「北欧の スタイリッシュ・デザイン フィンランドのアラビア窯」 展に学ぶ |
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スローライフやロハスに関心が持たれるのに呼応して、話題にのぼる機会が多くなった北欧のデザイン。 その典型ともいえるのがアラビア窯(フィンランド)です。 | ||||
下●群青色の湖と針葉樹林の緑が輝く 「森と湖の国」。右上●美しい港を見下ろ すように建つ白亜のヘルシンキ大聖堂。 風景写真協力:フィンランド政府観光局 |
◆北緯60度のモダンデザイン
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「森と湖の国」として、日本でもよく知られている北欧のスカンジナビア三国のひとつ、フィンランドは、バルト海の最奥部に位置します。 その風光明媚な国土は、北緯60度から70度に渡る高緯度地域にあって、およそ3分の1が北極圏に含まれています。 またこの国の人々は、自国や自国民のことを「スオミ」と呼びます。 この名称の語源は、湖や池を意味する「スオ」だと聞いて納得しました。 国土の10パーセントが湖沼、65パーセントが森林であり、 豊かな自然環境が残されています。 ところで、フィンランドといえば「ムーミン」があまりに有名ですが、最近では携帯電話が普及し、「ノキア」を連想する人も多いはずです。 とにかく個性的で、しかも洗練されたデザインの携帯を見かけたら、 それはきっとノキア社製に違いありません。 このように、独特なセンスと機能性を兼ね備えた北欧のデザインが、昨今、世界中の注目を集めています。 |
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もちろん、電話機などの工業製品ばかりでなく、独特な風土や生活様式を背景にして生まれた家具や調理・台所用品、テキスタイル、
そして陶磁器やガラス器などの手工芸品にも、比類のないデザイン・センスのよさが確かに感じられます。 そして、これら数々の北欧デザインのなかでも、とくに高く評価されているのが、この国を代表する製陶所、アラビア窯が作り出してきた様々な器です。 日本にもムーミンの絵付がされたマグカップなどの陶磁器類や、耐火陶器のシリーズ「ルスカ」や「メリ」には、ファンがかなり多いといいます。 北緯60度の地で窯煙を上げる窯なだけに、雪のように白い肌を持った磁器ばかりかと思っていたら、陶器、陶器彫刻、それに衛生陶器と、この窯で焼かれる製品の種類は幅広いようです。 直火にもかけられる、シンプルなデザインのどっしりとした耐火陶器も得意のもののひとつで、フィンランドの家庭ではよく見かけられるのだとか。 繊細にして実は頑健。見て美しく、使って丈夫なのがアラビア窯の制作ポリシーなのです。 |
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◆意匠と機能の不可分な関係
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アラビア窯は、スウェーデンの製陶会社・ロールストランド窯の子会社として、1873年に創窯しました。 フィンランドの首都、
ヘルシンキ郊外のアラビア地区に設立されたことからその名がつきました。
開窯当初から、磁器と陶器、それにタイルなども生産していました。 とくにテーブルウェアは、早くから高品質のものが作られ、多くの芸術家を登用するなどして、洗練された意匠を生み出します。
やがて、本家・ロールストランドを追い越すほど発展し、1916年には独立を果たしました。 ヨーロッパの他の名窯が煌びやかな官廷文化を反映した器作りを目指したのに対し、アラビアはフィンランドの国民的なやきものとしての需要を掘り起こし、人々の生活に欠くことのできないものとなります。 同時に、アートディレクターを雇い入れるなどし、新しいデザインの開発に余念がなく、こうした陶磁器の意匠を重視するシステムは、現在まで脈々と受け継がれ、斬新で、 洗練されたデザインのアラビア窯の製品が定着していきました。 1932年になって「アラビア・アート・デパートメント(芸術部門)」を設立、また45年には「フィンランド・デザインの良心」と呼ばれる北欧デザインの第一人者、カイ・フランクを招きました。 そうした先進的な姿勢によって、機能性とデザイン性が不可分な関係を保つテーブルウェアが次々に発表され、アラビアの名は不動のブランドとなりました。 しかし日本の作陶家の多くが、技術力は高いのにデザイン・センスがそれに伴いません。 そこで近年、岡本立世氏はデザインに特化して修得する新システム「陶芸ブティック(R)」を創案したほどです。 |
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モデルデザイン=カイ・フランク/ 装飾デザイン=エステリ・トゥモラ 「ヴァルム、モデルNP カップ&ソーサー」 1965〜70年 モデルデザイン=カイ・フランク/ 装飾デザイン=ライヤ・ウオシッキネン 「エミリア、モデルG エミリアの角皿」 1957〜66年 |
モデルデザイン=カイ・フランク/ 装飾デザイン=ライヤ・ウオシッキネン 「エミリア、モデルG エミリアの角皿」 1957〜66年 |
取材:2006年「北欧のスタイリッシュデザイン フィンランドのアラビア窯展」 |
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