大樋焼の巻 (おおひ) 
 大樋焼は、石川県金沢市に江戸時代から続くやきものです。 金沢といえば色絵の九谷焼が有名ですが、大樋焼は楽焼の窯。 しかも窯元が密集するわけではなく、唯一、大樋長左衛門窯が330年の伝統を守っています。
 なぜ、九谷薬の懐深くにポツンと楽焼の窯が存在するのか・・・・? 今回は、この謎にズーム・アップしてみましょう。
 大樋焼は、京都・楽家の脇窯です。 脇窯とは、茶人たちの間で流布した言葉で、楽家以外で楽焼を焼く窯の総称。 ただし趣味的に焼かれた個人の窯は加えません。 明治以降、日本各地に楽焼が広がり、脇窯の数も増えていきました。 しかし、楽家の技術を直接受け継ぐという意味では、大樋焼は、現在、ただ一つの由緒ある脇窯なのです。
 その昔、加賀藩主・前田のお殿様がお膝元に茶の文化を育てようと考え、裏千家四世千宗室仙曳(せんそう)を茶道茶具奉行として招きました。 その際、茶碗師として同道した陶工が、初代長左衛門です。 長左衛門は、楽家より飴釉の技法を譲り受け、金沢市大樋町に窯を開いたといわれます。 これが、大樋焼のルーツ。 楽焼の窯が、金沢に存在する理由でした。
 加賀文化の情緒を色濃く残す主計町茶屋街。 この近くに大樋美術館はあります。 茶の歴史に触れるなら、一度は訪ね、くだんの飴釉を目にしたいものです。

飴釉輝く大樋焼。
金沢市立中村記念美術館蔵



大樋美術館 TEL.076-221-2397
写真協力 : 金沢市観光課
取材:2006年
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