつけ。左右どちらに歩いても、窯元が軒を連ねていて退屈しません。左側へ進むと、途中には喫茶店もあり、一服できますからお勧めです。
 でも、伊部散策の醍醐味は、この旧山陽道から一歩入った名もない民の道に発見できます。 たとえば、ビシッと焼き締められた窯変花入が、出窓にさり気なく飾ってあったり。 ひょっとしたら、陶芸家のお宅かも知れません。 また庭を囲う壁が窯垣になっていて、古い窯道具や陶片が埋め込まれる家々も散在しています。
 ガイドブックに載っていない、そんな飛びきりの風景を偶然発見した時、窯場を巡って歩く楽しさがきっと満喫できます。
取材:2003年
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